最終部14章「女神として、人間として」4話「大した差ではない」
弱さは強さであり、強さは弱さでもある
ならば私は弱いのか強いのか・・・答えは決まっているわ。私は弱い。でも
「本気で我に勝てると? ましてレオン様に?」
「ええ、レオンに勝つのは私じゃないけれどね」
ずっと、ずっとこの世界にすがってきた。それは彼が残した世界だったから。私に残されたのはこの世界と彼との間に出来た血筋だけ。だからどうしてもどちらも失いたくなかった・・・強き神の仕事と言う名に覆い隠された弱い人間の願望。自身が世界のために多くの犠牲を強いるたびに痛んだ弱い神の使命を支えた強い人間の夢
「下らぬ。勝てると思うだけで勝てるのならば・・・このような世界などそもそも無かった!」
っ!? その言葉と同時に私の左に走る衝撃。ギリギリのところでなんとか腕でのガードが間に合ったけど突撃からの拳・・・随分と速いわね
「どうした? 我は本気などまだ微塵も出しておらぬぞ? それでも・・・」
「ええ、勝つわ。勝たなくてはいけないからよ」
「・・・何度でも言おう。勝てると、勝たなければいけないなどという思いで勝てるはずがなかろう!!」
ええ、そうね。あなたはそれで勝てなかったのでしょう。でも、私は知っているわ。戦力差だけで見れば勝てるはずのない戦いにその思いだけで勝ち続けた1人の人間を
彼は常に人間として神の力を使い続けていたわ
「・・・覆せない差ではないわ」
おそらく単純計算で私と彼の力の差は数百倍、ひょっとしたら千倍ぐらいはあるかも知れない。でも、それがどうしたというのかしら?
私とリュウト君は何度も戦ってきた。それは特訓としてでもあり、本気の戦いに見せかけたものもあった。最後の、私を助けてくれた戦いでは随分と実力差は縮まっていたけれど、何度も繰り返されてきた戦いでの実力差はきっと数千どころか数万倍、いえ数億倍でも足りないくらいだったでしょう
「この程度、覆せないようじゃあの子の師匠を名乗れないのよ!」
私と彼の血を受け継ぐ遠い遠い子孫。私が教え、ここまで導いてきた、導いてしまった可愛い弟子。そして願うことなれば・・・その願いの糸を繋ぐためにはこの戦いで負けてなどいられない。細い糸の上を渡り歩くなんて、それこそあの子たちの得意分野だわ
「何度も言わせるな、思いだけで勝つことは出来ぬ!」
だから私はここで力を見せつけないと行けない。自分よりも格上と闘うなんて随分と久しぶり。そして単独で格上に勝った経験は・・・ない
「遅い! 遅すぎるわ!」
さっきの彼と同じようにけれど私の全力で左に回り込みながらの突撃。光の数千垓倍はあるその速度を遅すぎると軽くガードし殴り返してくる敵・・・昔ならば諦めていたところね
『大して変わらないはずよぉ』
年齢で一億倍の差を大差ないと言ったルーン。ひょっとしたらこんな展開を予想していたのかも知れないわ
ええ、数千倍だろうが数億倍だろうと・・・大した差ではないわ
「フフ・・・」
「どうした? 己がどれほど馬鹿げたことを言ったのか、どれほど不可能なことだったようやく理解したか?」
「いえ、やっぱり勝てない相手じゃないと・・・そう思っただけよ」
私は弱い。昔も・・・そして今も
だけど勝てないなんて思わない。絶対に勝てないだろう相手に勝ち続けた存在を私は呆れるほどに見ているのだから
おひさしぶりです! 無事生還致しました!
レーチェル「見事に私の見せ場をぶった切ってくれたわね」
えっ? その、病気は不可抗力と言う奴で・・・
レーチェル「言い訳は聞かないわ。聞かせたかったら本編の私のように・・・」
数億どころじゃないでしょう!? 僕とあなたの力の差は!!?
レーチェル「頑張ればなんとかなるものよ・・・ってもう話せないみたいね? それじゃあ再び最後に向かって走り出す物語、もうちょっとだけ見てやってちょうだいね」




