最終部2章「立ち塞がるものは」3話 「盾と矛」
私の言葉に全員の視線が集まる。それはそうでしょうね・・・私だって他の誰かが言ったならば同じ行動を取るでしょう
「何を呆けておる? ここで時間を無駄にするほどに不利になるのは分っておろう? 敵の数に限りがあるなどと安易に思えるほど常識的な相手では無いと思うがの」
そう、どんな敵がどれほど来るかまったく分らない。レオンの分体だけでなく、他にどんな存在を用意しているかなど未知数。だからと言って、敵の種類がわかっているここに逃げておこうなんて言う意味ではないわ
「カーミラ、あなたは・・・」
「ここには関係が無いはずなどと言うでないぞ? 我とてもうずいぶんとここで暮らしておる。確かに我が生の長さから見れば短き時かも知れぬが愛着を持つには十分じゃ・・・それに生物かつ数が多い相手には我は強いのでなぁ」
ニヤリと笑うバンパイアの笑み、そんなもので怖がってくれるものは・・・アキがいるけど・・・ともかく私の意見はメイにも認められたみたいね。私の吸血は生物に有効だし、私には多くの眷属たちがいるから多くの敵からエルファリアを守るには向いている。ここから先は我が君を守って押し通れば良いのだから敵の数が多くても迎撃に数を残す必要性は薄くなるわ
「なに、我が守り切れるか心配ならばさっさと我が君を送り届けてくれれば良い。我が君がレオンさえ倒せば全ては終わるのじゃからのぅ」
「な、何言っているのよ! あんた、あれだけの数を相手に生き残れるわけ? 兄さんのために犠牲になるとか言うのならば怒るわよ。兄さんが、ワタシたちが全員で生き残ることを目的にしていることを忘れちゃいないでしょうね」
普段は仲間何てという顔をしているリデアが真っ先に言うなんて。でも他の皆の顔も同じよう・・・それが嬉しいと思う程度には仲間をやって来た。そして
「無論じゃ。そちこそ忘れてはおらんじゃろうな? 我たちバンパイアは元々半アンデッド、スタミナと死ににくさではなかなかなものじゃぞ?」
スタミナではアシュラ、死ににくさでは我が君という化け物もいるけど、どっちもまだ切るわけにはいかないカードだわ。特に我が君・・・心残りはこれからさらなる激戦に向かうだろう我が君を最後まで見送ることが出来ないことぐらい
「カーミラ・・・」
「我が君・・・」
そしてそんな私の気持ちを分ってか分っていなくか・・・いえ、確実に分っていないわね。我が君の鈍さは筋金入りだもの、とにかく私の前に立って私の名前を呼ぶ。なんか最後の別れみたいで縁起が悪いわ
「エルファリアのことは任せた。けど、自分の身を一番大切にして欲しい」
「・・・その言葉だけで我には十分じゃ」
エルファリアは我が君にとっては最も長き時を過ごした場所。思い出も大切な人も物も数多くここにある場所。そんな場所、人さえも含めた全てよりも一番大切にしろと言ったのが私・・・それが嬉しくないはずがない。危なくなったら逃げろなんて言えないことぐらいは分っているから
「カーミラ、エルファリアをお願いね」
「うむ、任せておくがいい。じゃが、おぬしも我が君のことを頼むのじゃ」
アキが我が君とエルファリア、どっちをより大切に思っているかなど聞かない。順位を付けるようなものではないでしょうし、仮に付けていたとしても公言する物でもないのはバンパイアの姫などという身分を持っている私とて分るわ
「話が決まったならば我は行かせて貰うぞ? 流石に我が君の愛弟子とはいえヤマトたちだけでは身が重かろう・・・我らが開けた穴に飛び込んでいくのじゃ」
私はエルファリアを守る盾であると同時に、我が君たちが先へと進む穴を開ける矛でもある。先陣を切る誇りと共に皆の視線を受けて私は走る・・・まずは此度の共闘者であるヤマトの元へと
今回は少し短めですが、切りが良いのでここまでとさせてください
ヤマト「え、えっと、これからカーミラさんが助けに来てくれるんですよね?」
ええ、流石にエルファリアの防衛部隊だけでは無理がありますからね
ヤマト「ウグッ、それはそれで悔しい話ですが」
そりゃ、そこだけで守るきれるならばレオンが仕掛けるゲームの始まりとして成り立たないでしょう
ヤマト「それはそうなんですが・・・と、とにかく防衛隊の被害もありますから手助けは欲しいです!」
ということで次回はそんな防衛隊の面々のお話です。守り1つとっても簡単にはいかない戦いですよ~




