13部6章「最後のデート」24話 「記憶のその場所」
今日は待ちに待った兄さんとのデートの日。その場所として指定する所なんて1つしか思いつかずに・・・他の同じような境遇の子たちは同じようなことをやっているのだろうから兄さんにはバレバレなんだろうけど
「兄さん、お待たせ」
「おわっ!? いつの間に来たんだ、リデア」
レーチェルから昔貰ったストーカー3点セットは今の兄さんにも十分に有効な道具だったみたいで、こんな何もない草原で兄さんを驚かせることが出来たわ
「ふふん、兄さんがワタシを見つけるなんて1万年早いわ」
「1万かぁ、そりゃ頑張らないとな」
問題は強がりで言ったそんな年数もワタシたちは普通に生きていられる年数って事で
「リデアを逆に驚かせられるようになるためにも死んじゃいられないな」
「・・・当たり前よ。もう2度とワタシの前からいなくなるなんて許さないわ」
もうずっと昔のこと、それなのに頭にこびりついてけして消えない過去。兄さんを捜し求めて旅をしたあの時の苦しみを忘れたこと何てないわ。この場所、ワタシと兄さんの故郷の場所はすっかり忘れてしまった言うのに
「・・・リデア」
「何よ・・・」
ワタシと兄さんの間に流れる微妙な空気。ワタシたちが離ればなれになった原因はコクトのせいでもあって、レーチェルのせいでもある。でも今から思えば
「ふん、責任は全部レーチェルだから前のことは許してあげるわ。だから・・・」
「ああ、絶対に勝たないとな」
全部、ワタシたちの不幸も他の多くの不幸も今この時にレオンと戦える戦力を集めるためにレーチェルが仕組んだこと。あの性悪女神の思うがままに動いていたというのは癪に障る話だけど、未来を掴むためには避けては通れなかったというのも分ってしまうのよね
トンって兄さんの肩に頭を預けながらそんなことを思う。きっとレーチェルはそんなことをやっていた自分自身を許せないのでしょう。だからね
「でもレーチェルは許さないわ。ぜ~ったいに生涯恨み続けてあげるんだから!」
そんなワタシの発言に兄さんは困ったような顔をするけれど、兄さんは分っていないわ。自分が許せない罪を他の人間が勝手に許してしまうことの怖さを。罰して欲しいってそう思っているのに、罰を与えるべき人間がいなくなってしまうつらさを、なんでも許してしまう兄さんはけして知ることはないのでしょう。だから、ワタシがいつまでも恨み続けてあなたに罰を与える存在になり続けてあげるわよ
「で・も! 今はそんなことよりもワタシとのデートよ! べ、別に兄さんのことを好きってわけじゃないわよ」
こ、恋人の1人になっておきながら今更何を言うのかとワタシ自身思うけど、素直に好きとは言えないワタシの臆病さ。でも、兄さんも悪いのよ? こんなワタシをそんな笑顔で包み込んでしまうのだから
「もう! そんな笑顔でごまかされないんだから!」
誰が何をごまかそうとしているのか・・・それを正確に言ったらごまかそうとしているのはワタシだと、きっと他の皆は言うのだろうけど
「わ、悪い。そうだな、デートをするときにこう言う話は無しだな」
どうにもワタシが嫌だと思っているところも、ワタシがごまかそうとしているところもわかっていなさそうな兄さん。鈍いのもいい加減にしないと刺されるわよって思うけど、刺されて死んじゃうような兄さんじゃないものね。勿論、ワタシたちの中にはそんなことをする人はいないし、他の連中がそんなことをしようものならば、本物以上の地獄を見せてあげるけど・・・危険がないとかそんなことは関係ないのよ
「そうよ! 暗い顔も無し! しっかりと楽しまないとデートじゃないわ」
今は何も無いこの場所。あまりにも時間がたちすぎたこの場所は本当にただの草原で、そして記憶の無い兄さんは元よりワタシもどこに何があったのかなんて憶えていない。憶えていてもなんの目印の無いこの場所では判断なんて出来なかったでしょうけど・・・なんて思っていたんだけど
「兄さん、1つ・・・行ってみたいところがあるのよ」
1つだけ、1つだけ憶えている場所がある。ワタシたちの家でも、よく遊んだ広場でもない。兄さんの記憶があったとしても知るはずもないその場所
「ああ、わかった」
なんの疑問もなく、ワタシの言葉に頷いてくれた兄さんと一緒に初めての・・・お墓参り
というわけで今回はリデア編です。ツンデレが染みついていますねぇ
アイ「リデアがリュウト大好きなんて皆知っているのに」
唯一わかっていないのがいるとしたらリュウトだけなんですよねぇ
アイ「・・・そこに知られていないのは致命傷な気がする」
ま、まぁ、リュウトも嫌われているとは思っていないでしょう。どの程度好かれているのかは・・・多分知らない
アイ「リデアもかわいそうだよね。そこを言えないのが一番悪いんだけど」
とまぁ、リデアの悪癖もありますが、どうやら次回はリュウトにとっても大事な場所に行くようです。ということでどうか次回もよろしくお願い致しますね~




