13部6章「最後のデート」10話 「特別でも日常」
「さて、今日は私の番だ」
ふふっと笑えば表が不思議そうにしている感覚が伝わってくる。そこらへんはまだお子様な表にはわからないかなどと思えば、ぷくっと膨れるイメージで笑わせてくれるわね
『もう一人の私は素直じゃないからなのですよ』
って言う意見にはちょっとだけ胸に来るものがある。人との交流がほとんどなかったという点は同じなのに素直で人なつっこい表の性格はどこから来たのだろうか
「りゅ、リュウト、待たせたな」
表の時もそうだったが私も約束の時間よりはずいぶんと早く来ているというのに、それよりも早く約束の場所にいるリュウト。確かに睡眠が出来ないわけではないがする必要性がほぼないという竜の特性もあるのだろうが・・・一応エネルギーの回復が少し早くなる程度の利点はあると聞いているが、リデアなんかも同じはずなのに彼女はしっかり寝ているし
「いや、大して待ってはいないさ」
う、余計なことに思考を奪われてしまったが、今度はリュウトの笑顔に目が・・・
「どうした、ユキ?」
「い、いや、何でもない」
お、おかしい。今日は決戦前の最後になるだろうデートと言うことでリュウトに大人の女として色々とエスコートしてかっこよく決めるはずだったのに
『そういうのはカーミラさんやメイお姉ちゃんに任せるべきだと思うのです』
め、メイはともかくカーミラに負けるのは気に入らないわ。ね、年齢的には私どころかメイよりもずっと年上だけれども・・・何故か雪女である私が寒気を感じたからこれ以上この話題を考えるのは止めておきましょう
「き、今日は天気が良いな」
「ん~ ・・・そうだな」
空を見ればどんよりと曇り空。うう、なんか今日はずいぶんと駄目なような・・・
「なぁユキ? 今日はそんなに特別な日か?」
そう声をかけられて当然だと答えかけて、考え得る
「リュウトがいる。そうだな、少し変わった何時もの日だ」
少なくてもそう思えばさっきまでほどには慌てなくいて済む。同時に特別な日だと緊張しているとリュウトに思われるような醜態をさらさなくてもよくなり・・・そして少しだけ特別な日というのも変わらない
「ゆ、ユキ!?」
リュウトの腕を取って胸に抱きかかえるようにしながら歩き出した私に今度はリュウトが慌てる。フフ、何をそんなに慌てるって言うのかしらね? 私たちは恋人でしょう? それに
「言っただろう? 今日は少し特別な日だと・・・」
それがしたくても出来なかったという意味であっても私らしくないって言うのはわかるわ。でも、それでも私は・・・
「リュウトとこうするのが夢だった・・・そう言ってもか?」
「そんなことを夢にしないでくれよ・・・何時だってやろうと思えば出来ることなんだから」
そう言うリュウトだって赤くなっているのだから、やろうと思うことと実行に移すことの壁はわかっているわよね? リュウトの言葉はきっと自分に言っていることなのよね
「私にとってはこれも日常の中の特別よ」
「そ、そうか、それでこれからどうするんだ?」
リュウトと待ち合わせをしたのは迷いの森の中。ここを待ち合わせの場所にしたのはわかりやすいと言うのもあるけれど、それだけだったらエルファリアの町中の方がわかりやすい場所はいくらでもある
「ええ、一緒に行きたい場所がね」
森の中をリュウトと並んで腕を組んで歩く。こう言うことに慣れていない私の体温は雪女にあるまじき体温になっているし、心臓も息苦しいぐらいに高鳴っているけど、それさえも嬉しく思う
「この先に私が行きたいところがある」
この間見つけたばかりの私の憩いの場。派手なデートは私は求めない。私にとっては大切な時間はそう言うものではなくて・・・
ということで今回は裏のユキ編です
ユキ(裏)「・・・また短くないか?」
まぁ、ここが一番区切りが良かったので
ユキ(表)「2分割されていたよりかは長いのです」
表のユキのようにそう思っていただきたいものです
ユキ(裏)「・・・それで当然だけ次回は?」
はい、リュウト視点編ですね。そっちでユキがどこに連れて行ったのかを見ていただけると嬉しいです。ではでは




