1話 「友として」
う・・・ん? ここはどこだ?
「気がついたようだな。ここはアスモデウスの城の一室だ。魔王も残すこと2人、この状況下でオレたちを襲うものもいまい。ゆえにここを使わせてもらっている。」
アシュ・・・ラ?
「何を呆けている。」
「あ、いや・・・アシュラが看病してくれているなど珍しいなと思ってな。」
「・・・誰が看病だと? 偶々ここにいただけだ! 気がついたようならオレは行くぞ!」
はは、大した偶々もあったものだな。まぁ、たしかに他の連中がいればアシュラはここにいないだろう。レミーはともかくアキはどこに行ったのだろう?
「まぁ、ちょっと待てよ、アシュラ。こんな風に落ち着いて話せるのは久しぶりだろ。」
俺は憤慨して(いるように装っているだけだろうが)部屋を出て行こうとしていたアシュラを呼び止める。
「なんだ? 酒なら今はやめておけ。傷に触る。」
・・・なんでそこで酒が出て来るんだよ?
「俺はそこまで好きじゃないぞ。お前と違ってな。」
「何!? オレとていつも飲んでいるわけじゃない!」
俺たちはお互いににらみ合う。そして
「くく・・・あははは! 悪い悪い!」
耐え切れずに先に笑い出したのは俺の方だった。アシュラはというと憮然としたようには見えるが部屋を出て行こうとしないところを見ると俺の意図をわかってはいるようだ。
「で、貴様は何を話そうというのだ。」
「次の戦いは当面のところ最後の戦いになる。」
「・・・ああ。」
「おそらくこれまででも最大の戦いになる。これまで以上に生き残る目は小さい。」
死ぬ気は無い。俺はまだ死ねないのはわかっている。だが・・・覚悟は必要だ。
こいつはどうしてこうも自分の死を軽く語る? 僅か前のオレのように何も持っていないわけではない。オレは戦いの中に生きた。戦いこそが生の証だった。だから、戦いの中で死ぬことに疑問など感じなかった。・・・貴様らに出会う前まではな。
「奴らにはそんなこと言わんほうがいい。」
「ああ、アキもレミーもきっと怒るだろうな。アシュラ、お前にだからこそ言える。」
下らん。オレは貴様のライバルだ・・・そう、それだけでいいはずだ。
「俺たち4人の関係は少々特殊だろ? 戦いが俺たちを繋げた。戦う日々が俺たちの絆を深めた。本来は・・・あってはいけない関係なのだとおもう。」
だからなんだ? だから戦いが終わったら別れようとでもいう気か?
「ふん、だからといって戦いが終わったからといって雲隠れしてみろ、あいつが泣き喚くぞ。」
「・・・泣いてくれるかな?」
アキがお前を失って泣かないとは到底思えんが・・・
「貴様が一番知っているのではないのか?」
「そうだな、きっと・・・きっと、そんなことになったら泣いてくれるのだと思う。だがな、俺は雲隠れする気は無いぞ。」
何・・・? ならば一体なんだと?
「俺たちは戦いが繋げた。だが、戦いが終わっても共にいたいと心から思う。アシュラ・・・お前は特に特殊だろ。」
ああ、そうだな。出合ったときはお互い敵同士で、いつかお前と戦うためにこうして同行している。まさに戦いがつなげた関係だ。
「初めは恐ろしい敵だった。それが戦い終わってライバルとなった。コクト・・・ヘルとの戦いを得て俺たちは、俺から見れば頼もしい仲間となった。今は唯一無二の親友のように思える。」
親友か・・・以前も、そう・・・あの決戦前夜のあのときも同じような話を聞いたな。あのときは下らんと笑い飛ばしたが今は・・・
「下らんことをいうな。オレにとっては今もお前はライバルであり、これからも変らん。・・・貴様を逃がしはしない。」
オレはいつも1人だった。いや、唯一オレのそばにはあのコーリンがいたか。オレの前には常に戦いの荒野だけが横たわり、血で血を洗う日々だけがオレの渇きを癒してくれると思っていた。それが・・・貴様たち3人、いやママナ含めて4人か・・・お前たちと触れ合う日々に癒されているオレがいる。そして、それを厭うてはいない。
「貴様は弱いな。」
「ああ。」
「明日に迫った決戦。お前はそれが怖いのだろう?」
「・・・ああ。」
「だから、絆を求める。変らぬ明日を信じようとする。」
「そうかもしれないな。」
「安心しろ、明日はただの通過点だ。オレたちが生きている限りまた新たな戦いもあるだろう。そして・・・オレとお前の約束は永遠のものだ。死んで勝ち逃げさせる気も死ぬ気もオレにはない。」
そう、まだ終わりにはさせん。オレの新しい楽しみの日々は貴様らがいなければ成り立たんのだからな。
「貴様は仮にもリーダーだろ。弱気な姿を見せるのは・・・オレだけにしておけ。」
「ああ、そうさせてもらうよ・・・。」
きっと、こいつもわかっているんだろう。オレたちはよく似ている。オレのように望んでいようとお前のように望んでいまいと戦いからは逃げられない。戦いの日々が日常になっている。だから怖いのだろう? 戦いの無い日常に戻れるのかと・・・安心しろ、きっとあの3人は無理やりにでも貴様を引き戻しに来るだろうさ。
リュウトの弱さ、そして変わり行くアシュラの強さ。変っていこうともアシュラの心は強いのです。
レミー「う~! もう少し弱さ見せてくれもいいのにな~。そしたらわたしが慰めてあげるの! 日常の楽しみならわたしにお任せ!」
何度か言っているけど、キミは平和な日常にトラブルを呼び込む存在だからな。日常の楽しみって言うよりもキミが絡むと日常が非日常になると言う方が正しい。
レミー「ム~! そんなことないもん! わたしが一緒の日常はきっと楽しいよ~♪」
退屈だけは絶対にしないのは保障されているけど・・・。もし読者の皆様はうちのキャラたちの中から一人を選ぶなら誰と一緒にいたいって言うかな? そのうち企画してみるのも面白いかも?
レミー「もし実現したらわたしに投票してね~!」




