1話 「嵐の前の」
「ム~、何で魔王の城ってこんなに不気味なの~!」
到着した第2の魔王城。そして、のっけから不満全開でアシュラの腕に抱きついているのはレミー。
「歩きにくい。さっさと離れろ。」
それに不満なのがアシュラという図だが、なんだろう? このもやもやは。これが妹を取られた兄の心境って奴なのかな? できればアシュラじゃなくて俺を頼って欲しかったような??
「リュウ~ト~? 今凄くへんなこと考えなかった?」
・・・アキ、本当にキミはエスパーか? いや、別に隠さなきゃいけないことを考えていたわけじゃないと思うんだが
「気のせいじゃないかな?」
何故か本能が言うなと最大限に警告をするのでごまかしておく。・・・なんで戦いを前にしてこんな危機感を感じなければいけないのだろう。
「ふ~ん? まぁ、今回は良しとしといてやろう。でだ、レミー・・・悪魔の城が不気味なのは悪趣味な奴らだからだろう。」
いや、アキ? そんな一言で終わらせるなよ。アキにとってどうでもいいことだからだろうけど。
「・・・趣味でやっている奴らもいるが、大抵は違う。」
「ん? どういうことだ、アシュラ。」
この手の会話にアシュラが乗ってくるのは珍しい。・・・同じ悪魔だから黙ってられなかったのだろうか?
「からくりを知っている悪魔には意味はないが、貴様らのように知らぬものは雰囲気で多少なりとも萎縮する。これは己が勝利の為の小道具にすぎない。」
なるほどな。居住性よりも攻められる事を前提においた作戦なわけか。ん? そういえば
「そういえばアシュラの屋敷は普通だったな。」
「当然だろう? わざわざ下層魔界のオレのところまで来てくれた強者の実力を僅かとはいえ削ぐなどもったいないではないか。」
・・・予想はしていたが、本当に予想どうり返してくるとは。とりあえずわかったことは
「お前が悪魔の中でも特別な戦闘狂だということはわかったよ。」
「当然だな。」
戦闘狂と呼ばれて喜ぶな! 誇るんじゃない! ・・・まぁ、そんなだからこそ、あの歳(アシュラは悪魔の中ではまだ歳若い)でこれほどの力を持っているのだろうけどな。
「なんか色々わかった気がするよ。・・・さて、作り的にこの先が玉座の間だろうな。皆、準備はいいか?」
こんな馬鹿話をしていても警戒を怠っていたものも戦う準備が整っていないものもいるはずがなく(レミーは少々不安だが彼女は何も考えてないから出来ていなくても同じだったりする)皆、一斉にうなずいた。
「ようこそ、まねかねざる客よ。」
扉を開けるなり、声をかけてきたのは牛の尾にねじれた二本の角、顎には髭を蓄えた醜悪な姿の悪魔。どっしりと腰を玉座に下ろし、動く気配はない。そしてマモンとは違い、その周囲にはたくさんの悪魔が控えていた。
「客人をもてなすように・・・」
「し、しかし! 我らの力で・・・」
いかにも面倒とばかりに告げられた言葉に慌てたのは指示された悪魔たちだ。だが
「奴らを始末したならば、空いた魔王の地位に推薦してやってもよいぞ。」
その言葉に血眼になって俺たちに襲い来る悪魔たちだが、いまさら俺たちの敵になるはずもなく。傷どころか、体力の消耗さえもほとんどなく勝負は終わった。
「やれやれ、余が相手をしなくてはならんとは面倒よな。余の名はベルフェゴール。怠惰を司る魔王よ。」
今回はちょっと短めですが、きりがいいのでここでいったん切らせてもらいます。
リュウト「しかし、なんとも気概をそがれる相手だな。」
そうですね。しかし強いですよ・・・マモンよりもずっと。
リュウト「章タイトルどうりだと俺の能力になんか突破口がありそうなんだがな。」
そこらへんはもう少し秘密ですね。ただ、正攻法では(今のリュウトたちでは)勝てないような相手ではあります。




