最終部15章「夢魔の見る夢」4話「終焉再び」
私の目の前にあるのは黒い球体。それはまさに空間に空いた穴のようであり、まるでそこになにもないかのよう・・・いえ、まるでではないわね。事実としてあそこは何もない空間。ただし、その中央にそれをなしている存在がいるというだけ
「『終焉を告げるもの』」
かつて竜の坊やが倒したはずのその名前を私は呼ぶ
「ほう? 余の名を知っておるか」
そして私のことは知らないと。竜の坊やが倒すさらに前、こいつを封印したのは私の相棒であったルナ。その時に私も多少なりとも戦っていたのだけど・・・つまり
「面倒な奴が新しく作られたものね」
そう、答えはこれしかない。存在の剣、当時はまだ竜神剣だったあの剣に斬られて復活するなどありえない。それはたとえあの剣の創造主であるレオンとて同じよ。でも、まったく同じものを別に作り直すことならば可能
修復不能なまでに破壊した、というだけであって同じおもちゃを生産することを封じたわけではない。なにせ、材料もレオンという生産工場も残っているのだから
「状況が分かっているようで感心だ」
そうね、あの頃の竜の坊やは私から見ればまだまだ。その気になればいつでも瞬殺できるぐらいの力の差はあった。その竜の坊やが倒せた相手だから私の敵ではない・・・なんてことはない
竜の坊やが倒すことが出たのは彼と竜神剣が圧倒的に『終焉を告げるもの』に対して相性がいいから。だからこそ、私たちはあいつの始末を竜の坊やに任せた。竜の坊やを鍛えるために都合のいい相手だったというだけの理由ではないのよ
「だが、いまさら命乞いなどしても無駄なこと。賽はすでに投げられたのだからな」
「そうね、確かに賽はすでに投げられているわ。でも、勘違いしてほしくないわねぇ」
「何?」
「確かにあなたは面倒な相手よ? でも勝てないとは言っていないわ!」
今は無効化する気がないのか『念波』は『終焉を告げるもの』に届いて会話をすることができているけど、本来あの能力は自身の周囲にあるあらゆるものを終焉させる。つまり何をしても届かない。私の吸精も魅了も誘惑も効果がない
ならばどうするか。竜の坊ややルナがやったように能力を封印する手もあるけど、私にはそういう能力はない。もう1つはこれも竜の坊やが最初にやったように自分が終焉されること覚悟でゼロ距離攻撃をすること
竜の坊やの頑丈さならば可能でも防御も体力も竜ほど頑強ではない私には難しい。この後に待っていることを考えればやりたくないのが本音。それでも
「ホント、嫌らしい一手を打ってきたわ。この手のいやらしさは専門外なんだけどねぇ」
次の行動に備えて無傷でとか体力を温存してとはいきそうもないわね。でも、見せてあげるわ。私だって覚悟を決めればあなたに勝つことは不可能ではないのだと
ルーンの能力は遠距離からのからめ手。この手の相手が一番相性が悪いのです
アキ「リュウトが相性がいいのは竜神剣の再生封じにドラゴニック・キーでの封印、あとはリュウトの頑丈さってこと?」
そうですね、そのあたりも相性がいい理由です。ですが、実はほかにもルーンが言っていない理由があったりします
アキ「ほかにも?」
まぁ端的に言うと『終焉を告げるもの』はあらゆるものを終焉させる。けれど、その『あらゆる』にも例外というものがあるということなのですね。とまぁ、今回はこんなところでお開きといたします。次回もまたよろしくお願いいたしますね~




