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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
10部11章~ラストまで
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13部6章「最後のデート」25話 「理想を押しつけ」

 リデアと共にやって来た故郷。俺にとっては2度目となるこの場所は記憶なんてほとんど無くて、わずかに残った残滓さえも思い込みと区別は付かない


「ここは?」


 すでに村を形成していた跡などどこにも見られない草原に唯一ある目印と言えば、俺とリデアが以前に訪れた初代を奉ったあの神殿がある洞窟ぐらいなもの。そして、その洞窟をまさに目印にするようにリデアがやって来た不自然に思える石が積み上がった場所


「不思議なものね。とっくに崩れてしまっていると思ったのに」


 そうつぶやくリデアの表情と声はこれが残っていたことを喜んでいるのか悲しんでいるのかも分らない。妹の思い一つわからないって言うのは兄失格かな?


「ここはワタシたちの両親の・・・あの時に黒騎士に殺された人たちのお墓よ」


 黒騎士、つまりはコクトなわけなんだが、あえてそう言うのはリデアにとってもあの時の黒騎士と今のコクトを分けて考えているからなのだろう。そして、何人になるのか分らないがその時のかなりの人数であろう人々を埋葬したのはリデアに他ならなくて


「リデアの思いが詰まっているからかもな」


「よしてよ、あの頃のワタシなんて何の力も持っていなかったわ。だからきっと偶然。そうよ、そうに決まっているわ」


 もしも、もしもそれが偶然でなかったのならば考えられる対象は2人。レーチェル、もしくは初代であるマルト・・・この2人のどっちかが力を貸していたのならば不可能ではない。特にレーチェルはこの状況を知っていたはずだし、こういうことには力を貸しそうな奴だからな・・・ま、本人は絶対に認めないだろうし、リデアもあえて外しているのだろう。レーチェルに借りを作るのを嫌いそうだしな


「リターナの記憶、少しとはいえ思い出したワタシにこんなことを思う資格があるのか分らないけど・・・それでもね、兄さんとのことを知らせておきたかったのよ」


 遙かな時間が流れ、遺体なんてとっくに無くなっているとかそんなことは関係が無い。目をつぶって手を合わせるリデアに習って俺も手を合わせるべきなのだろうが、その前にするべきことがある


「リデアがリターナの生まれ変わりだろうとそんなことは関係が無いんじゃないかな? リデアがここで生まれた俺の妹で父さんや母さんの娘であるという事実には何も変わらない」


 俺は父さんも母さんも全く記憶に残っていない。なんとなくおぼろげに剣を習ったような、そんな気がするだけだ。それでも、俺たちの両親ならば誰の生まれ変わりで前世以前の記憶があるとか関係ないって・・・そう言ってくれるんじゃないかと思う


「父さんたちの事なんて何にも覚えていないくせに」


「何にも覚えていないからこそ勝手な理想言っても問題ないだろう?」


 本当はどうだったかなんて関係が無い。何せ覚えていないんだからな! 最大限の理想を押しつけておいて悶えさせてやろう


「本当にバカなんだから」


「ははっ、愛想を尽かされたか?」


「・・・それこそバカよ。そんなに兄さんだからワタシ・・・」


 手を合わせていたリデアがこっちを振り返る。幾分、その目は潤んでいるようにも見えて


「好き・・・なのよ」


 聞こえた声に耳を疑う。いや、リデアの気持ちがそうであることはもう疑ってはいない。けど、リデアがこんなに素直にそう言う気持ちを言うって言うのは・・・


「熱でもあるのか?」


 つい心配してリデアと額をくっつける。竜族が病気などよっぽどのことが無い限りひかないことは分っているんだが、そんなことは完全にすっ飛んでいた


「な、なんでそうなるのよ~~~!! そういう所は大嫌いだわ!」


 とまぁ、後々全員にため息をつかれることになり、美鬼にすら『俺でもそれはいわねぇ』と言われることになった通りにリデアに思いっきり殴られ・・・しかしリデアが真っ赤になっていたのは怒りか羞恥か


「ほ、ほら! 兄さんも手だけは合わせておきなさい! さっさと帰るわよ!」


 すっかりとリデアの機嫌は損ねてしまったようだ。けどまぁ、自分がやったことを思うと仕方が無いのかと思いつつも、これで本当に帰るって言うのもなぁ


「なぁ、リデア?」


「なによ・・・!?」


 俺に呼びかけられて振り返ったリデアが声もなく目を見開く。これもまぁ当然と言えるだろう。なにせ


「父さんたちに見せておくならばこのぐらいの方が良いかなってな」


 俺とリデアの口はぴったりと合わさっていて・・・


「バカァ・・・」


 そうつぶやいたさっきよりも真っ赤な顔のリデアの声は何時もよりも甘い・・・そんな気がした

と言うことで今回はリデア編リュウト視点でした


リデア「ほ、本当にバカなんだから」


その真っ赤な顔で言っても説得力は・・・ってまだ凍らせるのはご勘弁を!?


リデア「・・・まだって事は後でしてもいいのね?」


あ、あれ? なんか自分の死刑宣告をしてしまった? と、ともかくこれでリデアも少しだけ素直になったら・・・いいなぁ


リデア「やっぱり喧嘩売っているのね! ワタシはずっと素直よ~~~! ツンデレなんかじゃないんだから!!」


だから待っててと!? 犬だってもう少しは・・・



リデア「ふう、だから待ってあげたでしょう? 3行も! さて、作者はまた話せなくなったから今日はここまでよ。次回はワタシが誰にバトンを渡すのかって事だけ注視していれば良いわ。じゃあね」

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