13部6章「最後のデート」8話 「原点」
お、お兄ちゃんちゃんと待っていてくれています。それが私のリュウトお兄ちゃんを見つけたときの思いです。リュウトお兄ちゃんは誰が来るのかは知らされていないはずですし、エルファリアの広場でしたら私を連想することは出来ないと思っても少し不安だったんですよ
「お待たせしました」
「今日はユキだったのか。あっ、いや、待ってはいないから安心して良いぞ? 今だって時間前だしな」
リュウトお兄ちゃんがそう言うようにやっぱり私だってわかっていませんでしたよねって言う思いと、これでも私だって1時間も前に約束の場所に着いたのにリュウトお兄ちゃんの方が早かったことに驚いたり
「私でガッカリしていないのですか?」
なんて聞いてしまう自分が少し悲しかったり・・・もう一人の私は何でそこでそう思うんだなんて嘆いていますがそこは自分でもどうしようもないところなのです
「なんでガッカリ? あ~、なるほどユキも俺の同類って感じだな」
「ほへっ?」
その何時だって自信なんてなくて皆の足手まといになりたくなくてな私と皆のリーダーとして自信たっぷり・・・って訳ではないですが、ちゃんとしているお兄ちゃんと私なんか勝手思いましたが、考えてみればリュウトお兄ちゃんは恋愛関係に関しては自信ボロボロでした
「リュウトお兄ちゃんはカッコいいですから私とは違うのです」
でも本当に駄目な私と駄目じゃないのに自信が持てないだけのリュウトお兄ちゃんとでは
「なるほど、逆の立場になるとよくわかるって奴だな」
なんてリュウトお兄ちゃんが言って、私のほっぺたをムニって伸ばすのです。わ、私は雪女だから肌の色は真っ白ですがお餅ではないから伸びないのです!
「ユキは可愛いし美人だぞ。それに優しいし気配りだって出来る。他の誰がなんと言ったとしても俺にとってはユキは自慢の出来る彼女、それで駄目なのか?」
「で、でも私は・・・」
「それじゃあもっとユキの良いところを上げてやろうか? そうだな・・・」
って指折り数えてあげていくリュウトお兄ちゃんに周りに人がいることを思い出して恥ずかしさから来る悲鳴を私が上げたのは当然のことです
「わ、わかりました! わかったので止めてください!」
も、もう! 雪女の顔を赤く出来るのなんてリュウトお兄ちゃんぐらいですよ? それともう一人の私が凄く嬉しそうにしています。お、お兄ちゃんが褒めてくれたのは私ですよ? 容姿とかは体は同じなのでもう一人の私が褒められているのと変わらないかも知れませんが
「ははっ、と皆が俺なんかを良いって言うのは・・・って思っていたが、こうやって自分が好きな相手が自分を卑下するって言うのは確かに嫌なもんだな」
嫌って言いながら凄く言い笑顔で笑うリュウトお兄ちゃんですが、さらなる好き攻撃に赤面する私はそれどころではありません。これで天然だから怖いって他の皆さんがよく言うのがわかります
「今日のリュウトお兄ちゃんは意地悪です」
「それはママナにたまに言われるな」
ママナさんも妹枠みたいなものですからでしょうか? リュウトお兄ちゃんは妹には意地悪したくなる人なのでしょうか? そう言えばリデアさんも結構リュウトお兄ちゃんにはしてやられているような気もします
「さて、それでユキは何処か行きたいところがあるのか?」
「あっはい、そうでした。あ、あの、今更かも知れないのですが・・・」
リュウトお兄ちゃんを追ってエルファリアの町にやって来てお城に住み始めてもうずいぶんと経ちます。こっちで暮らした時間の方が遙かに長いのに、時折あそこを思い出すのはやっぱり私の原点だから、なのでしょう
「もう一度、あの場所に行ってみたいんです。リュウトお兄ちゃんと出会ったあの私の生まれた山に」
もうずいぶんと昔に私が捨てたあの場所、捨てたなんて言いながら本当は残り続けたあの場所に最後の勇気をもらいに
と言うわけで今回はユキの回でした
ユキ(表)「快挙です! 今回は1話ずっと私視点なんですよ!」
そう言えばユキはずっと表と裏で半分ずつでしたので他のメンバーのように1話まるごとってないんですよね
ユキ(表)「そうなのです! これで私がもう一人の私をぐっとリードですよ」
何て言っていると絶対に
ユキ(裏)「私の扱いはどうなっているのかしら?」
ですよね~。きっとくると思っていましたよ。えっとですね、ユキはずっと半分だったので今回は表と裏で2回分のデートがあるのです・・・今度は表が文句を言ってきそうなので今回はここで終わりにしておきましょう。では次回もまたよろしくお願いいたします~




