5話 「真実の価値」
崩れ落ちるルシファーの体。もうこいつに・・・力は残ってはいない。
「くっくっく、どうした? 我に止めを刺さんのか?」
「ほうっておいても貴様は死ぬ。・・・オレが止めをさす価値も無い。」
そうだ、ただそれだけ。それだけのはずだ。
「そうか・・・くっくっく、我が無価値と言われようとは! それも不良品と捨てたものにな・・・。」
「貴様に見る目が無かったのだろう。おかげで助かったがな。」
くっくっくと楽しげに笑い続けるルシファー、何がそんなにおかしいのだ。
「我が見る目が無いか・・・いや、そうでもなかったぞ。不良品の欠陥品は外に追い出されたことで強くなった。我には理解できぬ強さを手に入れて・・・今まででもっとも楽しい戦いだったかも知れぬな、息子よ。」
「貴様もオレと同じ・・・いや、かってのオレと同じということか。だが、貴様ではオレのライバルにはなれん。生涯ただ一度の戦い、勝ったのはオレたちだ。・・・あの世で精々羨むがいい、親父。」
オレが魔界で生き抜くために失ったもの・・・それは今となっては何であったのかわからん。だが、同時に手に入れたものもある。なくしたものに思いをはぜるよりも、今はこの手の中にあるものを思えばいい。悪魔らしくもなく、大切な者を手に入れてしまったようだからな。
「アーくん・・・。」
なんだろう? いつものアーくんと同じだけど違う。アーくんはとっても強くて優しくて、でも不器用で本当は寂しいんだと思うの。だって、ふとした瞬間に寂しそうな目をすることがあるんだもん! だから、だからなんなんだろう? アーくんの感情がわからない。嬉しいの? 悲しいの? 誇らしいの? わたしには・・・わからない。
「アーくん・・・。」
「・・・貴様は何を泣いている。」
えっ? あれ? わたし、泣いてる? なんで・・・なんでなんだろう?
「わからない・・・わたし、本当にわからない。でも、ごめんなさい・・・ちょっとだけ胸・・・貸して?」
ふぅ、と呆れたようにため息をつきながらも普段よりも優しい目を返してくれたアーくんに・・・わたしは
「うぁぁああああああ!」
わたしは泣きついたの・・・。
「リュウト、アシュラは・・・レミーは・・・」
そういうキミも泣きそうな顔をしてるんだけどな、アキ。
「さぁな。」
「さ、さぁなって! もっと言いようがあるのではないか!?」
言いようなどいくらでもあるさ。だが、どんな言葉を尽くしても、どんな表現を用いても、それはきっと真実には届かない。アシュラの思いも、レミーの思いも涙も、言葉なんかで図っていいものじゃない。
「人の数だけ答えがある。きっとそれでいいのさ。本人たちだってわかってはいないと思うぞ。」
「そうか・・・きっとそうね。」
大切なものは心で受け取ればいい。きっとそれがそれぞれの真実。そこに余計な注釈や価値なんて・・・付属するだけ蛇足になるさ。
温かいとも冷たいとも寂しいともいえない不思議な空気が漂っていた。・・・その空気を一変させたのは
「ルシファーをくだすか・・・なかなか楽しめそうな奴ら。いや、奴らだったようだな。奴などに譲らず、俺が相手をするべきだった。」
その言葉だけで周囲の気温が下がるような・・・体中から冷や汗が溢れて止まらない。そんな存在・・・
「何を驚く? 初めから俺の存在などわかっていただろう?」
カツーン、カツーンと響く足音。絶対にわざと鳴らしているのだろうその足音は、何よりも強烈な威圧感があって・・・そうだ、初めから俺たちは知っていたはず。ここには『2人』の魔王がいるということ。アシュラは元より、俺もレミーも大分消耗している。一番元気なアキだって残りエネルギー量は半分以下だろう。
怖いと思う。無謀だとも思う。だが・・・逃げる道はすでに無い。ならば、勝ち抜いて見せるさ。守らなければいけない『約束』のために!
この章はVSルシファーのためだけにあった章・・・ということでここでお仕舞いです。そして、いよいよ最後の魔王。きっと皆さんが想像しているとおりのあいつの出番です。
リュウト「もっとも有名でもっとも恐ろしい魔王の登場か。」
はい。そしてこの戦い、次の章こそが第2部の最後になります。
アキ「最終決戦、負けられないもん! だって、私たちまだこれから幸せを謳歌するんだから!」
満身創痍でも気合は十分ですね。ですが・・・
アシュラ「気合だけで勝てる戦いは無い。だが、気合なくして勝てる戦いもまた無い。」
確かに・・・ただ、気合なくして勝っている人もいるみたいですよ?
レミー「えっ? 誰のこと?? わたしも気合十分だよ~~!」
リュウト/アキ/アシュラ「・・・」
レミー「えっ? えっ!? え~~~!!」
さて、オチがついたところで第2部最後の次回予告を・・・ここは主役にお任せします。
リュウト「了解っと。最後の魔王の猛攻に傷つき倒れていく仲間たち。最後の希望が折れたと思われたときこそが反撃の序章? 次章竜神伝説第2部14章『死闘のはてに』この戦い、キミたちの力も必要だ! 俺たちに最後の力を貸してくれ!!」




