最終部14章「女神として、人間として」3話「互いの確信」
神が強いか人が強いか、そんな議論をするつもりはないとばかりに興味なさげに攻撃しようとした目の前の存在は
「そうだ、1つ良いことを教えてやろう」
その動きに対応しようとして、その言葉に止まる。何かしら? この碁の及んで時間稼ぎをする理由は私にも相手にもない。あえて言えば、私が生きている時間が長ければリュウト君が強化される時間も長い、ということかしら? 死ぬことを禁じられてしまった私にはそんな時間稼ぎをするつもりはあまりないけど、どちらかと言えば私の方に有利なはず
「そう警戒するな。大した時間もかからん・・・レオン様はな、竜神とやらを倒した後この世界を消滅させる気だ。そしてもう二度と世界を作る気も無いらしい」
告げられた言葉に思う。なんだそんなことかと
「・・・何故に絶望せぬ」
「絶望する理由が何処かにあったかしら?」
本気で分っていないようね。そういうことをするのではないかという予想があったと言うのも事実。それを阻止するために動いてきたというのも事実。でもそれ以上に
「世界が消滅しても自分が作った世界の閉じこもるつもりか? 残念だったな、レオン様は今回はそのような逃亡も認めぬおつもりらしい」
随分とレオンの計画を知っているわね。これが正しいのならばそれなりにレオンに近しいところにいる存在なのかも知れないわ。でも、やっぱり頭は良くないようね
「逃げるつもりなんて毛頭無いわよ。自分だけ生き残った世界にどんな価値があるというのかしら」
「ならば何故」
「前提が間違っているからよ」
いえ、レオンの配下である彼にとっては正しいのでしょう。それをレオンに言わされているのかそう洗脳でもされているのか、自分の意思でそう考えているのかはわからないけど
「リュウト君は勝つわ。だから世界も消滅しない」
それは私に、私達にとっては確実なこと
「愚かな、レオン様に勝てると本気で」
「ええ」
私の言葉に少したじろぐ雰囲気を出す。勿論、客観的な戦力分析で確率をはじき出せば0に限りなく近い数字が出てくるでしょう。でも、それが一体何だと?
私達はリュウト君が勝つと信じている。もしも彼が負けたのならば、それは彼の死を意味している。そんな世界で生き残りたい子も私達の中にはきっといないわ
「不可能だ」
「何故?」
「わからんのか?」
戦力差? いえ、違うでしょう? あなたたちもかつて止めようとして出来なかったから。そうしてこうやって配下に仕立て上げられている。だから出来ないと思い込んでいるのでしょう?
「ふふっ」
「い、一体何だと・・・」
「どうでも良い事よ。あなたたちにとっては世界が消滅するのは確定している。私達にとっては存在し続けることが確定している。どっちの確信が勝つかの勝負ってだけ・・・悪いわね、あなたはその結果を見届けられないのだったわ」
やっぱり私は欲深い人だった。だってこんなにも平和な世界での幸せを望み、確信してしまっているのだから
ということでレーチェルもここまで来れば腹をくくっているようですね
レーチェル「今までは自分の幸せなんて考えられなかったのだけど」
多くの幸せを奪ってきた自覚がある人ですからね。普段の言動と違って、本質的には真面目すぎるのです
レーチェル「・・・余計な一言がなければね」
へっ?
レーチェル「普段は真面目に見えないなんて巫山戯たことを言う作者にはお仕置きよ。ってことで今回はここまで。次回も私の活躍を見に来ること、良いわね」




