最終部9章「天使たちが願うもの」1話 「天にあっても地に堕ちても」
アシュラと別れてもなお俺たちは進む。仲間が1人ずつ減っていくのは何度繰り返しても慣れることなく心を締め付ける感覚だが、今注意するべきは別のことだろう
「アーくん、お兄ちゃん」
レミーにとっては最大の心の支えだろうその2人。まぁ、まだレーチェルがここにいるから救いはあるだろうがその顔色が優れないのは気のせいではないだろう
「次は私が行きましょう」
僅かな違いはあるが多くの者が次の戦いの気配を感じ取って体を震わせたときにそう言ったのはメイだった。だが
「ううん、めーちゃんはここにいて。めーちゃんは何かあったときに対応が出来るようにリュー君の側にいた方が良い・・・そうでしょ?」
その言葉に戦慄が走る。それは恐らく全員の共通認識だろう。レミーの言っていることが間違っているわけではない。むしろ正しい状況判断をレミーが行ったと言うことが脅威だ
「ってもう1人のわたしが言っているよ~」
高速移動中故に体勢を崩すわけにはいかないが、心の内で思わず崩してしまったのも恐らく共通だろう。ああ、やっぱりレミーはレミーだった。そしてもう1人のレミー、堕天使のレミーも大変だな
「だからね、ここはわたしが残るよ」
間違ってはいない。戦略的にもこうやって人数が減っていくならばレミーの回復よりもメイの戦術の方が残っている方が良い。さらにまだレミーよりも回復が優れたレーチェルもいるし、いままで残ってくれた仲間たちが追いかけてきたときのためにここに回復に優れたレミーが残っているのも意味がある。だが
「レミー、もしも残った理由が・・・」
アシュラがいなくなったからとかそういう理由だったのならば・・・
「うん、わかった」
? 俺が聞こうとしたことへの回答として正しいのかどうかも怪しいその言葉に首をかしげる前にレミーの羽が黒く染まる。ああそうか、代れと言われたんだな
「リュウト、わたしたちを・・・いえ、レミーをあまり舐めないでちょうだい」
そして、その言葉は確かに俺への回答としてふさわしい物だった
「わたしではなくレミー・・・か」
「ええ、レミーは確かに頭は良くないし、戦略も分っていない。でも、ここに覚悟も目的もなく来ているわけではないわ」
主であるレーチェルが、恋人(かどうかは微妙だが)のアシュラが、兄のコクトが、友人であるみんなや兄のような俺が戦うからではなく、レミーがレミーとして戦う理由がちゃんとある
「それでも任せられないかしら?」
「リューくん・・・」
白でも黒でもない灰色の羽になったレミーのそんな言葉
「ああ、頼むよレミー」
「まっかせてよ、リューくん」
そして
「後はよろしくな、堕天使レミー」
「ええ、天から堕ちてもこの手に掴み続けた物がわたしにもあるわ」
なぁ、アシュラ? レミーは俺たちが思っているよりも心配はいらないらしい。コクト、俺たちの妹はお前が言っているように大した奴かも知れないな
再び白い羽に戻ったレミーにグッと拳を突き出して、ハテナと首をかしげられたときはやっぱり不安になりもしたけれど
と言うことでリュウトだけでなく作者である僕にとっても不安なレミーです
レミー「ム~? なんで?」
・・・レミーがメインをやると高確率でギャグになるからですよ!?
レミー「大丈夫だよ、それは食べたことから」
食べ物じゃないですよ!? ああ、やっぱり会話がかみ合わない。いや、レミーとの会話が成り立つことの方が珍しいのだけど
堕天使レミー「流石にこの最終局面をギャグにはしない・・・いえ、させないから安心して
いいわ」
頼みの綱は堕天使レミーですね! なんとか物語を破綻させないように祈って・・・この場合誰に祈るべきなのだろう? 堕天使のことを神に祈って良いものなのだろうか? と、とにかくこの章もよろしくお願いしますね~




