最終部5章「美しき者の戦い」5話 「弟の思い」
「おっ!」
「・・・えっ?」
それに気がついたのは姉さんの驚いた、あるいは嬉しそうな声を聞いたから。そして次の瞬間には突然現れた巨大な腕に姉さんが殴り飛ばされて視界からいなくなった
「い、一体何が!?」
俺とて鬼の一族に名を連ねる者だ。不意打ちが卑怯だの何だの言う気は無い。まして、今ここは戦場だ。いかなる存在がいかなる方法で攻撃してきても文句を言う方がお門違いだと言うことは分っている。だが、あの姉さんが気づけずにその不意打ちを受け、そしてこの場からいなくなるほどのダメージを受けた? ただ吹き飛ばされて少し距離が開いた程度だったら良いんだが・・・いや、きっとそうに決まっている。あの姉さんだ
「一番厄介な存在は始末した」
「な、何を馬鹿な・・・」
それ以上の言葉を言えずに俺は口よどむ。普段から地獄の亡者を見ていた俺すらも異形と感じるから揺る者が融合したような姿と声。それだけならばまだ何も感じないかも知れないが
「次はお前がこうなる番だ」
見た目の割にはしっかりと言語を操れる知能はあるような怪物が体中に100はあるだろう顔と口のどれから発しているか分らない言葉で言う。そして先ほど姉さんを殴りつけてきた巨大な腕、いや腕のようなものたちの中の1つに握りしめられていたものは・・・
「姉さんの腕?」
それが姉さんの元々の肌の色かそれとも血で染まった色なのか判断できないほど状態だけど、それでもそれがさっきまで隣にいた姉さんの片腕だって言うことは分る
「なかなか美味そうな腕だ」
そう言うなりバリボリと音を立てて姉さんの腕をむさぼり食う姿に覚えた感情、それは怒りだった
「それはお前なんかが食べていいものじゃない!」
地獄には他者や自分の腕をもいでむさぼり食う存在など腐るほどにいる。地獄の門番である俺や他の鬼たちに食いついてくる度胸のある者たちもいないわけではない。だから腕をむさぼる姿や音に恐怖を覚えるほど柔ではない・・・けれど! その腕は、その体だけは駄目だ!
「返して貰う!」
腹、そこが本当に腹なのかどうかも怪しいが、形状的に本来は腹があるだろう場所を思いっきり殴りつけ俺が覚えている限りの姉さんの腕を食った口たちに腕を突っ込む。餌の方から飛び込んできたとばかりに噛みついてきたがその程度気にはしない。随分とズタボロになったがまだ消化まではされていないその腕たちを吐き出させることが出来た・・・その代わりに俺の腕は食われてしまったが構わないだろう
「赤い腕に比べれば劣るが、貴様の腕もなかなか美味い」
「そうか、それは良かったな!」
最後の晩餐だ、美味い肉ぐらい食わせてやってもいい。だが、姉さんの体は・・・俺が憧れ続けたその腕だけは駄目だ!
「俺の腕ならば冥土の土産にやろう。だが姉さんの腕はお前には過ぎたるものだ!」
そう渾身の力で殴りかかって・・・得体の知れない力に弾き飛ばされる
「なっ・・・!?」
俺は今、何をされた? いや、動け。姉さんが受けた攻撃よりはずっと軽いだろう? 動けないはずがないだろう?
「なかなかの肉だ。先ずは足か? それとも腹? いきなり頭にするか?」
ジュルリと近寄ってくるその異形を睨み付ける。十分に動けるほどまでは回復していないがそう簡単に食われてやる気は・・・
「おい、俺の弟を誰の許可とって食おうとしているんだ?」
そんな声と共に今度は異形が吹き飛ばされたのを俺は見た
と言うわけで表面上は同あれ中々姉思いの弟なのです
覇鬼「あ、あれでも鬼の中では優秀なんだ」
女の子のツンデレは需要ありますが、男のツンデレは需要薄いですよ?
覇鬼「だ、誰がツンデレだ!」
リデアと言いどうしてツンデレは自分のツンデレを認めない・・・認めるようならばツンデレじゃないのか
覇鬼「さ、さっきからツンデレツンデレと・・・!」
ってなに腕を振りかぶって!? あ、あとがきの話が全然進んでいないのに~~~!?
覇鬼「誰のせいだと思っている! ・・・ふ~、作者はしばらくは会話できないようになったから今回はここまでだ。次回はまたあの人が活躍するだろうから是非見に来てくれよ」




