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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
10部11章~ラストまで
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13部6章「最後のデート」16話 「ふるさとの光景」

 ピンクの花が咲き乱れる丘、そこがカーミラの奴がリュウトを呼び出した場所。いや、俺が頼んでいた場所ではあるんだけどよ


「美鬼がこんな場所を知っているなんてな」


「いや、場所を調べたのはメイだぜ」


 地獄とエルファリアぐれぇしか禄に知らねぇ俺がこんな場所を知っているわけがねぇ。この花・・・桜とかいう木が咲き誇るのはエルファリアから遠く離れた地。行く気になれば世界のどこだって数秒飛べばたどり着ける俺たちだからこそ行けるわけだ。世界にゃエルファリアに雪が積もっている時期に花が咲き乱れる場所もあるだろうって調べて貰ったらやっぱりありやがったよ


「メイに? あいつに借りを作るのは怖いぞ?」


「・・・そこは承知している。けどよ、一度この花の下で酒を飲んでみたかった。出来ることならばお前と」


 あ~、わかっているよ! 酒はともかくリュウトと、恋人と一緒に飲みてぇなんてがらじゃねぇってことぐらいはよ!


「この花、何か特別がいわれが? いや、俺にもこの花が綺麗だと言うことはわかるが」


「さぁな、俺たち鬼は昔相当やらかしたんだろうなぁ。とにかく閻魔様に拾われて地獄に住むようになったわけなんだが、地獄はあの通りの風景だろ? だからなのかもな、先祖がこの木の下で花を見て酒を飲んだ・・・そんな逸話が鬼族の間で伝説として語り継がれているんだよ」


 遙か遠い神話さえも超えた過去、同じようにこの木の下で仲間たちと酒を飲んで楽しんだ鬼たちがいる。話に聞いただけのそんな光景が目に映るようだなんて言ったならば、また俺らしくねぇって言われるんだろうな


「ふるさとの光景って奴か」


「さぁ? どこがふるさとなんてもう誰にもわからねぇよ・・・リュウト?」


 まるでリュウトの方が見知らぬ故郷こきょうに思いをはぜているように見えて


「ああ、悪い。ほら、竜族もふるさとがどこにあるのかわからないからな。いや、この世界のどこにもないが正解なんだろうけどさ」


 竜族はレオンのいた世界から延々と世界を渡ってきた種族だ。そのふるさとなんてとっくに滅亡どころか消滅している。はっ、俺と同じってことがなんでこうも・・・


「悪いのは俺の方だぜ。なんだってよ、リュウトが俺と同じ境遇ってことがこうも嬉しく思っちまうんだろうなぁ。他の奴みたいにちゃんと生まれ育った故郷が残っている方が良いに決まっているのに」


 いや、アシュラとか悪魔組は故郷がない奴らか? ユキもあるとは言いがたいって言うのもわかる。けどよ、どこにあるかわからないとか消滅しているのが確定しているって言うのは俺たちぐらいだ


「ははっ、まぁ種族の故郷だからな。エルフだってエルフ発祥はどこだって聞いたらわからないだろうさ。俺の故郷もすでに滅んでいるが、そっちは記憶が無いからなぁ。辛いのはリデアだろうさ」


 取り出した大杯にリュウトが酒を注ぐ。ははっ、リュウトのコピー能力は材料は作れるが完成した食品は作れねぇ。どうにもそこら辺の基準は曖昧だが、少なくても酒は酒とも言えねぇ劣等なやつならばなんとか作れるのレベルだ。そしてこの酒は・・・美味い。コピー能力なんかで無くてリュウトが自分で用意してきた酒だ。ここで待ち合わせをしているのが俺だってわかっていたんだろうな


「リデアは辛いなんて思っていねぇだろうさ。こんな妹思いの兄貴がいるんだ」


「そうか・・・ははっ、弟思いの姉貴がそう言ってくれるのならば安心だな」


 本音を言ったらとんでもねぇ言葉が返ってきて俺は酒を吹き出してむせる。な、何とんでもねぇことを言いやがるんだ! 酒がもったいねぇだろ!


「お、俺のどこが弟思いなんだよ・・・最低の部類だろ? 俺なんてさ」


 教え導くなんてことも守ってやったこともねぇ。小せぇころの仲は悪くなかったと思うが、ある程度育った後の仲なんて劣悪だったぜ? 最近改善できたのだって半分はリュウトのおかげだ・・・俺、本当にリュウトに頭が上がらねぇな


「別にさ、兄弟の仲なんて何をしてやったとかそう言う物じゃないだろ? いいじゃないか、表面的に仲が悪くても、何をしてやれたわけではなくても・・・美鬼は覇鬼を大切に思っているし、覇鬼は美鬼を大切に思っている。良い姉貴だよ美鬼は」


 杯になみなみとつがれた酒をあおる。喉がカッとする感触が心地良い。そっか、俺はあいつの良い姉を名乗っても良いのか? こそばゆい気もするが、誰かにそう言って貰いたかったのかも知れねぇ。いや、誰かじゃねぇな、リュウトに言って欲しかったんだ


「ほら、桜もそうだって言っているぞ?」


 リュウトが注ぎ直した酒にひらりと落ちた一枚の花。味という意味では美味くはねぇその花は極上の幸せの・・・ふるさとの味がした

と言うわけでカーミラからバトンを受け取ったのは美鬼でした


カーミラ「うむ、一応鬼つながりじゃしの」


この作品ではあまり吸血鬼とは表記しませんけどね。ともかく男っぽい言葉遣いと行動の割に結構可愛くて乙女な美鬼なのでした


カーミラ「奴の場合は初心というのが正解な気がするがのぅ。じゃが恋愛方面では確かに可愛らしい行動が多いの」


肉食系が多い竜神伝説ヒロインの中では草食系ですしね


カーミラ「我らが肉食にならねば超草食系しかいない男たちでは先に進むまい」


・・・確かに。自分から話を進めずになんとかやっているのって美鬼とおもてのユキぐらいなものですね。さてさて、そんな乙女な美鬼の次話は勿論リュウト視点! こちらもお楽しみに~

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