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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
2部10章『竜神の力』
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2話 「凍れる時」

「ベルフェゴール、お前は何ゆえに地上侵攻に加担する!」


ほんの僅かなやり取りでもこいつが自分から動くタイプではないことはわかる。理由次第では戦闘を避けられるかもしれない。


「知れたことよ。地上を支配できれば奴隷が山ほど手に入る。まだまだ余の身辺を補佐するには手足りんのだ。・・・それにこのようなことに手を貸す手間より、あいつに目をつけられる方がよっぽど面倒だわい。」


奴隷・・・しかし、あいつ? 他の5人の魔王のうちの一人だろうか?


「奴隷を良しという気はないが、お前ほどの地位ならば身辺を補佐するものなどいくらでもいるだろう? それにお前が恐れるものは俺たちが止めてみせる! だから・・・」


「だから手を引け・・・か? 笑わせてくれる。マモンを辛うじて破る程度の実力では奴はおろか余にも遠く及ばぬわ。」


もし、俺一人で戦っていたのならこの言葉にうなずいてしまったかもしれない。たしかにそれほどに魔王は強い。だが、俺には引けない理由がある。引けない思いがある。なにより、こんな馬鹿な俺と共に戦ってくれる仲間がいる。


「力及ばぬとしても戦う。そして勝って見せる!」


「愚かな、実に愚かな答えだ。力及ばぬとも勝つ? 友情の力とでも寝ぼけたことを言うつもりか? 下らぬ、実に下らぬ。余もかつて下らぬ幻想を探求したことがあった。だが、幻想は幻想。いかに探求しようとも現実にはなりえぬのだ。」


幻想? 探求? 一体何を言いたいんだ?


「ふん、世に有名な『ベルフォゴールの探求』か。だが、貴様が知りえたものが全てではあるまい。」


「悪魔の分際で貴様は信じると言うのか?」


「さぁな。」


ベルフェゴールとアシュラのやり取り。どうやらアシュラは知っているようだな。かつてベルフェゴールが何を探求したのかを。


「ねぇねぇ、リューくん。一体何を探求したの?」


・・・なんでそれを発言した本人たちじゃなくて俺に聞くのかな? 頼る場面が違うと思うのだが


「・・・アシュラ、頼む。」


「ふん、実に下らぬことだ。こいつはな『幸福な結婚というものは果たして存在するのか?』などということを探求したのだ。」


それが下らぬ幻想って言うことはつまり・・・


「余が見てきた限りそのようなものは存在しない。どんなに幸せそうでも腹の奥にはどす黒いものがある。特に女どもよ、余が僅かに介入しただけで容易に夫を裏切る。」


「・・・こいつはな『女性の心に性的で不道徳な心を芽生えさせる』などという力を持っている。ゆえに極度の女性不信、人間不信で有名なのだ。『ベルフェゴールの探求』とは、有り得ないとされる計画を皮肉る言葉なのだ」


なるほどな、心に関わる悪魔なわけか。いや、マモンといい魔王たちは心にこそその力があるというべきなのかもしれない。そして


「そうだ、そのとおりだ。そして貴様らが信じる友情とやらも同じ。完全な友情などありはしない。どのような詭弁を用いようと定められし運命は変えられん。貴様らこそ諦めて逃げ回っていたほうが得策と何故わからん?」


違う、それは絶対に違う。そんなことは認められない。認める意味もない。もし、そうであったとしてもだ!


「運命なんてものがあるというのなら、それが不変的で変えられないというのなら、俺がこうしてお前と戦うのもまた運命なのだろう? 結果が同じだと言うのなら俺は俺が信じた道を行く。より俺が望んだ未来への道だと信じてな。・・・それに、リュム・・・竜神剣は俺が望んだもの全てを斬る剣だ。運命? もし、運命が俺の邪魔をするというなら・・・運命ごと斬り捨ててやるのみだ!」


そうだ、それでいい。俺は足掻くだけ足掻きとおす。変えられない『過去』を悔やむのはもうたくさんなんだ! たとえ、可能性が0に近くとも変えられる『未来』を求める。竜神なんてたいそうな名を持っていても、俺に出来るのはそれだけなのだから。


「・・・そうか、虚像を追いかける救われぬ愚者よ。ならば、今ここで余の手にかかり・・・幻想の中で死ぬがいい! タイムフリーズ!」


なんだ? 時が凍る? おい! レミー、動きを止めるなって! アキも! ん? アシュラまで止まっている??


「ちっ!」


無造作に投げつけられた槍を切り払う。狙われたのが俺でよかったが、一体三人はどうしたと言うんだ?


「馬鹿な! 何故貴様は凍った時の中を動ける!?」


ん? もしや・・・俺が動けるほうが想定外なのか? まさか、これもリュムの力?

時を凍らせるベルフェゴールの力。つまり彼の属性は氷ですね。


リュウト「今回は俺しか参戦できないのか?」


ずっと凍ったままではないのでまったくではないですが、基本的にメインは。まぁ、主役ですし。


リュウト「しかしリュムの力に頼りっぱなしだな。」


たしかにそうですが、今回の力は竜神剣ではなくリュウトの力ですよ。章タイトルのとおり『竜神の力』なのです。


リュウト「ん? どういうことだ?」


それは次回以降のお楽しみで・・・。ところで今回の話の『ベルフェゴールの探求』は悪魔学の中に実際にあるお話なので興味がある人は調べて見ても面白いかもしれませんね。ではまた~♪

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