最終部6章「守り手の意地」3話 「堅牢」
「いい加減に・・・」
「いい加減に学習するのは貴様の方だ」
何度目になるか分らない一斉攻撃。それは確かに僅かずつ俺の体力を削り取っていくが致命と呼べる物は1つもない
「くっ、だが僅かずつでも不利になっているのは気がついているだろう?」
「さて? なんのことだ」
分らないはずもない。確かに俺の体力は削られていっているし、敵の数は補充されていっている。俺が反撃で倒した数とそれほど変わってはいないが、結果として数が変わらないのならばいずれ押し込まれるのは自明の理だろう
だが、それでも余裕の態度は崩さない。それが一体何の不利益になるとばかりに構えていろ。あいつならば、リュウトならば必ずそうするだろうから
「ちっ、この壁を取り除けば命は助かるだろうに」
「それこそ死んでも無理な相談だ。この壁の先に進みたければ俺を殺して壊して見せろ」
追加でやって来ている連中もここを超えさせないために巻き込んで閉じ込める。俺に感知されないほどの距離から回り込んでいる奴がいるのならば仕方が無い。そこは次の場所にいる者に任せるとしよう
そして俺が死んでもこの壁が自壊することはない。そんなことになったら最後にたっぷりと残った力で強化して死んでやるから俺の呪いとして時間も体力も消耗していけ
「ふん、レオン様が本気ならば我らを先に転移させる事も可能なのにか?」
「できるだろうな、確かに。だが、出来るというのとやるというのは別だ」
レオン『様』か。こいつらはどう考えても直属の部下ではないだろうに、その程度で俺を揺るがさせる気ならば舐めているし、レオンの機嫌を取って有利に力を発揮して貰おうというのならば無駄なことだ
レオンはこの状況でも遠距離にいる者を自由に転移させることが出来る。これはもう確定と考えて良い。だがレオンはそれを『やろうとはしない』だろう。レオンにとってはこれはゲームだ。1人また1人と足止めを買って出る俺たちとのゲーム。ならばこの先に新たな敵役を配置することは当然やっても、足止めされている者を先に進めることはしない。それではゲームが成立しない。レオンにとって面白くはないからだ。俺たちはその油断と隙を突いてリュウトを限りなく無傷でレオンのいる場所までねじ込めば勝ちだ
「御託では壁は壊せん。先に進みたければ力を示して見せろ」
「ちっ・・・」
隙を狙うジリジリとする時間。だが俺にとっては時間などいくら過ぎても構わない。こちらから攻める意味も無ければ、焦れてやる必要も無い。奴が無限におしゃべりをしてくれるというのならば、付き合ったやっても構わないのだがな。挑発で突っかかってきて数が減らせても俺の利だ
「・・・ムッ?」
「ヘヘッ、先ずは盾だ」
何度目かの衝撃で壊れた盾。これでもリュウトに作って貰ったかなり頑丈なオリハルコン合金だったのだがな。だが、所詮は盾は盾にすぎん
「おいおい、つまらねぇ戦いをしてやがるな、お前は」
そんな聞き覚えのある、この場で聞こえることが嬉しくも苦々しい声が後ろから聞こえなければ
窮地のコクトの元にやって来た謎の人物はいかに!
コクト「俺の元にこんな言葉でやって来る奴はあいつしかいまい。それと俺は窮地になど陥ってはいない」
盾とは言え防具の1つを失って死ぬ覚悟で防衛している奴は普通窮地なんだよなぁ
コクト「この物語で普通だったことなどあったか?」
・・・最初の頃に少し?
コクト「それはリュウトがまだ人間らしかった頃だろう?」
最初、雪崩から自力生還したりしていたのがまだ人間らしいと評される・・・うん、まぁ当時から心臓が止まって仮死状態ですんでいても普通に戦っていられる今よりかは人間か
コクト「ならば、まだ大きな怪我を負っていない俺は窮地ではない」
その基準で本当に良いのだろうかと思いつつも世界の常識は世界事に違うで納得しておきましょう。そんなところで今回はこれでお開きです。次回もまたよろしくお願い致します~




