最終部6章「守り手の意地」4話 「親馬鹿兄馬鹿」
「おいおい、つまらねぇ戦いをしてやがるな、お前は」
聞こえた声、俺の元へやってくる者、2つの条件から導き出される答えは
「何のようだ、コザルトス」
「おいおい、とうとう父さんじゃなくて呼び捨てか? これでもてめぇの親父なんだがな」
そうだ、この黒の全身鎧という見た目も近いこの存在は遙か前に死んだはずの俺の父。以前の地獄の騒動のようにこの状況下ならば地獄の門が開かれていることはあり得ない話ではないが・・・
「・・・俺の戦いにケチを付けに来たのか」
援軍に来たのならばあんな風に腕組みをして立っているだけと言うことはあるまい。前に共に戦ったときも全てを見せたわけでもなさそうだったのに当時の俺よりも上だったのだから
「ああ、俺の息子の割に情けない。時間を稼いで判定勝ちを貰おうだなんて情けなくてなみだが出りゃあ」
「っく・・・」
確かに自力で全員を倒し、そして他のメンバーの救援に向かう。それが最良であることは言うまでもない。だが、俺の能力は・・・そのいらだちを込めて飛びかかってきた敵を切り伏せる
「そう、一番気に入らねぇのはそれだ。確かにお前の能力は守りに特化している。だが、持っている手札を全部使わねぇんじゃ話にならねぇ。それも先のために温存しているのならばともかく手札を把握していねぇなんてもってのほかだ」
手札?
「お前の剣、それはあのレーチェルの小娘が贈った物だろう? あいつは実力はてんで駄目だったが、そう言う小細工には長けた奴だった。あいつがただの切れ味の良い『だけ』の剣などよこすと思うのか?」
確かにレーチェル様らしくはない。神魔剣バラトルナ・・・
「レミーですら自分の持っている手札ぐらい把握しているだろう? 完璧じゃねぇかも知れねぇがあの弓が持っている能力の一部は使えているって聞いたぜ。ま、そこは俺の可愛い娘と言うだけのことはある」
「・・・ああ、そうだな」
「おっ、お前が俺の言うことに素直に頷くとはな」
「? 誰が言った言葉であろうともレミーが全世界で歴代最も可愛いのは当然のことだ。目が見える存在ならば、いや目が見えんでも声を匂いを体温を、僅かでも知覚できれば全存在が当然そう認識していることだろう。発したのがレオンであっても議論の余地もない真実を否定する理由がどこにある?
可愛いと言う一言だけで表したのは許せんが、否定する理由などどこにも無いと言うことすらこの男は分らんと言うのか?
「あ~お前、レミーのことになると饒舌になるな?」
「饒舌? ふざけたことを、俺にリュウトほどの口があればこの千倍は優に語るだろう」
「・・・そうか。そういやあいつもそうところあったっけな。増幅というか濃縮しなくてもいいだろうに」
よく分らんが戦場で固まっている割には迎撃をしてくれる。自らは動かなくても置物として使えるかもしれん
「おい、親父様を便利に使おうとするなよ。『助けてください、お父様』と言えば手を貸してやらんでもない」
「・・・悪魔め」
「おう、悪魔の将軍様だ・・・なぁ、レミーに俺の血が半分入っていること忘れていねぇよな?」
「・・・ああ、唯一の大失点だ」
それさえなければ、その美貌だけでレオンさえ跪くだろうに・・・何故そこで天を仰ぎ見る、父さん?
ということでやっぱりやって来たのはコクトの父コザルトスなわけなのですが
コクト「文句だけを言いに来るとは使えん」
ま、まぁ、そこはちゃんとアドバイスもしているわけで・・・他のことで霞んで全然目立っていませんが!
コクト「うむ、レミーの名が出てきた時点でそれ以外のことは全て陳腐になってしまう」
・・・ああ、本当にこれまでは随分と押さえていたんだな。全開になるとこれほどとは
コクト「全開? 何を言うこれほどまでに押されているではないか? ふむ、これはレミーの素晴らしさを再教育せねばならんか」
再!? っていうか教育された覚えはありません! え、えっとこのまま語らせると新興宗教を起こす勢いで洗脳されかねませんのでここでお開きです。では次回もまたよろしくお願いいたします~




