6話 「仲間」
この重力下ではレミーとアキは動けない。かといって俺やアシュラでも速度の落ちた今ではマモンの隙はつけない。普通に考えれば万事休すだな。
そう、普通に考えれば・・・なら普通じゃない方法をとれば良い。作戦は誰にも言えない。相談などできる状態ではないからな。そして、この場にいる仲間全員が俺の作戦を理解できなければ・・・タイミングどうりできなければ・・・いや、後は信じるだけだ!
「マモン! 勝負だ!!」
マモンへと真正面から突っ込む俺。風と光、そして内部エネルギーの放出と最大出力で動いているのに普段の1/10程度の速度だろうか。
「りゅ、リュウト? 何を!? だ、駄目! そんなことしたら・・・そんなことしたらリュウト・・・死んじゃうよ? いや、あなたに死なれたら私は・・・!?」
アキ・・・本当にいつも俺はキミを泣かせてばかりで・・・でもな、俺はもっとキミの笑顔が見たいんだ。こんな悲しい顔じゃない、本来のキミのまぶしい笑顔が見たいから。皆を信用するよ。
ほんの一瞬アキを、レミーを、アシュラを見る。それだけでいい。皆ならわかってくれるだろ?
「まったく・・・貴様は本当に馬鹿だ。」
「でも、わたしにもわかるよ。リューくんの考えていること・・・。」
「そなたは・・・あなたはいつも自分ばかり傷つく道を選んで・・・いいわ、あなたが自分が傷つく道を選ぶなら、私が絶対あなたを守りきってみせる!」
馬鹿正直に真正面から突っ込んだ俺の攻撃は当然防がれる。・・・一体、その剣はどこに隠し持っていたのやら。そして、そのまま俺は上空に吹き飛ばされた。今の状態では風で飛行することもできない、まさに格好の餌食だな。
「そうは・・・させん!」
だが、それをアシュラが自ら突っ込んでいくことで中断させる。ルーンの時に見せたあの本気ならもう少し楽なんだろうが使わないところを見ると使えない理由があるのだろうか? だが、今のアシュラでも僅かにマモンの注意を引くことは出来るはず! そして
「真紅なる業火よ。我が命の火を糧に偽りの生命となれ! ファイヤーバード!」
アキのファイヤーバードが使われる。狙いはマモン・・・ではなく俺だ。
「竜神流・・・火炎竜尾斬!」
だが、それだけでは足りない。そこにさらに風の力を加える。風に煽られた火はさらに大きくなり・・・名づけるなら火炎風竜斬・・・かな。
「我がそのような攻撃を喰らうと思うてか!」
重力が大きくなろうと落下する分には問題ない。とはいえ、奴の不意をつくほどの速度が出るわけでもない。さすがのアシュラでもそこまで注意を引きつけられるわけでもな。当然のごとく放たれた土の弾丸が俺の体を貫く。・・・でもな!
「何!?」
「えっへへ~ん! レミーちゃんの幻はそう簡単には見破れないよ。」
冷静な状態ならともかくこれだけの状況が整えばレミーの幻はマモンとはいえ十分に効果がある。その隙に!
「我を・・・舐めるな~~~!!」
「くっ!?」
万全の状態で打ったはずの俺の一撃はあっさりとマモンの剣にはじかれる。カランカランと音を立てながらリュムが床を転がっていき、俺も衝撃でアバラにひびが入ったみたいだな。
「貴様らの下らん策略もここまでだな。」
この作戦は仲間全員が意図を理解し、タイミングどうりに出来なければ成功しない。・・・だが、それが出来れば必ず成功すると信じている。後は頼むぞ!
「なっ? ば、馬鹿な!?」
マモンは唖然と自分の胸を貫いた竜神剣を見ている。
「まさか我にまでこんな協力をさせるとはな。」
「アキの火の力と俺の風の力・・・アレだけ注ぎ込んでおけば俺の手を離れても変形をするぐらいのことは出来るだろう?」
そう、最後に動くことになる俺の仲間は・・・リュムだ。マモンは俺の手を離れた時点でリュムに対して注意を払わなかった。そこにリュムが変形を利用して真っ直ぐにマモンの胸を貫く。全てはこれのための仕込みに過ぎない。
「これで形勢は逆転だな。リュム、来てくれ。」
俺の呼びかけに答え俺の手の中に納まるリュム。マモンの傷はほぼ致命傷・・・もはや重力を操れるほどの余力はない。そのマモンに俺は竜神剣を突きつけるのだった。
普段の力任せな戦いとは違う策士リュウトの戦い方はどうだったでしょうか。
アキ「私には・・・あんな戦い方は思いつかないな。」
本来はアキの方が得意な戦い方なんですけどね。思いつかないというよりは出来ないでしょうか・・・リュウトが傷つくことが前提の戦法なんて。
アキ「う、うるさいぞ!」
はは、さてさて・・・戦いはこれで終わったも同然ですが、次回はこの章でのオチの部分ですね。
アキ「オチというな。それではお笑いに聞こえるだろうが。」
う~ん、お笑いにならない保証はないですし
アキ「勘弁してくれ。」




