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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
2部11章『大ピンチ! リュウト包囲網!?』
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5話 「蓄積されし物」

 

「竜神剣・・・特別モード、強制解除!」


 その瞬間に竜神剣から強烈な光が漏れる。そう、かって俺がリュムの力をまるっきり使えなかったあのころのように。


 今ならわかる、この光は余剰だ。俺の体に収まりきれなかった力があふれ出している。ちりちりとまるで俺の内部から燃やし尽くされようとしているかのような痛みを感じる。同時に凄まじいまでの力も・・・。リュムのパワーが跳ね上がっている?


 躊躇している時間はない。躊躇している意味もない。この力が短期間しか使えぬ自滅の力なら、まだ俺の命が残っているうちに勝てばいい。・・・俺とてまだ死ねない理由はあるのだから。


「竜神流剣術・・・無風!」


 風を、空気を動かさずに自分だけが動く。たったそれだけのことで動きというものは読みにくくなるもの。そう、俺の体が教えてくれる。


 その予感どおりに俺の技はあのベルゼブブの羽を切り裂くことに成功した。・・・いや、それ以前にどうして俺はこんなことが出来ると思った? まるでできるのが当たり前のように・・・。


「くっ! 俺の羽を切り裂くとは・・・。その罪、万死に値する! トルネード!」


 風の基本技トルネード、それはまさに竜巻そのものだ。これを対処するには・・・


「はっ!」


 風の力を込め振った一刃の閃。そこから発生したのはトルネードを横に90度回転させたような技。本来は上に当たる口の広がった方を前面にし、ベルゼブブのトルネードを四散させて猛スピードで突撃していく。横にした分、範囲は狭くなったが速度は上がった。切り裂く力は弱くなったが拘束力はむしろ向上してる・・・十分に使用に足るな。そして


「これがお前の新しい能力か・・・リュム。」


「そうだ・・・我が中に蓄積された幾多の戦いの記憶。そのほんの僅かをそなたに注ぎ込んでいる。・・・パワーの向上など微々たる副産物だ。」


 微々たる・・・ね。ざっと倍以上にはなっていると思うのだがそれだけ今まで使っていたものの出力が弱かったって言うことか。だが、これは想像していた以上にきつい。次で一気に決めないと、こっちが力尽きるのが先だな。


 さて、リュムに貰った記憶の中でその条件を満たせそうな手段は・・・2つか。1つは竜神剣の基本的な能力。もう1つは竜神剣の奥義・・・いや駄目だ、後者は俺の能力が足りなさ過ぎる。ほぼ確実に暴走、暴走させれば今の出力でも俺どころか世界そのものを壊して余りある・・・か。


「行くぞ・・・リュム!」


 グラリ・・・と視界が歪む。急激にエネルギーが消耗されていく。そのエネルギーを使ってリュムは・・・竜神剣は変形していく。幾重、幾十、幾百にも枝別れした異形の剣・・・いや、それはもはや剣と呼べるものではない。刃で構成された檻だった。


「これは!?」


「我らを閉じ込めただと!?」


「ふん、それだけで何が出来ると・・・」


 無論、これだけで終わらせるか! このまま内部に閉じ込めたまま檻を極小に狭めれば・・・魔王たちの串刺しの完成だ。


 グラリ・・・今度は体が揺れる。竜神剣を急速に変化させるのは、その巨大な大きさを維持するのはそれだけで膨大なエネルギーを必要とする。だが、まだ倒れるわけには・・・いか・・・ない。


「ちっ!」


「アシュ・・・ラ?」


 その崩れるように倒れかけた俺を支えたのはアシュラだった。


「貴様という奴は美味しいところを全て持っていく気か!? オレの力も分けてやる。いいか、一瞬たりとも貴様の中に留めるな。注がれたそばからすぐに放出するのだ。それならば貴様の体に害を与えることなくオレの力を使えるはず。」


「アシュラ・・・」


「言っておくが礼などいうなよ。貴様に倒れられるわけにはまだいかん。まだ魔王は2人残っている。オレとの約束、あの戦いだけで済ましたとは思っていまい?」


 ・・・ははは、そうだな。俺もお前との勝負ならば・・・まだまだしたりないぐらいだ。


「リューくん・・・わたしの力も持って行って。わたしにはまだまだリューくんは必要だよ?」


 レミー、そう・・・だよな。俺はレミーの兄代わりをやってやるって言ったものな。こんなところで倒れるわけには行かないか。


「無論、私の力も持って行け。そなたが必要な分、全てだ。私の命を使い切るつもりでいい・・・たった一人で私の手の届かない場所に行くのだけは許さぬ!」


 アキ・・・大量に出血しているのは、エネルギーがつきかけているのは俺のはずなのに、まるでキミのほうが今にも倒れそうなほど青ざめていて・・・そうだな、いくのなら一緒に・・か。そして、まだアキにいかせる気はない以上共に生き延びないとな。


「俺たちは仲間だもんな。1人でじゃない、一緒に勝とう。」


 それでも俺のリーダーのわがままだ。命を懸けるのは・・・俺だけでいい。


「おおおおお!」


 俺の力・・・みんなの力を使って、今度は急速に縮小をする竜神剣。無論、魔王たちも抵抗はしている。だが、強固で鋭い刃の壁に打つ手などあるわけもなく・・・


「まさか、かのような手で我らを倒すとは・・・。」


「くっ、だが忘れるな。俺を倒したのは貴様じゃない。その剣だってことを・・・。」


「こんな勝利で美酒など味わえんぞ。まだあのお二方がいる。真の魔王城とも呼べるあの城におられるお二方が・・・。」


 負け惜しみ・・・そういい捨てるのは簡単だ。だが、そうではないと俺の本能が悟っている。そして、大事な情報だな。最後の2人は同じ城の中。こいつらが今回の黒幕なはず!


「ようやく・・・ようやく今回の旅も終着が見えてきたな。・・・ん!? リュウト! そなた、その腕どうしたのじゃ!」


 ん? 腕? 左腕が切り落とされたのはアキだって知っているだろうに・・・。


「違う! そうではない! 切り落とされたのはいい! いや、よくはないが、今の問題はその出血量じゃ!」


 出血量? 何気なく斬られた左腕を見ると・・・おお! たしかに凄いな。そうか、考えてみれば縛り付けて血止めしただけだし、どっちかと言えばエネルギーで止めていた要素の方が大きい。で、リュムの力で強化された心拍で血の巡りがよくなったのに、押さえつけているエネルギーが枯渇すればこうもなるか。・・・ん? なんか頭がボ~っとするな。ま、まずい・・・本格的に・・・血が・・・足りなく・・・なっ・・・てきたか?

3人の魔王戦、無事に終了です!


レミー「ちっとも無事じゃないよ~! もう! 第2部にはいってから回復の出番減ったって思ったのに、最近また大忙しだよ~! それもやっぱりリューくんばっかり!」


アキも一回治してもらっているけどね。それに回復の出番が増えるってことはレミーの出番が増えるってことでも・・・


レミー「こんな出番ならいらないよ~~~!!!」

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