最終部7章「姉の矜恃」6話 「真理1つ」
「無敵のお姉ちゃんに任せなさい!」
「年下の姉を持った覚えはないぞ? それに隙だらけだ、瞬風斬!」
飛びかかってきた数体の敵の首をポッキリと言わせてあげている隙にさらに敵が飛びかかってきて・・・ムゥ、援護してくれたのは感謝するけど
「あなたの姉なんて言っていないわ。私もこんな弟持った覚えないし」
「・・・本音と建て前が逆になっていないか?」
? なっていないわよ? 私の弟は孤児院にいたみんなも含めて一杯いるけど、あなたは・・・そうね、お客さんとか知り合いとかって言うのも違うから
「ま、あなたは相棒にしておいてあげるわ」
「それはまた光栄なことで」
フッと笑って小さく礼を返す。その程度の余裕はまだあるというメッセージ。レオンの興味はもうこの場にはないと言え、まだまだ残っている敵の数は多いし1匹1匹が一般的には神話レベルの怪物たちとなれば私達レベルにはかなり辛い相手。これがアシュラ君とかだったら軽く蹴散らした上で面白くなさそうにするぐらいの大余裕があるのでしょうけど
「まだまだいるわねぇ~。お姉ちゃんモテモテだわ~」
「こんな奴らにモテても仕方が無いだろう?」
「当然よ、私はリュウト君だけで良いのよ」
そんな軽口を叩きながらもさらに数体の首をコキンとならす。こう言う雰囲気に油断して飛びかかってくる敵だけならば楽で良いのだけど、私もアランもそこそこに傷を負っている。見た目のダメージが実際のダメージと一致しないタイプの種族も竜族を筆頭に多いけど、私達は傷口から流れ出て四散するキラキラとした粒子、霊子とか言う私達の中身みたいなものが如実にそのダメージ量を物語ってしまう・・・お姉ちゃんは見た目の割に霊子量も多いからまだ余裕だけどね! アランはどうだか知らないけど
「ギギギ、ナゼ・・・」
「ん?」
「ナゼ、オソレナイ」
はぁ、そういうことね。確かにこの状況は悪いわ。敵の数を半壊させることは可能ね。普通の軍隊だったら壊滅って言うのかしら? でも、私達の敵はそう言う組織的な軍ではない。正確に言えば組織的な軍ではあるけど、ただの捨て石としてしか扱われていない。文字通り1人残らず全滅しても構わない存在・・・こういうのを相手にする怖さは私はよく知っている。なにせ、私達の敵ってこういうのばっかりだったものね~
「虫にたかられて恐怖するほどか弱い女じゃないのよ」
「ははっ、確かにそうだ。草原の孤児院の肝っ玉母ちゃんだからな」
「お・ね・え・ちゃん・よ!」
まったくリュウト君の先生といい、こいつといい失礼しちゃうわ。でも、そうね・・・
「はぁ、でも困るわね~。私って集団で来られると対処できないのよね~!」
「・・・マリアさん?」
「あなたもリュウト君みたいに範囲攻撃って出来ないんでしょう!」
「ちょ、声が大き!?」
何故こんなことを大声で話すのか? 勿論、私が恐怖とかその他の理由でおかしくなったってわけじゃないわ。今まで戦ってきた感じでわかったこととして、見た目はほとんどの敵が虫を基本とした姿をしている。でも知能面はばらつきが大きいように思えるわ
言葉は全員理解しているとは思うけど、戦略を理解しているのはあまり多くはいない印象なのよね? ちょっとお馬鹿? いえ、少し賢いレミーちゃんレベルが一杯いるイメージ。だから
「ギギギッ! イクナ、ワナダ!!」
ちょ~っとその言葉は遅かったみたいね。たぶんあのリーダーっぽいのが一番賢いのでしょうけど、レミーちゃんレベルの子たちはこんなあからさまな罠にあっさり乗ってくれたのが一杯いるのよね。虫に知能で負けていられないわ
「後は頼んだわよ、アラン」
そしてそんなことを言ったのが私だからでしょうね、群がってくるのはほとんどが私。迎撃は最小限にして繰り返される幾多の攻撃をかわしいなす事に集中する。それでも全部は避けられないから大分ダメージは貰ってしまうけど
「マリンさん!! くっ、そこをどけぇ!」
はははっ、やっぱりリュウト君の師匠なだけはあるわ。今一瞬だけリュウト君に重なって見えてしまったじゃない。アランは確かにリュウト君やアキちゃんほど範囲攻撃が出来るわけではない。そこに誤情報を混ぜているわけではないけど、これだけ重なっていたら剣で数をなぎ払うことは出来るのよ。それに同士討ちだってこんな状況じゃ頻発するわ。だから
「これで結構な数を減らすことが出来たわね。うん、上出来上出来」
私も流れた霊子の中で空気中に霧散しないものがびっしりとこびりついて結構凄い見た目になっているけど・・・ま、幽霊なんだしこういうのも良いでしょう。これでアキちゃんの前に出たらまた失神されそうだけど、流石にそう言う悪戯をしている場合じゃないわね、残念
「ギギッ、ナ、ナゼ・・・」
「何でこんなことが出来るのか? かしら? それと『ナゼ、オソレナイ』とも聞いていたわね? 答えはどっちも同じよ」
そんあ疑問が出てくるって事はあの中では一番賢くてもこんな簡単なことも分らないレベルだったようね。内心ため息は出るけど、敵が愚かなのは良いことなのかしら? でも分られないのも悔しいわね
「ソ、ソレハ・・・?」
「それは私がお姉ちゃんだからよ!」
だから無知な虫に私はこの世で唯一絶対の真理を教えてあげたわ
マリアのアイアンディディの9割はお姉ちゃんで出来ている気がします
マリア「失礼ね! 10割よ!」
そっちの方向!? って言うか姉であることが存在の全てなのか・・・
マリア「私と言えばお姉ちゃん、お姉ちゃんと言えば私よ?」
なんか姉という概念の化身になっている。いや心の化身なリュウトとか氷の化身なリデアやユキもいるけど・・・マリアと同じく自称姉なママナはともかくアキの実の姉や鬼姉もこの作品にはいるんですが
マリア「わ、私が姉の代表よ・・・メイちゃんはちょっと怖いけど」
マリアすら怖がるメイ・・・やっぱりこの作品の最怖はメイか
メイ「このようなところで風評被害をまき散らさないで欲しいものですね。あっちでお話ししましょう。易しく説明をして差し上げます」
あ、あの、普通易しい説明には鞭は出てこないと思うのですが・・・た~す~け~て~
マリア「作者君も懲りないわね~。ま、メイちゃんならば99.99%殺しぐらいで加減するでわね。というわけで今回はここまでよ。次回もまだ私の章だから忘れずに見に来なさい、約束よ」




