最終部6章「守り手の意地」1話 「優しくはなく」
「レーチェル! どっちに向かえば良い!? いや、コクトでも良いんだが」
転移陣の位置は当然レオン側の意向だろう。つまりはレオンがいる場所に通じているレーチェル様の神殿とは離れた場所にあるのだろう。俺はあまり天界は出歩かなかった故にこの辺りは分らないが
「ここは・・・ちょうど私の神殿の真裏ね。どっちに向かっても同じと言えば同じね」
天界は地上からは見えないようになっていると言うだけで空を覆うように展開されている。つまりは天界もまた球状、というよりは薄い膜のような形で星を覆っていると言うべきだろう。つまりは地図ではなく実際の球体、ボールのような物を思う浮かべてもらえれば分るが、裏からならばどこに向かってもまっすぐ半周すれば等距離でたどり着くと言うことだ。だが
「リュウト、何故レミーには聞かない?」
俺たちの中で最も長く天界で過ごしているレーチェル様に聞くのは分るが、俺よりも長く天界で過ごしているレミーに聞かん理由はないだろう?
「・・・あっ、いや、レミーに聞くのはな?」
「リュウト君、はっきりと言いなさい。レミーだと言っていることが正しい保証がないと」
その後、それは言いすぎなんじゃないかとか、はっきり言わないと理解しないとか、堕天使の方ならば大丈夫そうなんだがとか2人で話していたが失礼な話だ。完璧なレミーが間違えるわけがないだろう?
「みんな!」
そんなやり取りをしながらも足だけは当然のように全力で進む。そうでなければ後ろで敵の足止めをしている者たちの行動が無駄になるからだ。だがそれは1ナノ秒も遠く及ばない短時間で終わる。最初に反応したのはリュウトで・・・
「あいたっ!?」
レーチェル様にポカリと頭を殴られる
「リュウト君は臨戦反応をしない。あなたは極力力を温存して最後まで行くことを考えなさい」
「しかし!」
周囲に感じられる敵と思われる存在の大群。明らかにあらかじめ張られた罠ではなく、俺たちの選んだコースを見てから転移などでここに移され包囲したのだろう。こっちはどうにもレーチェル様や存在の剣を使った転移は封じられているようだというのにハンデが過ぎるのではないか? などと言って事態が変わるものではないが
「皆、一カ所に・・・」
俺の言葉に全員が一瞬顔を見合わせた後に集まる。何をするかも伝えていないのにこの行動は少しこそばゆいな。だが、俺がその全員を強固な土の塊の中に閉じ込めると流石に焦ったらしい・・・何をするつもりなのかを悟ってな
「コクト!」
「ここは俺に任せておけ。そろそろ走ってついて行くのも面倒だ」
このまま土の塊を敵陣の外まで放り投げて俺が足止めをする。あの土を破壊して出てくる程度はアシュラとアキさんがいれば十分だろう
「レーチェル様、レミーとリュウトを頼みます」
「・・・私には何もないのかしら? あなたをずっとこき使ってきた私には」
「ははっ、でしたらこの戦いの後で恨み言を言わせて貰いましょう」
ですから生き残って下さい、お互いに
「・・・厳しいわね、あなたたちは全員」
「ええ、優しくされるほど罪は軽くないでしょう?」
レーチェル様のことだから全てが無事に終わったら何処かに消えてしまいそうだ。それ以前にこの戦いで生き残ることを考えていない節がある。そんなことは認めない、俺たち全員が・・・そう暗に告げて、俺は全力で自身が作り出した中が空洞の岩を前へと投げ飛ばした
コクトは中々はっきりとレーチェルには言わないタイプですね。だから仲間内で恋人が出来ない唯一の・・・
コクト「・・・騎士は本心をはっきりとは言わない物だ」
レミーには愛情をまったく隠さずに全方向に投げているくせに
コクト「? 何を言う? あんなに押さえているじゃないか」
アレで押さえられていたのか、アレで。今、作者さえも知らなかった恐ろしい真実が明らかになった気もしますが、精神衛生上無視しておきましょう。あっ、ちなみにコクトがレーチェルに持っているのはあくまでも感謝と忠誠心です、愛情ではありません
コクト「・・・レーチェル様にそんな物を持つほど命知らずではない。恋人などになろうものならばボロ雑巾になるまでこき使われる」
・・・つまり恋人にしているリュウトは命知らずだと? いや、あっているか。それにあいつならばボロ雑巾どころか塵になっても再生するし
レーチェル「2人とも好き勝っていってくれるわね? とりあえず、向こうでゆっくりお話をしましょうか? 読者のみんなはここまでよ。この先は女神権限で秘密にさせていただくわ。じゃあ次回もちゃんと見に来なさい。女神との約束よ」




