最終部1章「嵐の前の」5話 「戦いの前に」
「これは?」
ルーンが俺に渡してきた物、それは見た目だけで言うのならば直径で3cmほどの緑の宝玉だ。だが、それがただの綺麗な宝石と言うだけであるはずがない
「ふふ、それは内緒よ」
「ルーン、あんたこの期に及んで・・・」
そんなルーンの返答にリデアは顔をしかめながらそう言うが、いかにルーンでも冗談や悪戯でそんなことを言ったりはしないだろう。まさにリデアが言うようにこの期に及んで、と言う奴だ
「リュウト殿、わかっていますね?」
「ああ、これは俺が自分で効果が分らないと駄目な部類な奴だって事だろう?」
効果の強い魔道具というのは制約があるものが多い。声を遠くに届けるとか映像を残す程度の物はほんの少しの魔力で十分に動くが、強力な物は1度しか使えないなんて言うのは当然の部類で寿命を半減させるやら誰かを生け贄に要求するとか・・・効果を自力で把握しろ程度はまだ良心的な制約だと言えるだろう
「どの道、この効果が分らないようならばこの戦いに勝ち目は無いものよ」
つまり勝機があるならば自然と分るはずの物だと言うことか。まぁ、そこら辺のルーンの言葉でこれが何であるのかは読めた気もするんだが、ルーンなりにギリギリのヒントを出してきたと事なのかも知れない
「さてと、これぐらいで状況の整理は終わりか。あとやるべき事は・・・」
「英気を養うために宴会だね!」
そんなことを言うアイには全員がちょっとした睨みを入れたが、まぁ生きてまたここに帰ってこようという思いを強くすると言う意味では悪い手でもない。それにアイはエネルギー補給は必要だしな
「そうだな、しっかり美味いものを食べていくのも悪くはないだろう。あっ酒は・・・ほどほどにな」
明日は戦いだから酒は止めろと言おうとしたが、酒がないと悲しむだろうメンツと少々飲んでも大丈夫なのはいることを思い出して言い換える。まぁ、明日に支障がでるほど飲むやつはいないという程度には信頼しているさ
「ルーンたちも食べていくんだろ?」
「そうねぇ、いただいていこうかしら? どうせ、明日にはここに集まるわけだしねぇ」
ペロリと唇を舐めたルーンはどことなく色気があるというか、後ろではリリカがそんな場合じゃないって不貞腐れていたがリリィが今更慌てても仕方が無いさね、なんて説得していたな。おそらく彼女もリリカにそう言う普通を味わって欲しかったというのもあるのだろう
「ルーン、食べていくのは良いけど泊まらせないからね? 少なくてもあなたは!」
えっ? って感じでルーンの動きが止まる。まぁ、サキュバスだもんな・・・アキとしては断じて泊められないだろう。って他の皆もか? 結構、自分が襲われる心配を・・・
「そなたがいたらリュウトの貞操が危ないのじゃ!」
「いやねぇ、童貞だったらそこの子猫ちゃんがもう・・・」
「そう言う問題じゃないのよ! あんたが兄さんを襲うのが問題なの!」
・・・なんで俺が襲われるって言う前提なんだ? そこは自分たちじゃないのか? しばらくまるでガルルとうなり声が聞こえそうな感じでにらみ合っていた両陣だったが、ルーンが折れたみたいで宴会が終わったら一度帰ると・・・リリカとリリィは泊まって帰ると言うことでルーンがちょっと睨んでいたがな
「なによぉ、ちょっとぐらい味見させて貰っても減らないのに・・・氷竜姫もケチねぇ」
「ワタシのことをそんな風に呼ぶのはあんただけよ・・・っていうかなんでワタシだけなのよ!」
誰のことだかわかるからそれなりにネーミングセンスはあるんだろうが・・・まさか全員にそういう称号?を付けているのだろうか・・・なんて思っていうたらそのまさかだった
「まぁ、ルーンの数少ない趣味さね。我慢してやって欲しいさ」
なんてリリィが言うぐらいだ、きっと彼女たちも何かしら付けられているんだろうなぁ
「ねーねー、わたしは?」
「ふっ天使ちゃんは天災神魔ね」
「えへへ、わたし、天才?」
・・・うん、なんか字が違っていた気がするが余計なことは言わないでおこう。ま、こう言う交流も悪くはないはずだ。なにせ、1度切であっても力を合わせて戦う激戦は明日に迫っているのだから
と言うことでこれにて決戦前日は終了です。これから先は戦いに次ぐ戦いが
ルーン「だからといってシリアスばかりではない。そうじゃないかしらん?」
ま、まぁ、そうかもですね。何せ戦う連中が連中ですから。けれど、楽な戦いは少なくてもないですよ
ルーン「当然よ、これで楽に勝たれたら私たちの威厳って物がなくなってしまうじゃない」
そんな物はあっただろうか? とにかく今回でこの章はおしまい! ってことで
ルーン「次回予告ね、これやってみたかったのよぉ『ついに始まったレオンとの最終ゲーム、場に集まった戦士たちの最後の戦いの時! しかし目の前に現れたのレオンではなく? 竜神伝説最終部2章「立ち塞がるものは」敵も味方も今ここに・・・』夢魔神の流儀も見せてあげるわよ~」




