最終部1章「嵐の前の」3話 「見捨てるはずもなく」
「あんたたち、いつから漫才トリオになったのよ」
目的はレオンと戦うのに協力する、あるいはこの時だけは仲間として振る舞うと言うことなのだろうが、ともかくそう言う立場になると見えてくるこの三人の変わった部分とでも言うのか? そういう所にそんな突っ込みをしたのはレーチェルなわけなんだが
「レーチェル殿と会わせてカルテッド結成ですね」
とメイにそう言われてレーチェルもぎょっとした表情を見せる。まぁ、最近はレーチェルは俺たちの仲間って立ち位置が強いけど、ちょっと前まではどっちかというとルーンたちのグループに近かったしな
「あなたたちのおかげで私の評価まで危ぶまれているのだけど? そういうのはそこの淫魔の役目でしょう」
「何を言うさね、光の女神様はその淫魔と並ぶ立ち位置であっているさね」
「あんたたち、かってに私を変な立ち位置に固定するんじゃないわよ。そ・れ・に! 何度も言うけど私は夢魔!」
・・・なんというかルーンやリリィは結構面白い奴だったんだな。この二人に関しては長年一緒にいる気安さというのもあるのだろうが・・・それに復讐に捕らわれているリリカの心を救う意味もあるのかも知れない
「4人ともいつまでやっているのですか? 話が進まないのですが?」
そして絶対零度のメイの視線と言葉にビシッとする4人。リリカはこれに関してはとばっちりな気もするが、このメンバーが集まっても最恐はメイなのか
「リュウト殿? 何か言いたいことがおありですか?」
「いや、なんでもない」
ともかく話の流れはこれで元に戻りそうだと思ったときに窓から飛び込んできた紙・・・うん、これは前にも似たようなことあったな。レオンも話の流れが元に戻りそうになるのを待っていたわけか。意外と律儀というかこう言う空気は読む奴なんだな
「リュウト、それって」
「ああ、今回のルール説明・・・なんだろうな」
中身はまだ読んでいないが、こんな形で手紙を送ってくる奴はレオンの他にいないし、奴が送ってくるならばそれ以外の内容はないだろう。あいつにとってはゲームだからか、妙にルールにこだわるところがあるからな
「・・・ん? と言っても今回は開始時間と開始場所しか書いていないな」
まぁ、ルールの説明をしようとかその前段階の口上はそれなりに書いてあるが、実際の内容としてはそんな物だ。確かに今回の勝負、俺たちの勝利条件はレオンを見つけ倒すこと。敗北条件は全滅なんだから、言われるまでもなくわかりやすいと言えばその通りだが。けれど開始場所? その時間にその場所にいろって事か?
「竜の坊や、その開始時間は何時かしら?」
「明日の正午・・・だな」
「そう、そして開始場所はここなのでしょう?」
ルーンの言葉に頷く。そう聞くと言うことはルーンにはレオンの意図が読めているのだろう。うちのメンバーではメイやレーチェルも読めているかも知れないが、レオンと一番付き合いも因縁も長いのはルーンだ。彼女に聞くのが一番正しいのだろう
「難しい話じゃないわ。レオンは何時だって最終ゲームはメインとなる人物が最も大切にしている場所を襲う・・・今回のメインはあなたよ、竜の坊や」
その言葉に拳をギュッと握りしめる。つまり俺がいるからエルファリアは襲われる・・・そういうことか
「リュウト、気にする必要は無いよ。言ったでしょう? 私たちエルフは竜神に感謝をしているって・・・ここが襲われるのならば構わない。私たち、ここに住むエルフ全員があなたと共に戦うよ」
そう答えてくれるのはアキ。同じようにメイも僅かな同様さえも見せずに頷いてくれる・・・ああ、俺は本当に恵まれているな
「その様子だとここを放棄して戦うって言う選択肢はないみたいね」
そんな言葉を発するルーンに全員が当然だとばかりに頷く。ああ、アシュラはそう言う反応は見せていないが、腕を組んだままなんの言葉も発しない時点であいつらしい肯定だ
「ああ、俺たちはここを守りながらレオンも倒しに行く」
「ふふ、ただでさえ低い勝率をさらに下げるように縛っていく・・・いいわ、そういうのは嫌いじゃないわよ」
リリカは気に入らないようだがルーンはこう言う方が好きらしい。これまた意外な話だな・・・リリィの方はルーンをちょっと呆れている感じだが
「それじゃあ次よ、当然レオン本体がいるところに攻め込まないと勝てない。だったらどこにいるのか・・・その説明はあなたがした方が良いわよね、光の女神様」
そんなルーンの言葉に全員の視線が集まることになった
勝率が低くなるから見捨てる、そんな選択が出来るのならばこの物語はここまで続いてはいないでしょう
レーチェル「リュウト君の強さは心の強さ。ただ勝つことだけを考えて犠牲を容認するのならば他で負けているでしょうね」
誰一人見捨てない。勿論、全員を助けることが不可能であることを知りながら、それでも最大限助けようと努力する・・・助けられなかった命に罪を感じる、それがリュウトですね
レーチェル「甘いわね、本当に」
そう言うレーチェルは基本的にリュウトの同類である、と言うことを忘れちゃ駄目な奴ですね
レーチェル「・・・いいわ、そこまで言うのならば私の怖さをもう一度味合わせてあげる」
え、えっと、なんでそんな話に!? と、とにかく少しだけ見えてきた最終部の話、次回以降もよろしくお願いいたしますね~~




