7話 「役割」
剣を突きつけられたマモンはジリジリと後ろに後退するが、俺はそれを追うように剣を合わせる。
「くっ! ・・・わかった、今回は我は手を引こう。我の目的は地上の金銀・・・(我の)命と引き換えには出来ん。」
なるほどな。つまり7人の魔王にはそれぞれ欲しいものがあると見える。それが重ならないのか折り合ったのかで共闘しているわけだ。
「そ、それでは不服と言うのか!? な、ならばこれをやろう! 貴様らとて金は欲しかろう?」
僅かに考えていたのを拒否と受け取ったのか、マモンはどこからか大量の金を取り出してそういう。・・・強欲の魔王と呼ばれるだけのことはあるな。
「あ、アシュラ・・・貴様とて」
「・・・そんなものはいらん。あいにくそんな安い魂は持ち合わせていなくてな。」
アシュラが口を開くのもいやだと言わんばかりに言い捨てる。
「な、なら! そこの天使。これさえあれば・・・」
「ん~? 確かに綺麗だけどさ~、それだけでしょ?」
・・・レミーは誘惑を断ち切ったと言うより価値をわかっていないようだが、これは価値を教えるべきなんだろうか?
「え、エルフ! 貴様は王なのだろう? だったら金はいくらあっても・・・」
「我が国は金銭的な恵みや豊かさはないが、代わりに自然の恵みがある。・・・貴様からの腐った恵みを享受したいと思う者などおらん!」
アキにとっては民たちはもっとも大事なもの・・・だからこそ、その誇りを傷つけるようなマネは絶対に出来ないんだよな。
「勿論俺もそんなものはいらないぞ。それにな・・・」
俺は山と積まれた金を竜神剣で斬る。・・・すると、あっという間に金だったものは灰に変わった。
「俺はともかく、俺の相棒はこんな幻に騙されるやつじゃないんだ。」
「くぅ、もはやここまでか? いや! わかった、金輪際地上には手を出さんと誓う! ゆえにここは見逃してくれ!」
マモンは幻を見破られて焦ったのか魔王らしくもなくこう懇願する。とはいえ、これは・・・俺は額にかきはじめた汗を自覚する。お、俺は何を考えている!?
なるほど、確かに最弱と噂されるだけのことはある。そしておそらくそれは真実なのだろうが、同時に手ごわくもあるな。奴は敵の心情を詠む力には長けている・・・リュウトの最大の弱点はアレだ。
奴は相手の言が嘘とわかっていても命乞いをするものを斬ることは出来ん。だが、マモンは傷ついていても魔王。他のものと違い、後ろを向けば死あるのみ・・・さて、どうするつもりだ?
「くっ・・・ぅぅ・・・」
苦悶の表情を浮かべながらも奴は剣を収め後ろを向いた。やはり、そうか・・・。
「馬鹿め! 死・・・ぐふぅ!?」
馬鹿は貴様も同じだ。・・・オレがそれを見逃すと思うのか? 予想どうりに後ろを向いたリュウトを襲ったマモンに止めを刺しオレは思う。
「すまなかったな、アシュラ。嫌な役をやらせてしまった。」
振り向き様に攻撃するつもりだったのだろうが、おそらく間に合わなかっただろうリュウトがオレにそういう。
「そう思うならあんな姦計に引っかかるな。」
憮然とした口調でそう言いながらも嫌な気はしない。そうだな、アキはリュウトの心を守る。レミーとママナが傷ついた心を癒すなら・・・オレはこいつの甘さを補ってやろう。そう、こいつらは・・・オレの娯楽だからな。
「ああ、そうだな・・・アシュ・・・ラ・・・」
オレの方へ透き通った笑顔を見せながら倒れるリュウト。・・・怪我も確かに大きかったが、それ以上に自分を含めた4人の能力を増幅し続けたのだから当然と言える。勝負がつき、安心したとたんに倒れるのはリュウトらしいが。
「りゅ、リュウト? お、おい! しっかりしろ! れ、レミー! 早くリュウトの治療を!!」
「あ、うん! 今行く!」
やれやれ、今回もまた騒がしいことだ・・・。
リュウトが倒れたのは・・・久しぶりですね。1部の時は毎回のように倒れてましたが、2部では8章にして初!
アキ「ほう? 言いたいことはそれだけか? 最後に残す言葉としては短いな・・・。」
あ、アキさん? もしかして怒っていますか?
アキ「『もしかして』だと!? 『怒っているか』だと!? ・・・フフフ、存分に体で教えてやろう。」
あわわわ、た~す~け~て~!!
レミー「あ! 今日もやってるね! 本当に仲がいいんだから♪ えっと今回の次回紹介はわたしだよね? 『魔王の1人を倒したわたしたちの前に名声を狙う悪魔の群れが!? ム~! わたしたちはそんなに簡単にやられないよ! 次章は竜神伝説第2部9章 「魔界の掟」あ~!? リューくん、浮気は駄目だよ~?』」
リュウト「あれは浮気なんかじゃな~い!!!!」




