最終部7章「姉の矜恃」4話 「ここにいる理由」
颯爽とかって好きだった・・・いや、今でも好きな女性を助けに入ったらビンタされて俺はしばし呆然とする。確かに相手が気がついていないのを絶好のチャンスとして隙をうかがってはいたけどなぁ
「何がヒーローよ! ヒーローはリュウト君・・・って言うのは良いとして、とっくにここに着いていたのに戦う乙女をニヤニヤしながら見ていてピンチを待っていた人物はヒーローって言わないわ」
いやいやいや!? 前半は仕方が無いが、後半は別にピンチを待っていたわけではないぞ!? とまぁ、言いたいことはあるが今は戦場、技術ならばともかく元々本当に普通の人間の冒険者に過ぎない俺はあの世でもこんな時のためにきっちり修行はしていたとはいえ、彼女よりも弱いぐらいだ。それでも、隙があると飛びかかってきた1匹を両断するぐらいのことは出来るが、それよりも
「俺がここにいたことに気がついていたのか? いつから」
「あんたがここに転移したときから」
当然のように返ってきた答えに俺は文字道理に目が点になっているだろう。いくら何でもそれは想定外だった、なにせ
「私ね、オリジナルがオリジナルなせいか転移の痕跡? どこに誰が転移してきたのかって言うのに敏感なのよ」
「そうか、君はあの女神様、レーチェル様の・・・」
そこまで言ったときに再びビンタをされる。酷くないかい? 今のは流石にビンタされる要素ないと思う
「あいつに様を付ける必要は無いわ」
あ、うん、理解した。どうやら、マリアさんとレーチェル様は仲が悪いみたいだね。険悪ってわけではないみたいだけど、作った者と造られた者のジレンマ・・・反抗期かな?
「何か凄い不快なことを考えられた気がするわ」
「・・・気のせいだよ」
いやはや、オリジナルがレーチェル様だけあってマリアさんの勘は人外だね。俺もそうだけど、人間として生きた年月よりも遙かに長く幽霊しているマリアさんを人間扱いするのが妥当なのかはわからないけど
「しかし、だからと言って・・・」
「転移させたのがレオンなのに・・・かしら?」
俺はその言葉に頷く。ああ、他の救援者たちはどうだか分らないが、俺にこんな場所に転移してくる力は無い。つまり
「完全にゲームなのね、レオンにとっては」
「もっと言えば勝っても負けても構わないって言う認識なのだろう」
レオンはおれたちのような救援者が現れることを初めから予見していた。トップバッターのバンパイアたちは出遅れたみたいだけど、他のメンバーは参加の意思を示したときに一カ所に集められてそれぞれふさわしい戦場への転移を条件に参戦を許可されたと言うべきか・・・確実に自分が望む戦場に駆けつけられるのならば拒む理由はない。そこに嘘を織り交ぜる必要性もレオンにはないはずだ
「リュウト君を無事に通した時点で私の役目は終わり。その後に私がどうなろうとメイン、リュウト君とレオンの戦いには影響がない・・・とでも思っているのかしらね?」
実際にはマリアさんや他の仲間が生存しているのといないのとではリュウト君の神としての特性、自身に向けられる信仰心、愛情や友情の強さに比例して距離に反比例してパワーアップする特性故に基本スペックが大きく変化するはずなのだけど・・・そこはどっちであっても面白いって感覚なのかも知れない。まさにゲームだ。いや、ひょっとしたら、まさかな
「どう? この戦場はもう盤上のお遊びみたいだけど、それでもチップを払っていくかしら?」
「当然だ。そこにのせられているチップがマリアさんの存在である以上、俺の存在をかけるには十分すぎる遊戯だ」
愛する人の争奪戦は戦場にさえほとんど立てずに退場させられて弟子に負けた俺だけど、この戦場だけは下りる気は無い・・・少なくてもいま俺に向けられた笑みは俺だけの報酬なのだから
と言うわけで珍しいアラン視点でした
マリア「・・・様は付けるなって言ったのに変わらずあのオリジナルに様を付けているなんて」
さすがに内心の自由は保証してあげませんか? 憲法にだって
マリア「自分視点ならば考えていることがそのまま公開される世界でそんな物はないわ! 大体ここは日本どころか地球でもないんだから!!」
そ、それはそうなんですが・・・レミーとかコクトもレーチェルのことは様付けしますよ?
マリア「あの2人は部下だから仕方が無いわ。呼び捨てしたらオリジナルが絶対にお仕置きするでしょうし」
(アランが自分によく似た存在に様を付けるのが嫌なだけなんじゃないだろうか?)
マリア「作者君? 言ったわよね、この世界に内心の自由はないと」
へっ? その、どこへ?
マリア「ご・う・も・ん・し・つ♥」
やっぱりオリジナルと同じじゃないか~~~! いや、マリアの場合だと回復は無し?
マリア「その代わりじっくりねっとり痛めつけてあげるわ。とここから先はR200ぐらいにさせて貰うわ。次回もまた遊びに来てちょうだい、またね」




