4話 「仲間として」
コンコン・・・響きわたるノックの音。それを打ち消さんばかりに大きく鳴る私の鼓動。以前にもこんなことあった気がするけど、今回はあのときよりもずっと緊張してる。
「リュウト、起きてるか。入るぞ。」
ガチャ・・・返事も聞かず、殆ど声をかけたのと同時に押し入るように入る。でもそこには
「リュウト・・・はいないのか?」
「・・・少々無作法だな。」
リュウトの代わりにいたのはアシュラ。無作法だなんてらしくもないセリフを言いながら、その言葉とは裏腹に機嫌は悪くなさそう。
「すまぬ。たしかに無作法だった。しかし、リュウトはどうしたのだ?」
「何、ついさっき気がついてな。散歩するなんて言って出て行ったぞ。」
・・・なんか私ってよくリュウトとすれ違いになっている気がする。私たちって相性よくないのかな? グスン・・・ってこんなところで弱気になってる場合じゃないわ!
「どうした? 探しにいかないのか?」
探しに・・・。でも散歩ってことは、そのうちここに戻ってくる確率が高いし。でも、そんな悠長に待っていられるような精神状態じゃ私ないし! ど、どうしよう!?
「・・・そうだな。少し、ここで待たせてもらおう。」
うん、今はちょっと落ち着いたほうがいい。今のこんな状態でリュウトに会ったら、とんでもないこと口走っちゃいそう。それに
「ふん、勝手にしろ。」
「そうもいかん。なにせ、そなたと話でも・・・と思っておるのだからな。」
「何?」
怪訝そうな顔をするアシュラ。それもそうかもね。だって、もう結構長い付き合いなのにこうして私とアシュラが2人きりで話すなんて・・・今が初めてなんだもん。
こいつは何を考えている? 今までオレとなど話そうとしなかった。いや、それが本来当たり前なのだ。オレは未だにこいつらを・・・リュウトを狙う敵なのだ。レミーが言うようにこいつがリュウトを好いているのならオレなどと親しげに話せるわけが無い。
こいつはレミーのような天然とは違う。リュウトのようなお人好し・・・ではあるが、女王の仮面とやらか? 冷静沈着な部分を確かに併せ持っている。リュウトほどには情には流されん。わからん、こいつは何故オレと話そうとする。
「敵とゆっくり話そうなどと貴様も酔狂だな。」
「敵? なんのことだ。そなたはもう随分前から私たちの仲間だったはず。・・・未だに敵などと思っているのはそなただけではないのか?」
何? 確かにオレは今は貴様らと敵対する気はない。だが、それは今だけだ。いずれ、リュウトとは再び戦う。それは・・・変ってはおらん。
「ふん、貴様の愛しい男といずれ戦いを繰り広げる奴が敵ではないか。随分と目が曇っているのではないか?」
「い、愛しい!? ま、まさか、そなたにまで気づかれていたとは・・・。私の目は全てを見通せるほどではないが、仲間を誤解するほど曇っているつもりも無い。確かにいずれ、そなたはリュウトと戦うのだろう。だが、それは真実死闘か? もし、そなたがリュウトに勝ったとして、そなたはリュウトを殺すのか?」
オレがリュウトを・・・いや、ありえぬな。なぜなら
「それはないな。だが、奴との戦いを一度限りで終わらせるのがもったいない。ただそれだけのこと。」
「理由などどうでもいいのだ。そなたとリュウトはいずれ戦う。それは間違いないだろう。なにせ、あの戦いが嫌いなリュウトでさえも楽しみにしている。だが、リュウトもそなたも相手を殺す気は無い。ならばそれはただの試合であろう? そなたたちはライバルであり友なのだ。とても・・・とても強い絆だ。私には介入できないほどに・・・それが少々羨ましくもあるが・・・す、好いた男の友情にまで口を挟むほど私の器量は狭く無いぞ。」
ふん、顔を真っ赤にさせながら言うことか。だが、友か・・・奴、リュウト=アルブレスもやはりオレを友と呼んだ。ライバルである、それは間違いない。そうでなければ面白くない。だが友か、むずがゆくはあるが悪い気はしない。いずれ・・・そう認める日も来るやも知れぬな。
「・・・すまぬな。」
ぬっ? 謝れる覚えは無いぞ。
「そなたが今、戸惑っているのは・・・これほどの付き合いの長さでありながら急に話などしだした私のせいだろう? 話したくなかったわけではない、ただ余裕がなかったのじゃ。私はいつもリュウトのことでいっぱいいっぱいだった。今だってそうじゃ。だから、こうして気を落ち着ける相手にそなたを選んでしまった。情け無い限りだ、迷惑だったのなら謝ろう。」
ふん、迷惑か。そんな気は・・・しないな。
「ふん、オレも時間を持て余していたところだ。暇つぶし程度になら付き合ってやるのもいいだろう。」
こんな時も悪くない。ふん、オレもそうとう丸くなったものだ。
ようやく実現したアキとアシュラの会話。僕も結構気にしてたんですが以前のチャンスのときはアシュラはメイに飲みつぶされていたし・・・
メイ「まるで私が悪いような口ぶりですね?」
い、いえ! めっそうもありません!
メイ「そうですか・・・ならばいいのですが。しかし、あの子も本当に恋愛ごとは鈍いのね。一番肝心の人の心が読めていないわ。リュウトくんはとっくにあなたの心に気づいているし、その心はあなたの手の中にもうあるのに。」
まぁ、そこがアキの可愛らしいところでもありますから。(あなたの手の中にあったら弄ばれるんだろうけど。)
メイ「今何か不快なことを考えませんでしたか? 私、今ちょうど新しい鞭の実験体を探してるんだけど・・・。」
い、いえ・・・そのようなことは何も・・・い、いえ、ですから・・・助けて・・・うぎゃぁぁぁ><
メイ「まったく、何時になったら自分が私たちの下僕だって気づくのかしら。」




