最終部2章「立ち塞がるものは」4話 「エルフたちの矜恃」
「・・・師匠、女王様、私たちは・・・僕たちは守られるだけの弱者ではありません!」
僕はその言葉を遠くエルファリア宮殿へと叫ぶ。それが本来ならば届くはずがないと知り、そして必ず伝わると確信して
「隊長、ご指示を!」
そう僕に聞くエルファリアの防衛隊の皆の目はけして諦めの色なんて見せていない。戦いなんてない方が良いのは間違いないけど、それでも起こってしまった以上はこの日のために日頃から鍛えてきた力で自分たちの大切なものを守るんだと、何よりも強く語っている
「剣士部隊は最前線で壁になりながら切り崩す! 弓兵と魔法兵は我らの援護を頼む! 救護兵は今は後方の安全地帯にいてくれ」
何の変哲もない普通の戦法。けれど、襲い来る無数の怪物たちには普通こそ効果がある。そして、誰もが分っている行動であろうとも、隊を預かる僕がその責任を持って指示したことで連帯が生まれる
「隊長、エルフの力を見せてやりましょう! 我らだって竜神様と共に戦うものなのだと!」
そうニヤリと笑うのは剣士部隊の隊長。僕が全部隊の隊長になった後にそこに就任した以前の副隊長だ。彼だって目の前の敵たちの正体も実力も分らない。けれど、どれだけ強かったとしても戦うと決めている。エルフはいかなる時でも竜神様の最大の協力者、けして竜神様に守って貰うだけの被保護者ではない! その気持ちのまま僕らは剣の一閃で数体の怪物たちを切り捨てて・・・
「再生した? くっ、ひるむな!」
けれど、その気持ちだけで勝てるものでないことは知っている。そして、敵の能力が未知数である以上はこうやって追い込まれることもあるだろう。それでも負けを容認できるはずもない
「敵が回復をしようとも私たちにも仲間がいる! 負傷したものは速やかに下がって治療を受けろ! 剣兵はそのまま壁になりつつ攻撃! 弓兵と魔法兵は牽制をしつつ救護兵が中間地帯まで来る援護をしてくれ!」
仲間はけして見捨てない。それもまた僕が、僕らが師匠から習ったこと。そして、傷を負い下がっていった仲間たちもその目はけして死んでいない。そんなことを許す気は無いけれど、例え死んでも後ろにある大切なものを守るのだと、そう叫んでいる
「我らの勝利は打ち倒すことではない! 我らが後ろに誰も通さなければ良い! そして竜神様がたを先へと送り出せればそれでいいのだ!」
後は師匠たちが全ての決着を付けてくれるまで千日手でもいいじゃないか。僕らにとっては最初でおそらく最後の戦い、今までの全てを出し切るのならばそのぐらいでちょうど良い
「師匠ほどではないが・・・模擬竜神流、風狼爪!」
竜の牙には遠く及ばずとも僕も師匠と同じ風の力・・・風の刃を飛ばすことぐらいは出来る。少し技のアイデアを出して貰ったアイさんは名前を聞いて
『オルトが怒りそうだね』
なんて苦笑していたのも良い思い出・・・けれど、その思い出で終わりにする気は無い。風の刃は確かに数体の怪物を完全に切り裂いて、それでも動いているけど再生にはだいぶ時間がかかるはず。本当は完全にとどめを刺して相手の手数を減らせるのが一番良いのだろうけど
「ふむ、なかなか頑張っておるようじゃの」
そんなときに聞こえた声。涙が出るほどに嬉しい声だけど、泣いてはいけない。喜ぶことは良いが頼るのは論外だ。彼女は僕らを助けに来てくれたヒーローではない。あくまでも一緒に戦う仲間なんだ、そう言う気持ちで戦わないといけない
「助かりました、カーミラさん」
そして、そんな思いできっちりと僕らにはさせなかったとどめを刺してくれたカーミラさんに声をかければ、彼女も驚いたような目をこちらに向けて、そして笑った
「うぬ、そのいきやさらに良しじゃな。よいか、いかに我でも全てはまかなえん。動きを封じ、打ち倒せ。ならば我らがとどめを刺そう」
カーミラさん1人で僕らの数十人、ひょっとしたら数百人でも足りない戦力かも知れない。それでもなお僕らは言う。僕らは助けられるものじゃない。共に戦う仲間なのだと!
「ええ、僕らではとどめを刺すには少し攻撃力が足りないようです。最後はお願い致します」
「頼りにしておるぞ」
カーミラさんだって分っている。僕らの力が彼女が頼りにするには足りないことを・・・それでも、彼女が数あわせではなく仲間としてみてくれているのならば全力を注ぐ。ただ、それだけのこと!
ただそこにいるだけの存在ではない、それも1つの戦いです
ママナ「うん、そうだよね。私もよく分るよぉ」
実際にはママナの方がヤマトたちよりもずっと強いんですけどね
ママナ「ふえっ?」
・・・この感じだと分っていないようですが、ママナは基準がリュウトたちになってしまうので弱いって感じに見えるだけで実際にはとんでもなく強い方です
ママナ「・・・でも、活躍できなかったら意味がないんだよぉ」
この部は皆頑張れな部でもありますのでそのうちきっと活躍の場面もあるでしょう。なんかママナの視線が厳しくなってきたので被害が出ないうちにお別れとさせていただきます。では、次回もよろしくお願いいたします~




