13部6章「最後のデート」4話 「思い出の場所」
今日は楽しみにしていたリュウトとのデートの日。リュウトから待ち合わせの場所をどうするか聞かれたときに私の頭に浮かんだ場所は一つしか無かった。だから今、私はその待ち合わせの場所の茂みの中に身を隠している・・・茂みの中である必要性はあんまり無いんだけどね
几帳面なリュウトらしく、約束の時間のほんの少し前にやってきたリュウトはそこに私がいないことを確認して時間まで待つことにしたみたい。普通ならばこの距離にいれば私の気配を感知しそうなリュウトだけど、私が今使っているお母さん直伝の隠密の術はリュウトでも存在の剣の力を使わない限り見破れない。でも、たぶんリュウトは私がここにいるってことはわかっていてわざと力を使って確認したりしないんだろうなぁ。なんて思いながらしばらくリュウトの顔を見ながら過ごし、やってきた待ち合わせの時間にリュウトは指笛を吹く
「お待たせリュウト!」
待ってましたとばかりに私は隠密を解いて茂みから飛び出る。やっぱり私がここにいるって予想していたのだろうリュウトは特に驚きもしないで飛びついた私を抱きしめ返してくれるんだ
「リュウト、気がついていたでしょう?」
「そりゃ指定された場所がここならばな」
リュウトが懐かしそうにあたりを見る。もうずいぶんと時間が経ってあの頃とは同じようでも何もかもが変わってしまった景色だけど
そう、ここは迷いの森の入り口付近。すぐそばにはリュウトの神殿、昔はマリアがやっていた孤児院がある場所・・・まだ竜神になる前の弱かったリュウトに私が私に会いたいときにはここで指笛を吹くように言った場所
「私たちの待ち合わせの場所だったらここしかないってそう思ったんだ」
よく私とリュウトが腰をかけていた木の枝。あの木もとっくの昔に枯れて無くなってしまった。似ているようで全く違う森の姿、それでもここは私たちの思い出の場所
「そうだな、確かに俺たちだったらここしかない」
過ぎ去った過去にこだわるのは良くないって言う人もいるけれど、過去があるから未来も望めるって私は思う。だって、この場所でリュウトと出会わなければ私はきっともう生きてはいない。生きていても未来なんて考えられずに今しかなかったはずだよぉ
「あの木はママナがオカリナを吹いていた木によく似ているな」
「え~? そうかなぁ。私は向こうの木の方が似ている気がするよ」
もう遙か昔の話。悪魔の私と竜神のリュウトにとっては少し前の思い出話でも人間にとっては伝説の彼方ってところなのかな? 私とリュウトの始まりの場所
「ここでママナと出会わなかったら俺はどうなっていたんだろうな」
「へっ?」
自然とこんな声が出るのは仕方が無いことだと思う。だって私がさっき考えていたこととよく似ていたから
「姉さんを守りたいって竜神にはなっていたかも知れないが、きっと今の俺とは違うんだろうな・・・守りたい人の数がさ。悪魔や鬼を守りたい者の中に入れられていなかったと思う。それは全部ママナが教えてくれたものだ。それがなかったら俺はとっくに何処かで負けて死んでいたんだろうな」
私はリュウトとで会ったおかげで今もこうして生きている。もしも、もしもリュウトも同じなのだとしたら・・・それはとっても嬉しいことだよ
「私もリュウトの役にちゃんと立てているんだね」
「当然だろ?」
いつだって、自分がリュウトにとって必要なのかどうか自信が持てないでいる私にはこうやって当然のように肯定してくれるリュウトがまぶしいよ
「さて、何時までもここにいてもデートにならないだろう? ・・・どこに行く?」
「ふふっ」
急に笑い出した私にリュウトはどうしたんだろうって顔で首をかしげているけど、そういうのって普通はリュウトがエスコートしたがるものじゃないのかな? そこで私に任せるって言うか頼っちゃうのがリュウトらしいとも言えるけどね
「仕方がないなぁ。エスコートはお姉ちゃんにお任せだよぉ」
まだまだこの最高の弟を一人にするわけには行かないよね、姉としても恋人としても
と言うわけでデートママナ編でした
アキ「えっと、これはデート?」
厳密にはデートの待ち合わせ場面ですね。デートは次回のリュウト視点で
アキ「えっ!? だってリュウト視点は前回で」
それはデート編の導入部分。ママナ編は今回からなので次回はママナ編リュウト視点になるのです
アキ「・・・私の出番ってまだまだ先?」
メインヒロインさんはもうしばらくお待ちくださいね? という感じで今回はここまで! 次回もよろしくお願いいたします




