13部6章「最後のデート」22話 「闇の時間」
「・・・寝たみたいね」
その寝顔を見ることは叶わないけれど、彼女が寝たのを確認してわたしは漆黒の羽を開く・・・天使ってこんなに睡眠が必要な生き物だったかしら?
ともかく、表の人格であるレミーが寝ているときがわたしが一番自由に出来る時間。昔はこんな風に外に出てくる事なんてできなかったことを考えれば十分に自由を謳歌しているって言えるのでしょうね
「アシュラは・・・寝ているのかしら?」
そんなわたしがやってくる場所なんてここぐらいしかなくて・・・リュウトだったら殺気を感じない限りは起きないみたいだけど、アシュラはどうなのかしら?
「貴様は何をやっている」
どうやらアシュラは殺気が無くても近寄ってくる存在がいると起きるみたいね。敏感と言えば聞こえは良いんだけど・・・
「精気を貰いにね」
「貴様はいつからサキュバスになった」
サキュバス、あのルーンと同じ扱いはちょっと心外ね。でも、もらえる物ならばもらいたいというのは本音よ。レミーだって本能的にはそう思っているから問題ないわ・・・あの子は急に子供が出来ても気がつきそうにないし
「駄目かしら?」
そう聞く声は本当はもっと妖艶に聞くはずだったのに、自分でも驚くほどの悲しさを秘めていて
「無論だ」
そして無情にも何の躊躇もなく断れることに心が傷つく。でも当然よね、わたしは所詮・・・
「わたしはあなたのレミーにはなれないのかしら?」
「・・・リュウトの奴は言わなかったか? あるいはコクトは?」
なんでそこでリュウトやコクトが? あの二人は・・・
「あの二人はお人好しよ。コクトはわたし限定ではあるけど・・・二人ともわたしもレミーの一部だって」
「オレも同じだ。普段のレミーも貴様も同じレミーだ。制御役が出来て助かっているのは事実だが、それだけが役割などとは思っていない」
お人好しは三人だったみたいね。いえ、違うか。レーチェルもアキも他の皆も・・・お人好しが多すぎて困るわ、本当に
「ずいぶんと甘いのね、悪魔って」
胸が温かくなる思い。それを受け取るのがわたしで良いのか分らなくて、嬉しいのか否定したいのか
「ククッ、甘い連中に囲まれて長いからな。だが、同じ闇同士でいがみ合う必要もあるまい。光ともなれ合っている今はな」
そう笑うアシュラは確かに昔と変わったのでしょう。アシュラ本人も変わったことを自覚していてよしとしている。ならばわたしは?
「ククッ、難しく考えることではない。今は倒すべき楽しき敵がいる。分け合っても惜しくはないほど巨大な敵がな・・・レミーの方がそこら辺は分っているのではないか? 本能でだが」
本当にそうね。そういう所はレミーの方がわたしよりも賢いのでしょう。アシュラにまで本能で行動していると言われるレミーもなんだけどね・・・わたしの片割れなのよねぇ、それが
「ストッパー役は引き続きやるわ。でも、ブレーキだけでは進めない・・・のよね」
推進力しか無くて止まることを知らないレミーもなんだけど、何時までも足踏みしか出来ないわたしも駄目。やっぱりわたしたちは二人揃って一人なのかもしれないわ
「ねぇ、アシュラ? 少し踊らない?」
特に意味があっていった言葉じゃないわ。確かにアシュラの精というのも魅力だけど、今のこの動けないもどかしさを解消する方法として口から出ただけ
「踊り? 貴様はオレがそんな物が出来るとでも」
「問題ないわ。わたしだって知らないわよ、だってレミーよ? わたしだって」
彼女が憶えていない物もわたしは憶えている。彼女が判断できない物もわたしは思考できる。でも、経験も見ることもなかった物までは知らないわ
「それにアシュラだったら踊りぐらいすぐに出来るようになるわよ」
この体術の化け物が体を使う動きに即応出来ないなんて思えない。リュウトは踊りが下手なんて話は本人やアキから聞いているけど、あなたならばきっと出来るわ、わたしの恋人さん?
と言うわけで今回は堕天使のレミーの話なのですが
レミー「ム~? なんかわかりにくい」
こっちのレミーは色々素直じゃないですからね。心の中までややこしい遠回しな言い方していますので
レミー「でもアーくんはなんかわかっている?」
完全ではないですがそこそこには、って感じですね。ということで解説は次回のアシュラにお任せしましょう
レミー「うん、アーくんだったらきっと大丈夫!」
とは全く分っていない天使のレミーでした! しかし一応自分自身と言って良い存在なんですけどね、全く分っていないのに気にしないのがレミーらしさというべきか・・・本当にアクセルしか付いていない車のよう。と言ったところで今回はお開きです! では次回もよろしくお願いします~




