最終部13章「氷炎の乙女たち」9話「炎と氷」
クルクルとアキがミリーを回す。それだけだったら手慰めやルーティンのようにも映るけど、それは違う。あの魔法杖ミリーには無数の魔法陣が収められている。通常ならば正確に書くのは戦闘中には難しく、量を書くのはさらに困難な魔法陣をあの杖はああやって回すだけで空中に展開していく
「負けていられないわよ、レキュオス!」
「・・・はい、行きましょう! マスター!」
ようやくレキュオスもおちゃらけモードから本気モードに切り替わったわね。遅すぎるのよ、本当に・・・頼りにしているわ
アキが火属性の特性である活性でワタシたちに力を与えてくれるように、ワタシとレキュオスは氷の抑制で敵の戦力を大きく減らす。そして
「範囲を絞るわよ、レキュオス」
「えっ? で、ですが、それでは!」
「大丈夫よ」
本来レキュオスの冷気の攻撃範囲は全方向。地面の上に半球状に展開されつつも味方は効果範囲から除外する器用さはいつものレキュオスらしくはない特性だけど、本気モードのレキュオスらしくもある。でもそれをワタシはあえてエネルギーを供給しつつ狭くしていく。本来の攻撃範囲から見れば極小、それをビームと捉えるのならば極太な大きさに
「アキ!」
「うん!」
範囲が狭くなった分、当然威力は上がっている。その代わり、捉えることの出来る敵は減った。だけど、範囲が減ってこれ幸いと敵が突っ込んでくるのならば補えば良いだけのこと
トンと軽く背中にあたる衝撃、そして暖かいと言うよりは彼女の能力らしく熱いほどの体温。そしてミリーから放たれているのが見なくても分る極太な炎のビーム
「にゃ、ニャー、2人とも凄いのにゃー」
「あんたもしっかり盾役をやりなさい! ワタシたちに敵を近寄らせない!」
「わ、分ったのにゃ!」
今のワタシたちは固定砲台のようなものよ。アキとぴったりと背中を合わせてぐるりと回転すれば、全方位を攻撃しつつも炎と氷の温度差攻撃にもなる。それでも数便りの突撃の全てを封じられるかというと・・・そこであの駄猫の出番ってわけよ
「ふん、中々あの駄猫も役に立つじゃない」
「素直じゃないよね、リデアって」
「な、何がよ!」
「だって、ニャーニャーが盾になって止めた相手を優先して倒しているでしょう? ニャーニャーが受けるダメージが少ないように・・・いくら捨て石にしても構わない相手にすることじゃないわ」
なっ!? い、いくら火属性だからってワタシの体温まで上げなくても良いのよ!? か、顔がほてって来ちゃうじゃない! でも
「あ、あんただって同じ事やっているじゃない! 別にあの駄猫はここで全滅してもまだいるから大丈夫なんでしょ?」
それが本当かどうかなんてワタシたちは知らない。だからできる限りさけてあげたいとかそういう風には、べ、別に思っていないけどね! とにかくアキの顔も赤くなったからこれでおあいこってものよ!
仲が悪そうに見えて、色々正反対で、それでも案外仲良しな2人です
リデア「べ、別に仲良しじゃないわよ! ・・・正反対って何がよ?」
炎と氷、外側は弱くても芯は強いアキと外側は強いのに芯は弱いリデアなどなどですね~
リデア「だ、誰の芯が弱いって言うのよ~~~!」
とリデアが怒ったのは今回はここまでに・・・!?
リデア「ふんだ、今回は締めの言葉まで言わせないわ。氷の中で反省していなさい。あんたたちは次回もちゃんとワタシ達の活躍を見に来ること! いいわね!!」




