最終部14章「女神として、人間として」5話「木の棒を倒せ」
それからの戦いは苛烈を極めたわ。って言えたら良かったんだけど、はっきり言って私が一方的に追い詰められているという感じかしら。左腕は折れているし、右腕は千切れかけている。そして両足はすでに消滅しているわ
勿論、私も回復の名手。治療も再生も行っているけど、この戦いの速度だと中々追いついてこない
「一つ問おう」
「・・・何かしら?」
答えてあげる義理はない。勿論そうだけど、この状況下においては回復のための時間が稼げるのはありがたいわ。まして向こうからその時間をくれるというのならば・・・ふと湧き上がったこれで私がリュウト君のために上げられる時間が増えたという思いは振り払う。だってここで死なないとそう彼に約束したのだから
「何故貴様はそうまでして戦う。すでに決着は」
「ついていないわよ」
淡々と、けれどその先は言わせないと否定する
「その状態でまだ勝つ気だと?」
「何か問題があるかしら?」
リュウト君ならば必ずこう言うでしょう。両足がなくても走ることは出来る。両手がつかえなかろうと攻撃は出来ると・・・リュウト君は再生能力は高いけど、私ほどの回復魔法はつかえないのにね
まして折れていようと千切れかけだろうと私の両手はある。リュウト君が言うであろう状況よりずっとマシだわ
「ちっ、戦士の矜恃を知らぬ奴め。勝てことがわかった相手に無様な戦いをするなど」
「そんなものは知らないし知る気も無いわ」
ただ全力で突撃する。私も神だからリュウト君ほどではなくても同じように信仰を力に変える。だからと言ってこの瞬間に信仰が強くなるはずもなく、正面から行ったのでは最初と同じ・・・ええ、それだけならば!
「シャドーブレイカー! あなたも竜神剣の、存在の剣の眷属ならば力を示してみなさい!」
シャドーブレイカーは私がまだ竜神剣だった存在の剣の片割れを模倣して作ったまがい物。存在の剣のようなあるいは魔法杖ミリーや竜の魂が宿っているレキュオスのようなしっかりとした意思はないけれど、それでも!
「ムッ? 確かに先ほどよりは・・・だがその程度で!」
「木の棒を押し倒す力があれば山だって崩せる」
「何を言って?」
「山を崩せる力があれば星だって壊せる。星を壊せる力があれば宇宙を壊すことだって簡単」
それは非力で役にたてないことを悩んでいた人間の私にかつてライオスが教えてくれたこと。ほんの僅かでも力があるのであればもっと上を目指すことは、やってのけることは簡単なのだと! 精神論だとしてもそれは確かに私がここまで来る支えだった
「だから! 私だってあなたを倒すことぐらい簡単よ! 千点裂破!!」
今までの万を超える年数の全てを乗せた高速の突き技は確かにやつにこれ以上はない無数の打撃を与えることに成功した
かっての力なき時代も今も支えとなっている者は同じレーチェルでした
レーチェル「今だって私は大した力を持っていないわ。だからリュウト君に頼らざるを得ないのだから」
まぁそれはリュウトが完全に別格だからなんですけどね
レーチェル「本人がそれに気がついていない辺りがなんともね」
気がついていたらリュウトじゃありませんから。ちなみにレーチェルの木の棒からの一連のセリフは随分前にPixivにゲスト出演したときも言っていたりします。興味のある方は是非探してみて下さい。ではでは~




