最終部3章「悪魔の親子」5話 「救援者たち」
「う~、しぶといよぉ!」
そう文句を言いながらも戦っている私の愛娘。確かに言いたくなる気持ちはよく分るわ。普通であればもう何度も致命と言えるダメージを与えられる攻撃を当てているのに再生を繰り返している。勿論、再生にもエネルギーを使っているからこれを繰り返せばいずれは・・・とは思うのだけど、その前にママナの方が
「・・・ママナ、リュウトさんたちの所へ行きなさい」
「えっ!? な、なんで! お母さん!」
私の言葉に当然のようにママナは反発するけど、そんなことを言っている場合ではないわ。私たちだって隠密状態からの回復を使ってある程度の欠損は補えるけど、それでもエネルギーの消耗は抑えられない。何度も反撃を受けているママナは見た目以上に消耗しているわ。それに
「私たちの目的はリュウトさんやアシュラ様の情報をレオンたちに知られないことです。ここにいた使い魔たちはすでに倒したのですから、あなたが逃げても私たちの勝利と言えます」
「だったら! お母さんも一緒に逃げれば良いじゃない!」
ママナはそう叫ぶけど、私は静かに首を振る。ママナの気持ちが分らないわけではないわ。むしろよく分ると言っても良い。それでもダメージを受けたママナや私が逃げる速度と削れているとは言えまだ十分すぎる余力を持ち、放置すれば受け継がれてしまっているかも知れないリュウトさんの特性で回復されてしまう危険性も大きい・・・そんなギャンブルに娘の命を賭ける気にはなれません
「大丈夫です、あなたが無事に逃げた頃に私も逃げますから。私の隠密の実力はあなたも知っているでしょう」
これは嘘です。それもママナも容易に看破できる嘘です。隠密に自信があるのは事実ですが、それならば今のママナも同様の実力。そして、敵対している怪物も同じような能力を持っている確率が高い。隠密状態だから攻撃を受けずに逃げられるなんて言えるような相手ではありません
「・・・嫌だよ。お母さんの言っていることは分る。私を助けようとしてくれていることも分る。でもそれは嫌だよぉ!」
我が儘を言わないで、そう強く言えたら良いのでしょうけど、それもまた私には難しくて・・・でも、敵は待ってはくれないわ
「それでも・・・」
「いいね、私もそれに賛成させて貰おう。ママナに逃げて欲しいのはコーリンと同じでもね」
ハッとする。聞こえてきた声、それはもう聞けないはずの声で、そしてそう思っていたのに聞くことが出来る機会を以前にも与えられた声
「あ、あなた・・・?」
「お、お父さん・・・?」
すでに命を落としたはずの私の夫。以前、地獄での騒動で亡者たちが地上に出てきたときには私たちを助けに来てくれたけど・・・
「今回の騒動は地獄の騒動よりもより深刻なのさ。だから閻魔様も最大限の協力をしてくださっている・・・こうやって対レオンの力となるだろう者たちに地上への門を開放するほどに」
つまり、私たちの味方は生者だけではなく、戦う意思を持った死者たちもだと
「私では君たちを守るには足りない。けどね、君たちを守りに来た者は私だけではない」
そう言う夫の後ろにいるのは無数の悪魔たち。その中にはかつてアシュラ様が倒してきた者たちも何人かいて
「リュウトさんの人望に感謝という所ですね」
「彼だけではないだろう。コーリン、キミがアシュラ様のところでやって来たこともきっと影響している」
夫がどこまで知っているかは定かではありません。でも、それが真実ではないとしても
「嬉しいものですね」
「うん、皆で守ろう! この世界を!」
そう叫ぶママナに悪魔族の誇りを見た気がしたわ
いつだって仲間は駆けつける、それがこの物語です
コーリン「いつも夫には驚かされますね、弱いのに」
さ、最後のは黙っていてあげた方が・・・
コーリン「大事なことです、弱いのに強いから最高なのですよ」
おっと、これは惚気られてしまったのかも知れません。さてさて、これで再び揃ったコーリン一家ですが
コーリン「一時の再会ですが、悲劇には致しません。皆様も次回もまた応援に来ていただきたいですね」
え、えっと、それって締めの言葉? ああ~~! やっぱり幕が下りていく~~~!




