最終部2章「立ち塞がるものは」8話 「リュウトの強さ」
「まったく醜悪じゃのぅ」
目の前の存在、トワメルが作ったのだろう合成獣がさらに合成された異形の存在。そんなものから我が君の気配が色濃く感じられることが見た目などよりも遙かに醜悪な存在
「見た目で勝てるわけではありませんが、正義って感じではありませんね」
「まったくじゃのぅ。もっとも、我が君は自分が正義などとは言わんがの!」
ヤマトの言葉に確かにとは思うけれど我が君は自身を殺すことしか出来ない悪と位置づけているから絶対にいい顔はしないだろうと思いながら、まずは小手調べで殴ってみると
「ふむ、意外と弾力があるの」
「元が死体が多いからでしょうか」
確かに合成された者たちはすでに死した合成獣が多かった。元より痛覚があるのかは微妙だけれども死した部分は完全にそんな物はないでしょうね・・・半アンデッドである私が言うのもなんだけど
そして殴った腹は少しだけ破れたけれど、その傷はすぐに修復されていく。これも我が君の回復能力が元なのかと思うと業腹なところ
「ヤマト、今すぐお主らは下がっておれ」
「! ・・・そうですね、部下たちは下がらせます」
今までは数が多いそこそこ厄介な敵。今相手をしているのはそれよりは強敵だろう1体の敵。後方のエルファリアを守るためには数に対しては数が必要。けれど、単独の強敵が相手ならば私1人の方が戦いやすい・・・と言うことはヤマトも分ったようではあるけど
「お主も下がって良いと言っておるのじゃがのぅ」
「いいえ、ここは最後まで付き合わさせてください。足手まといになるようでしたら」
「見捨てるような真似はせぬぞ? 我を舐めるでないわ」
まったく、ヤマトだって妻がいて子がいる。そんな彼を見捨てるような真似をすれば後味が悪いどころではないわ。それに我が君だって怒りはしなくても悲しむでしょう
「足手まといなどにはせぬ・・・期待に添うぐらいのことは出来よう?」
「・・・はい!」
さて、良い返事を貰ったところで改めて敵を見る。あれだけの数が融合したにしては10m程度というのはあまりに小さい。我が君が巨大な敵と戦うのを見ている限り大きければ強いというわけではないが、純粋に体積的に考えれば圧縮されている・・・密度が高いが故に死した弾力のある肉の厚い壁が私の拳を防いだ、というところかしら?
「攻撃は我に任せておくがよい! ブラッディダブルクロー!」
貫く形とひっかく斬撃、どちらの方が有効か見極めるために両方同時に撃ってみる。当然ながら斬撃の方が傷事態は大きくつき
「なるほど、広範囲技の方が効果がありそうじゃのぅ」
傷が大きい斬撃の方が明らかに治りが遅い。おそらくは我が君もそうだけど、体のパーツでここが傷つけば影響が大きいなどという場所はないでしょう。手足でも切り落とせれば再生までの間は多少は違うでしょうけど
「ですが、こう言う攻撃ならば意味はありそうですよ」
敵が私を脅威と感じたのか、あるいは距離が近かったからなのか、私に殴りかかってきたのを軽く避けてみればヤマトはその足首を切り裂く。傷の大きさは先ほどの私よりかはずっと小さいけれど、ちょうど筋の部分を斬られた敵は体勢を大きく前に崩す。痛みはなくとも反応はそう変わらないのね
「なるほどのぅ。ならばお主は無理のない範囲で援護しておれ」
「ええ、大きな打撃はお任せします!」
考えるのも不愉快だが、元が我が君だからか再生能力は高い。今はまだ動きは緩慢だけど、そのうち慣れてくれば素早い動きをしてくるかも知れない。そもそもどこをどう攻撃すれば大きくダメージを与えることが出来、そして倒せるのかがまったくわからない。まさに我が君を敵に回した存在の気持ちがよく分るという物だ。けれど
「どれほど特性が我が君近くとも怖くはないのぉ」
「ええ、まったく足りませんね」
ニヤリとヤマトと笑い合う。この存在には我が君の一番怖いところがない。武器である存在の剣? ちがう、そうではないわ。そう、無限に成長していく特性を作っているのも強化しているのも存在の剣が大きいけど、我が君の強さの本質はそこではない
「味方ならば心強く!」
「敵ならば心から震撼させられる!」
「「あの心がなければ我が君 (師匠)じゃない(のじゃ)!!」」
そうリュウトは心の竜、心がなければリュウトにはなり得ません
カーミラ「能力のみに目が行っているトワメルにはたどり着けぬ答えじゃの」
そのとおりですね。トワメルの目的がなんなのかはまだ秘密ですが、彼にはリュウトの本質は見えていないし、ある意味必要ないとも言えます
カーミラ「ふむ、強い存在を作り出したいわけではないのか」
求めている強さが違うとも言えますね。とまぁ、今はこの辺りまででご勘弁を・・・と言うことで今回はこの辺でお開きです。次回もよろしくお願いいたしますね~




