最終部8章「修羅の優しさ」5話 「捨てた感情」
「クハハハハ! どうした! オレはここにいるぞ!」
「くっ、ちょこまかと! それに何度殴っても立ち上がってきて」
「動かぬ的や1撃で倒れるようでは面白くなかろう? オレもお前もな!!」
わからない、本当に分らない。僕は竜神君やこいつらを研究し、実験の果てにオリジナルを遙かに上回る成果を得たはずだ! 確かに僕の想像以上にオリジナルの方も強くなっていたというのは認めざるを得ないだろう。だが! それでも僕の方がこいつらオリジナルよりも圧倒的に強いはずだ!
「何故だ何故だ何故だ! お前は僕よりも遅いはずだ! 僕よりも力が無いはずだ! 傷ついたその体を再生させる速度も遅いはずだ! お前は、僕よりも弱いはずだ!! ・・・なのに何故!!!」
「下らんことを考えるな。この戦いが楽しい、それ以上の答えも意味もあるのか? 勝利のために知恵を張り巡らせるのは正しい。自分と相手の差を考えるのもまぁ良いだろう。だが、勝てんことを理不尽と思う前に勝つための手段を執るべきだな・・・あいつらのように」
わからない、何故こいつはあんなに血だらけになりながら嗤う? まるで僕が弱者で奴が強者のようじゃないか。奴に傷つけられた傷、消耗させられた体力、僕の優れた再生の力を持ってしても上回れたものはある。それでも圧倒的に有利なのは僕じゃないか! なのに!!
「その笑いを止めろ!」
「ふん、面白くないな。先ほどまでの余裕はどこに消えた? せっかく楽しい死闘になったのだ、もっとオレを楽しませろ」
違う! 違う違う違う!! それはお前がする顔ではない! これではまるであべこべではないか!
『ふん、震えるだけの臆病者が』
違う! それは遙か昔の話しだ!
『この分野なら活躍できるとでも? 無能なキチガイが』
違う! 僕は、僕は! あの子のために・・・
「その笑いを止めろと言っているんだ!」
遠い昔の嘲け声を振り払うように拳を突き出す
「ほう? 中々悪くない攻撃だ。だが・・・」
消える、さっきまで目の前にいたはずの悪魔の姿がかき消えて
「なっ!?」
痛みはない。当たり前だ、僕の無敵の体はそんなものを感じる必要が無いから痛覚は初めから排除している。だが、何故再び出現したあいつが僕の腕を持っている?
「リュウトや美鬼の奴ならば武器にするかもしれんがな」
そして奴はその腕をまるで価値のないもののように放り捨てる。奴の腕よりも遙かに強靱なはずのその腕を
「ふざけるな! それをゴミのように・・・」
僕にとってもそれはすでに再生したいらないもの。そうであるのに何故こうまで・・・
「一度目は褒めてやったが・・・何度やっても同じ事だ。同じ事をやるのではな」
また消えた・・・今度は腕をもぎ取られるのではなくフワリとした浮遊感の後、何かにたたきつけられるような感覚
「どうした? この程度で終わりなどと言うつまらんことは言わんだろうな」
僕の体よりもずっと小さいはずのその悪魔は倒れた僕の頭にその足を乗せる。まるで何時でも殺せると、あの時のあいつと同じ目で
「あ、ああ、あああああ!」
なんだ? なんだこれは!? 知らない、こんな感情は僕知らない。あの時・・・捨てたはずなのだから
今回はこの作品では珍しい敵視点です
アシュラ「大して変わるまい?」
・・・いや、それを言われると何が書いてあっても同じと言われているような? 言うと本当に言われそうだから止めておこう。そしてあとがきにようやくこの章の主役が帰ってきました
アシュラ「それこそ誰が来ても変わるまい」
何を言っているのです! 安全が! 僕の安全が全然違うのです!
アシュラ「ふんトワメルと似たような・・・」
違いますよ!? 僕は完全な被害者です
メイ・レーチェル「「それはどういうこと(でしょうか・かしら)?」」
・・・僕の安全はどこにもなかったらしいです。えっと、この先は公開不可と言うことで・・・次回もまたよろしくお願い致します、シクシク




