13部6章「最後のデート」13話 「1番馬鹿」
レミーの多少マシになったと思われた部分はどうやら堕天使が指示していたらしいとわかったのは少々落胆する面もあるが、ともかくレミーはオレが誘った場所に着いてくる気はあるらしい
「レミー、ここをどう思う」
オレが連れて言ったのは魔界の荒野。オレが領主などをやっている町からさほど離れていない魔界ならばごく普通の場所だ
「ム~? わたしは嫌いじゃないよ。綺麗だと思うし、暖かいし」
「・・・」
ここを綺麗で暖かいか。確かにマグマの川が流れているこの場所は暖かいと言うよりも暑いに近いのではないかと悪魔であるオレさえも思うこの場所をな
「アーくん、わたしね、天界だって天国だなんて思わないよ」
無論天国などと呼ばれる場所は天界とは別の場所だろう。いや、真実そんな場所があるかなど誰にもわからぬし、あったとしても悪魔であるオレには無縁な場所だろう。行きたいとも思わぬがな。だが、人や天使たちの認識ではただ神や天使たちが住む場所ではなく天国と同義に思っているのではと思っていたのだが
「天界には天界の良いところがあるけど、問題だってないわけじゃない。それは地上も魔界も同じなんじゃないかな?」
レミーは半分は悪魔の血が流れている。そのせいであの女神に拾われるまではずいぶんと辛い目に遭ったという話も知っている。天界がレミーにとって天国ではなかったのは確かにその通りなのだろうが
「わたしね、みんなみたいに頭良くないから上手くは言えないけど、嫌だって思ったらどこでもそうだと思うんだ」
同時にこのマグマに溢れ、はたまた極寒の吹雪が吹き荒れ、日の光も下層に行けばほとんど差さぬような魔界さえも良いと思えば良いところもある・・・か
「ふっ、確かにお前は馬鹿だな」
「ム~・・・」
オレのそんな言葉にレミーは少しばかりむくれてみせるが
「だが、誰よりも真実を見抜いているのはお前なのかも知れない」
「アーくん?」
オレの言った意味が理解できていないのかレミーは呆然とした感じで言うが
「ふむ、お前は存外に賢いのかも知れぬ、そう思っただけだ」
やはり良くはわかっていなかったようでオレのそんないい加減な言葉に嬉しそうにニパッと笑う。けれど、賢者というのは案外こんな物なのかも知れぬ。ふっ、こいつが賢者などとは到底思えぬが
「アーくんがそう思ってくれるならばわたしはそれでいいかな」
そう言うこいつだからこそオレは
「レミーよ、もしも次の戦い、オレが生き残ったのならば」
レミーが生き残ったのならばという条件は付けない。オレが死ぬことはあってもレミーが死ぬことはない。必ず守り抜く、そういうリュウトの意思と覚悟を今回は見習うとしよう
「オレと共に暮らす気はないか?」
どこでとは言わない。魔界だろうが地上だろうが天界だろうがどこでも良い。どこであろうとも良いと思えば・・・なのだろう? この町の住民もオレ抜きでもなんとでもやっていくだろう。こんな奴らでも悪魔なのだからな
「アーくん、それって・・・」
レミーが震えているのは歓喜か? それとも恐怖? 困惑というのもあるな
「そうだな、先にこれを言うべきか。オレも貴様を存外に気に入った・・・そういうことだ」
好きだとか愛しているなんて言葉は悪魔のオレには似合わない。いや、そう言う言い訳なのだと言うことは自分でもわかってはいるが
「わたしは・・・ううん、わたしもアーくんのこと好きだよ! 愛している!」
そういうこいつはやはり馬鹿ではないのだろうな、少なくても本質的には
「うううう・・・」
もっとも何やら唸っていたと思いきや、体当たりをするように飛びかかってきてお互いにダメージを与えるような口づけなどをしてきたこいつはやはり馬鹿なのだとも思うが
「うう、アーくん痛い」
「知らん。オレは回復魔法などは使えん」
「あっ、わたし使える・・・」
だが、こんな馬鹿と一緒にいることを決め、それが幸せという奴なのだと思ってしまったオレが一番の馬鹿なのだろう
と言うことでレミー編、アシュラ視点でした
レミー「やっとわたしたち結婚だよ~~~!」
いえ、結婚ではなくて精々婚約かと。魔界にそう言う制度があるのかと言えば・・・まぁコーリンさんが結婚しているからあるのか
レミー「何でも良いよ。アーくんとわたしが幸せってことには変わらないから」
こう言う本質を見るという点においては確かにレミーは秀でているんですよね
レミー「えへへ、わたしって賢い?」
まぁ、馬鹿だから余計な装飾が見えないとも言うのですが。幻影を操る者が本質をしっかりと見抜くと言うのもらしいのではないかと思います。と言うところで今回はここまで! 次回もまたよろしくお願い致します




