最終部7章「姉の矜恃」5話 「壊れたモノの意地」
「どう? この戦場はもう盤上のお遊びみたいだけど、それでもチップを払っていくかしら?」
「当然だ。そこにのせられているチップがマリアさんの存在である以上、俺の存在をかけるには十分すぎる遊戯だ」
冗談めかして言った言葉に真面目に返されて私はどうしようかと一瞬悩む。まったく、こう言う真面目すぎるところはまったく変わっていないのね。見た目だけはちょっとチャラそうな感じだって言うのに
「リュウト君の側にいたマリアさんほどではないけど、俺だって人間の幽霊としてはなかなかなもんだって言うことを見せてやろう。これでも随分と古い幽霊に当るしな」
「・・・アラン、それは私にも突き刺さるから止めなさい」
あなたと私が死んだのってまぁ8年ぐらい差はあるんだけど、私達ぐらいの幽霊歴になるとそんなのはほとんど誤差みたいなもので・・・うう、これでもリュウト君の恋人仲間の中では若いもん! 私よりも若い人ってユキちゃんとアイちゃんにククルちゃん、あとは誤差レベルでリデアちゃんぐらいしかいないはず。リデアちゃんは記憶があるらしい前世以前も含めればむしろ最年長!? でも私がお姉ちゃんなのは変わらないけどね!!
「と、とにかく俺の力を見せてやろう!」
そう言って敵を切り裂いていく姿は私とは異なる戦闘力。リュウト君の師匠って言うだけのことはあってそのスタイルはやっぱりリュウト君によく似ているのだとそう思う。そして
『当然だ。そこにのせられているチップがマリアさんの存在である以上、俺の存在をかけるには十分すぎる遊戯だ』
フラッシュバックするついさっきの一言。アランは何も言っていないけど、彼が私に異性として好意を持ってくれていたのは知っていたわ。なら私は? 私はあの頃から気づいていなかっただけでリュウト君が好きで、でももしもリュウト君と出会っていなかったら? ・・・いえ、リュウト君はあのオリジナルに私の元へ送り届けられたのだから私達が出会うのは必然。むしろ運命だったと言って良いわ! だから私の思いはリュウト君を挟んで先にきっとあって
「マリアさん!」
「っ! アランが倒せなかったからって私を狙うなんて舐めているのかしら? 私はアランより100倍強いわよ!?」
「・・・心配させてゴメンとかそういうことを言ってくれ・・・ないよなぁ、やっぱマリアさんだし」
魔力を帯びた攻撃ならば霊体にもダメージは入る。幽霊である私には厳密には血はないのだけど、僅かに切り裂かれた腕からはキラキラと血に相当する何かが流れ落ちる
それでも反撃できっちりと関節を外して首を捻ってあげたからリュウト君のような特殊体質じゃなければ戦えないはずね。武器を持たない私は攻撃力はアランより低いかもだけど、能力的にはアランよりも強いのよ!
「はぁ。大人しくして欲しいというのは無理なんだろうね」
「ええ、無理ね。アラン、私もね・・・壊れた鞘なりの意地があるのよ」
その言葉にアランはハッとする。リュウト君は刀だと、その鋭いけど細く弱い刀身は誰かを守るたびに、何かを切り裂くたびに傷ついていくのだと。だからそれを守る鞘は壊れてはいけないとそう私に言ったのは他ならぬ彼だ
「幸い、ぴったりとはまる次の鞘は見つかったみたいだけど、だからと言ってポイって捨てられるだけのゴミになる気は無いのよ・・・アラン、あなたもそうでしょう?」
「そう・・・だね。やれやれ面倒な弟子を持ったものだ。とっくの昔に壊れたのにまだ鞘の役をやってあげないと行けない何てね」
アキちゃん、リュウト君の新しい鞘。あなたが壊れてしまったらリュウト君は本当に次はなくなってしまう気がする。だから先代として私があなたも守ってあげたいわ・・・壊れてしまった後でもなお守ることが出来るのを嬉しがる鞘が一対あるのだから
マリアとアラン、この2人は本来どんな運命をたどるはずだったのか
マリア「リュウト君のせいで歪んだなんて言ったらあなたでも許さないわよ」
・・・むしろ作者の立場で許されたことなんて1度でもあったのだろうか?
マリア「そう、つまり本当に許されないって言うのがどう言うことだか教えて欲しいと?」
えっ? ・・・ひょっとして今までは手加減されていた? あれでも!?
アラン「俺とマリアさんはリュウト君を守る一対の鞘か・・・悪くないな」
ちょ、そこの感慨ふけっている戦士! その相方の暴走をなんとか止めて~~~!?
アラン「・・・俺に彼女が止められるわけないだろう? 俺が出来ることはただ1つ、今回はここまで、次回もまたよろしく頼む」
しめれば良いというモノじゃないぞ~~!!? ああ、やっぱりまた勝手に幕が下りる~~~!?




