最終部7章「姉の矜恃」2話 「都合の良いこと」
「さぁ来なさい! リュウト=アルブレスが姉、マリア=ストルが相手になってあげるわ!」
その言葉は真実だけど私が出来る最大限のはったりであり、同時に敵を私に引きつけ警戒心もあげることになる呪いでもあるわ
リュウト君が私達の最大戦力で切り札、そして中核であることなんて誰でも分ることなのだから
「ギギッ、竜ジンのあネ・・・」
ここまで来る道中、それほど多くの時間ではないけれど襲ってくる敵の姿は多くの個体を見たわ。見た目と知能が必ずしも比例するわけではないけど、いま私の目の前にいる虫と人の中間のような存在は如何なのかしらね? ただ発音が得意ではないだけなのか、見た目は言葉どうりの知能なのか
「ええ、そうよ。あなたたちに私の弟が相手をする必要なんて無いわ」
私がリュウト君よりも弱い。それはばらしても不利にはならない情報。だって、ばらすまでもなく知られているから・・・だから今は私が姉であることを強調するわ。姉だったら同じように強いのではないかって警戒してくれた方が私には戦いやすい。実際に実の妹のリデアちゃんはあの性格だからそう思われにくいってだけで私達の中でもかなり強い方なのだし
「どうしたの? かかってこないのかしら?」
私達の後方に転移させられたはずの彼らは今ではゆっくりと私を包囲するように移動している。まだ背後までは達していないけど放っておけば完全な包囲網が出来るのは時間の問題かしら・・・私には都合が良いわ。逃げるつもりも手段も始めからない。それに
「ギギッ!」
このジリジリとした空気に耐えられなかったのか背後の方へ回っていた1匹が私に突撃してくる。それにつられるように動いたのも1,2,3・・・7匹、最初に動いたのと合わせて計8匹ね
この子たちはおそらくはトワメルの実験体。同種たちを集めたのか多くは昆虫のような堅い外殻をもった者たち
「舐めないで・・・欲しいわね!」
カマキリのようなその腕に触れることなく風で絡め取って後から突っ込んできた敵の中に投げる。まともに当った間抜けは2匹だけだけど、それでも回避しようとして前進してくる速度が落ちたわね・・・リュウト君だったらそんなミスはしないわ!
「わざわざ捕まりに来てくれたのかしら!」
全員が同じ方向から来たわけじゃないから影響を受けなかった奴が先に到達して私に捕まり関節を決められる。そして、その瞬間に敵の方へとまた投げる
私にはあなたたちのその硬い体は意味が無い。むしろ関節技がより強く効くわ。あまりにも私に都合が良さ過ぎてハンデとして仕組まれたのかと思ってしまうほどに・・・どちらでも私には関係のないことね。やるべき事はどちらでも変わらない。そして私の弱点、1度に多くの相手をするのは苦手だというのを悟られないように・・・
「ふふっ、迂闊に近寄ったら怪我をするだけよ? 精々ない頭で考えてみなさい」
挑発であり牽制でもある、そんな言葉を発して気がつく・・・はぁ、来ているのならば早く出てくれば良いのに。そうしたら私が少しは楽になるでしょう?
マリア姉はリュウトたちの中では強くはありません。ですが
マリア「戦えないってわけじゃないわ。だって私は無敵のお姉ちゃん!」
それを理由に出来るのはまさしくマリア姉の特権なわけなのですが、敵が少なくて時間をかけても良いのならば弱くもないのですよね。特に防御頼みの物理アタッカーには好相性です
マリア「以前にコクト君が私が苦手だというのは正解なのよねぇ」
以前コクトがマリアを殺したときは実力差が大きかったですが、今戦ったらマリアが勝つかも知れないぐらいにはコクトの天敵なんですよね。後この話の大事なところは・・・
マリア「あいつがどうしてすぐに出てこないかよね。まったくさっさと出てくれば攻撃が分散するのに」
ははっ、まぁマリアを助けに来る援軍は彼しかいません。と言うところで今回の話しはここでおしまい! 次回もまたよろしくお願い致します




