最終部4章「人間として」6話 「それでも君は」
アイの目が僕たちを捕らえてまん丸に見開かれる。昔、アイによく悪戯をされた物だけど、彼女もこんな心境だったのかも知れない。思わず笑い出してしまいそうになるほどにその顔は可愛くて
「な、なんで?」
「何でも無いにもないよ。僕は君の手を取ることは出来なかったけど、君の友達であることを止めたつもりはないよ。あの時に言ったようにね」
あの最後の時も、アイを助けに行ったときも僕らの関係は『仲の良い友達』なのだとそう言った。仲が良い友達が困っていたら助けに行きたいって思うのはおかしな事ではないだろう?
「まったくもう! いつまで経ってもボクを自立させてくれないんだね、みんな」
そう言うアイはむくれたようでいて笑顔でボクを・・・そしてボクの後ろにいる皆を見ていた
「ちゃんと見ていないと不安なところがあるからね、アイは」
「ムゥ」
そう今度は本当にむくれるアイに吹き出してしまいそうになるけれど、今は戦いの最中。罠が破られたことで動きが止まっているとは言え、悠長に会話している暇はあまりない
「仕掛けられていた罠は複数。その中に精霊の送還や2足歩行の強制何て言うものもあったから」
「ボクたちを狙い撃ち・・・ううん、ボクたちだけでなく全員分の罠をあらかじめ用意しておいたのかな? メイだったら高確率でボクたちだと思いながら、念のためとかで他も用意するんだろうけど」
誰だい? その恐ろしい予想をやってのけるメイって人は? さすが竜神の仲間と言うべきかとんでもない人が今のアイのそばにはいるらしい
「べ、ベチャクチャと余裕を見せ追って・・・!?」
そんな現状確認をしていたところに魔物の1人が僕に襲いかかってくる。せっかくアイの顔を見ているんだから君の醜悪な顔は見せに来なくて良い。だからボクは魔物の方を見ずにその目にナイフを投げ刺す。まったく、アイの可愛らしい声を聞いているんだから、そんな声をボクに届けさせないで欲しい。今だって耳障りな悲鳴を上げて・・・
「ヒジリ、また強くなった? 他の皆も」
「・・・アイほどじゃないよ」
確かに皆強くなったけど、竜神の元でとんでもない戦いや特訓をしているアイほどではない。それでもアイのためにってみんな向こうでも修行はしていたんだから、人の枠は超える程度に強くならないと困る・・・もう僕らが死んでから千年は楽に過ぎているのだから
「それでも凄いよ。みんなありがとう!」
そういうアイに余裕のある面々は顔をほころばせる。ボクたちが強くなった理由は単純だからね。君の笑顔さえあればそれで報われるという物なんだ
「それは僕たちのセリフだ」
だからそう言ったんだけど、アイにはどうにも分っていない。前から頭は良いと思うんだけど、こういうことにはどうにも勘が働かないのも変わっていない
「アイは僕たちの・・・やっぱり止めておこう」
きっと君は否定するだろうから。自分はもう王女ではないって・・・それでも君は僕たちの王なんだ。君が言っていたように死んでも君を支えたいって思って集まってくれる人たちがこんなにいる。僕たちが勝手にそう思っている分には構わないだろう?
「ヒジリ、少し意地悪になった?」
「どうだろうね、君に色々されたからかな」
さて、むくれる王様には悪いけど、彼女はそれなりにまだ疲労しているようだ。もう少しだけ休んでいて貰おう。足にしていた狼もまだ僕らの仲間が治療中だしね
「それよりもアイ、向こうを見て欲しいんだ」
「えっ、嘘・・・お父様」
そう、ここに来たのは僕たち戦闘員だけじゃない。戦うことは出来ないかも知れないけど、君を支えるために来た人は他にもいるんだって
アイならば助けに来るのは・・・ヒジリ以外もちゃんと出しておきましょう
アイ「作中に出てくるのは完全に初な気がする」
気のせい・・・ではないんですよねぇ。教育係の爺は出てきているんですが
アイ「流石に爺をお父様と思っている人はいないと思うけど・・・ボクも爺って呼んでいるし」
そこら辺はなんともですが、今回そして次回当たりで昔のアイを見せられたらって感じですね
アイ「えへへ、昔のか弱くて可愛かったボクをしっかり見てね~」
・・・そんな時代はあったんだろうか?
アイ「こら~~~! そこは今でも可愛いって言う所なんだよ! あっ、作者はやっぱり気絶しちゃったから今回はここまでだよ。次回もちゃんと見に来ないと僕怒っちゃうぞ・・・なんてね」




