最終部5章「美しき者の戦い」1話 「最後の返礼」
アイたちに後ろを任せる形で俺たちは転移陣から先へと急ぐ。そして、その先にいたのはやはり予想の通り敵の大軍団だ。へっ
「どうした美鬼?」
ニヤリときっと凶悪とか獰猛とかって言うのが正しいだろう鬼の笑みを浮かべて前に立った俺にリュウトが聞いてくる。んなもん決まっているだろうに
「ここは俺が道を作るぜ。リュウトたちは先へ行け」
「・・・いいのか?」
俺が好きな戦いは確かに強敵との戦いだが、こんな時までそんな我が儘を言う気はねぇ。こう言う数を相手にするのはスタミナが高い俺かアシュラ当たりが適任なんだが、アシュラはもっと強敵用に残しておきてぇところだろう。後はアキも数の戦いには強いが、あいつはマジシャンだからな。攻撃を防ぐ存在がいればいいが、単独じゃ攻撃を受けちまうと危ねぇ・・・なにかあったらリュウトが一番悲しむからな。その点、俺が一番頑丈って言うもんだ
「おう! でかいの一発ぶちかますからさっさと行け!」
「それは私に任せて貰うよ! 『我が思いの形は常に一つ・・・汝の力を借りて、ここに現出させん!』ドラゴンソウル!」
ったく、力を温存させてやるって言っているんだから大人しくしていれば良いのにアキの奴は・・・ともかく開いた敵陣の大穴を俺たちは走り抜ける。そして抜けた先で俺だけが振り向いて足止めをする
「・・・これ以上見せ場は奪わねぇでくれよ?」
この先にも敵がいるだろう。その時に挟み撃ちは危ねぇって事ぐれぇは俺だってわかるさ
「わかった。だが、無理はするなよ!」
「・・・ああ」
こんな戦うことしか知らねぇ野蛮な女にもそんなことを言ってくれるリュウトに思わず頬が緩みそうになる。こんな俺にこんな感情を植え付けるんだからやっぱりあいつは大した天然タラシだよ。ま、あいつの場合は男だろうが女だろうが同じ事をするんだろうけどよ
アキの一撃によって浮き足立っていた大群が落ち着いてきた頃に俺は背中から取り出した金棒を元の大きさに戻してドンと地面を突き立てるように叩く。この程度のことで動揺するんじゃねぇよ、雑魚共が!
「どうした? この俺が相手をしてやろうって言うんだ? あの世で誇りてぇ奴からドンドンかかって来いよ」
なんだよ、せっかく俺がはっぱをかけてやったというのに動きやがらねぇ。おまけに棍棒を構えずに少しばかり隙を見せてやっているって言うのによ。しゃあねぇ、俺の方から動いてやるか
「ほら、どうした? 突っ立っているだけであの世に行っちゃ面白くねぇだろ?」
向こうでも俺の仲間たちに可愛がってもらえるかも知れねぇが、どうせだったら俺に一撃ぐれぇ入れたって言う土産話を持っていった方が良いだろう?
「・・・っ!」
「おっ、やっと攻撃してきやがったか? けどよぉ、撫でるだけじゃ痛がってやれねぇな」
敵の前衛、穴開けられて突破されたって言うの隊列変えもしていやがらなかったから本来は後衛か? に俺の金棒が当るところまで近寄っても動きやがらねぇと数体地獄へ招待してやったところでようやくぶん殴ってくる奴が出てきやがったぜ。ま、それなりの剣なのかも知れねぇが、リュウトの存在の剣ほどじゃねぇ上に使い手があれだ。この程度じゃまともなダメージを喰らってやれねぇな
「さぁ、こんな戦場に俺を使わなければ良かったなんてリュウトに言われるような事にさせてくれるなよ?」
あんなことを言われちまったら死に花を咲かせるとは言えねぇが、俺みてぇな女を恋なんて物を教えてくれた男に最後の返礼を出来ねぇようじゃ俺の女が廃っちまうからな
と言うことで美人は多くても美しいで出てくるのはこの人です
美鬼「いや、名前に美が入っているってだけじゃねぇか」
・・・外見だって十分に美人なんですけどね。でかいし筋肉隆々でもありますが
美鬼「お、俺だって自覚はしているよ・・・」
絶対に後半部分しか自覚していないと思われますが
美鬼「・・・俺が世辞で懐柔できると思うんじゃねぇぞ?」
違いますよ!? なんというかこういう所で自信がなくて乙女なところがある美鬼姉さんの話を今章はお楽しみ下さい。では~




