最終部5章「美しき者の戦い」3話 「鬼」
「おい、覇鬼! どうしてここにいやがる!」
てめぇは地獄の門を内外から守護する役目を貰っているだろうが!
「姉さん、今回の戦いは姉さんたちだけの戦いじゃない。生きている者たちだけの戦いですらない。この世界に存在したありとあらゆる者たち全てを賭けた戦い・・・少なくても気がついている者たちはね。地獄の門を開けてここに俺たちを派遣したのも閻魔様だよ」
閻魔様・・・円はリュウトに随分と好意的だからな。流石にリュウトにそう言う思いを持っていてアピールとかじゃねぇよな? そうだったらいかに閻魔様でも譲れねぇんだけどよ
「けっ、それで俺の遊び相手を奪いに来やがったのか?」
こんな会話をしている最中にも構って欲しそうにやってくる連中の頭を叩き割っていく。勿論、それは覇鬼も同じだ・・・ん? 何を俺を見てやがる? ああ
「あんまり見るんじゃねぇ。こいつはうちの女神様が贈った装備だよ」
まぁ、元々俺が着ていた服も露出度はそう変わらねぇが、弟とは言えリュウト以外の奴にあまりじろじろ見られてぇわけでもねぇ。ま、弟でなく亡者共だったら何度目かの死出の旅に強制的に行かせてやるだけだったんだがよ
「・・・姉さん、まずそっちなのかい?」
「・・・どういうことだよ?」
他におかしいところなんざねぇだろ? おっ、死んでも俺のはらわたを噛みちぎっていく奴がいるとは中々やるじゃねぇか!
「それだよ! そのボロボロでズタボロで血だらけのその状態が嫁に行ったはずの姉さんにしてはおかしいって言っているんだ!」
「だ、誰が嫁に行っただ! ま、まだそう言う関係じゃねぇ」
「だから気にするところがおかしいんだよ!!」
んなこと言ってもだ、俺たちは鬼だぜ? なぁ?
「はっはっは! 久しぶりに会ったが相変わらずだな覇鬼」
「俺たちに細けぇ事は関係ないだろ? どうせ死んでも元々暮らしているのは地獄なんだしよぉ」
ほらな、お前が連れてきた他の鬼たちもそう言っているぜ。まぁ、俺に比べればどいつもこいつも大したことはねぇんだが、敵も数が多いだけだしな・・・俺の遊び相手が減っちまうだけだ
「これだから地獄に着た連中が怖がるんだよ」
「何、頭抱えてやがる。地獄に来るような連中がどう思おうが知ったことじゃねぇだろうが」
俺たちは鬼だろう? だったら敵対する者に容赦なんて考えなくてもいい・・・リュウトも見ていねぇからな
「本当に昔と変わっていないね、姉さんは」
「これでもリュウトの所では少しは大人しくしていたんだぜ?」
「その少しがどの程度か気になるけど、竜神様・・・リュウトさんが居ない場所でも継続して欲しかったよ」
そんなことを言っているから鬼らしくねぇってお前は言われるんだよ。リュウトの所にいるのは色々幸せだけどよ、リュウトの所では発散できねぇもんをここで発散していくってだけさ
「だが、そう言うお前も中々やっているじゃねぇか」
「姉さんみたいに本当は手加減できる余裕があるのに過激にわざと暗いながら戦うほど俺は強くないんだよ!」
おおっ! あの弟が俺を褒めるなんてな
「なんだ、いきなり褒めても酒は出ねぇぞ?」
「褒めていない!」
「はっはっは! まぁいい、久しぶりの姉弟共闘と行こうじゃねぇか」
まったく何でそこでため息を吐くかねぇ。こんな楽しい戦いはそう多くはねぇってもんだろうにさ
鬼らしい美鬼と鬼らしくはない覇鬼です
覇鬼「姉さんが大人しくなってくれると期待していた俺が馬鹿だった」
美鬼は典型的な鬼ですからねぇ。アシュラとも仲が良いですし、死ぬまで・・・死んでも変わらなさそうですね
覇鬼「・・・馬鹿だったのは姉さんだったか」
死んでも治らないという点ではそうかも? ま、これでもリュウトの仲間ではなかなかの常識人で
覇鬼「預けた先が致命的だった!?」
と今更な真実に覇鬼が気がついたところで今回はここまでです。次回もまたよろしくお願いします




