4話 「弱点と代償」
「悪いな、ベルフォゴール。俺にはお前の能力の弱点・・・見えたよ。」
「何・・・?」
俺の言葉に怪訝そうに返すベルフェゴール。だが
「くっくっく、そのような言葉で余の動揺をさそおうとは案外姑息な男よな。」
ついでに動揺なりしてくれれば最高だと思ったが、どうやらそうは行かなかったな。・・・それもそうか、真偽も知れぬ敵の言葉だけでどうこうなるならこの地位にはいないだろう。だが、弱点はある。いや、本来なら弱点とは呼べないのかもしれないがな。
「なに、俺の言葉の真偽は結果をもって教えてやるさ。・・・姑息ってのは否定しないがな。竜神流! 竜爪閃!!」
姑息だろうと何でもいい。カッコいい戦いなど(試合ならともかく)存在しないのだ・・・生きるか死ぬか、殺すか殺されるか、後ろ指を差されようと守りたい者が守れるのなら・・・それでいい。
俺のはなった三本の風の刃、かわすことさえもせず氷の壁で受け止められる。だが、その壁は死角を生む!
「いっくよ~! イリュージョンアロー!!」
少々緊張感に欠ける気もするが、いつもどうりの明るいレミーの声が頼もしくさえ感じる。
「っう!?」
決定打どころか有効打とすら言えないかも知れないが、ベルフェゴ-ルの体を掠めた一撃はそれなりにダメージにはなったようだ。とはいえ、それだけで何とかなる相手ではない。
「ダイヤモンドダスト!」
ベルフォーゴールのはなった氷の基本技ダイヤモンドダスト。つまりは吹雪が俺を襲う。初動の遅れた俺には少々かわすのは厳しいか? ならリュムを盾に・・・
「どけ! リュウト!!」
俺がリュムを盾に変化させる前に横から俺を突き飛ばし、自身が代わりに吹雪を受けるはアシュラ。
「アシュラ、お前・・・」
「・・・勘違いするなよ、これは戦術だ。この戦いは凍った時の中を動ける貴様がいなければ勝てん。ただそれだけのこと。」
とまあ、相変わらず素直ではないコメント。とはいえ
「その防御力は本当に凄いな。」
「ふん、誰にものを言っている。」
まともに攻撃を受けたにもかかわらず、全身を霜に覆われて少々寒そうな見た目になったぐらいですんでいるアシュラ。・・・普通のものならアッと言う間に氷の像となり、次の瞬間には砕け散っていると思うのだが。アシュラの強さは攻撃力よりも、この防御力にあるのかもしれないな。
アシュラの防御力の源は少々疑問だが・・・まぁ、無事ですんだことに疑問を呈していてもしょうがない。次の手は
「アキ! 頼むぞ!!」
「任せろ! 我が思いの形は常に一つ・・・汝の力を借りて、ここに現出させん! ドラゴンソウル!!」
アキの切り札とも言うべき魔法。リュムの力で強化された能力をフルに使ってようやく発動できるクラスの消耗率らしい。狙うはベルフェゴール・・・ではなく、いつものように
「ふん、その技のことは聞き及んでいるぞ。時よ、再び凍れ! タイムフリーズ!」
その瞬間、俺とベルフェゴール以外のものの動きが止まる。炎の竜さえも俺とアキの間で停止してしまった。
「これでチェックメイト。フリーズアロー。」
繰り出された氷の矢は全部で4本。それぞれが1本ずつ俺たちを狙っている。
「チェックメイトにはまだ早いぞ! 竜神流! 竜爪閃!」
迫り来る4本のうち3本を風の刃で相殺する。残り1本、俺を狙ったものは身をよじるようにして避ける。・・・結果としては右肩を掠めて少々出血をしたが、この程度なら問題はない。
「悪いが、俺の仲間に手を出させるわけには行かない!」
守勢に回っては動けない3人が危険にさらされる。接近戦で動きを封じるしかない。勝算はあるがな。
「何!? 貴様何故これほどに速く動ける!?」
やはり、わかってはいなかったのか。いや、知る機会もなかったのだろう。
「俺が速いんじゃない。この凍った時の中ではお前の動きも抑制されていたってだけのことだ。」
だから、俺のようにまったく影響を受けない奴相手には不利になる。弱点ともいえないが、同時に俺相手ならば致命となりうる欠点だ。
「これで・・・止めだ!」
決死の覚悟で突撃。剣を突きつける。
「認めん! 余はそのようなこと認めんぞ!」
ベルフェゴールも、その持ちたる槍を俺の方へ突いて来る。・・・ゴキ! 正確に心臓を貫こうとしていた槍をそらす為に思いっきり槍の側面にぶつけた左腕が嫌な音を立てて折れる。だが、そのおかげで槍は心臓はそれ肩を貫いた。・・・俺の剣は奴に届く前に停止してな。
「くっくっく、貴様の言葉も早かったようだな。そのような傷ではもはや・・・!?」
「うぉぉぉぉおおおおおお!!」
奴の言葉を最後まで聞いている時間等ない! 俺は肩を貫いた槍を掴んで傷口が広がるのも厭わずにベルフェゴールを投げ飛ばす。
「何をするかと思えば。距離をとって何をしようというのだ?」
無意味なことをする・・・そう続けたベルフェゴールだが、わかっていないのはお前のほうだ!
「わからないか? お前がいるその位置が!」
「何・・・!?」
気づいたようだな。ベルフェゴールがいる位置・・・それは、アキのドラゴンソウルの目の前だ! 時が止まり、熱さえも伝わらなかった、気づけなかったことが最大の敗因かな?
「そして・・・時間だ。」
一度目に受けたとき感じたようにタイムフリーズの停止時間はおよそ10秒。時が動き出すと同時にベルフェゴールは炎へと飲み込まれていく。
「ぐ・・・おおおおおお!」
「無駄だよ。魔王といえど、無防備に受けて助かるほどアキの炎は優しくはない。」
うちの攻撃力NO1を甘く見ないで欲しいな。
「馬鹿な!? 余が、余が! こんなことで・・・おおおおおぉぉぉぉおおおおお!!」
自身の欲に飲まれたのは・・・お前の方だったな。怠惰の魔王よ。
ベルフェゴール戦決着! でもまだこの章は続くのです。
レミー「む~! またリューくん大怪我してるよ~。最近は少なくなったと思ったのに・・・。」
相手は魔王ですからね。他が傷つくぐらいなら自分が傷つこうとする奴ですし・・・。まぁ、今回は計算どうりの怪我なんですが。
レミー「え? 計算どうり?」
リュウトはちゃんとこうなるって予測した上でアキに頼んでますよ。アキも予想はしていましたが、怪我までは予想していないので・・・
レミー「あ~それじゃあ、この後大変だ。特にリューくんが。」
ええ、たっぷりと絞られるか泣かれるか。どっちにしてもですね。それに竜神剣・・・リュムが語る竜神の秘密も次回ですので是非ご覧下さい。




