13部5章「最後の日常」18話 「毒ではなくて」
「うう、なんでワタシばっかりこんな目に・・・」
いえ、正確にはワタシだけでなく兄さんもなんだけど、兄妹揃ってアキの作ってきた料理にノックダウンさせられたのよ。意識があるってことは少しは耐性がついたのかしら・・・欲しくなかったわ、こんな耐性
「それは素直に食べるのがあなたたちだけだからだと思いますが」
「・・・!?」
いつの間にかいたメイがそんなことを言う。ワタシだって食べたくて食べたんじゃないのよ! でも、アキの純粋に料理を作ってきたから食べての視線にやられたというか、他の生け贄を探したら全員逃げ出した後だったというか
「ワタシ、天敵はあんただけだと思っていたけど、姉妹揃って天敵だったのね。あんたら姉妹に呪われているんじゃないかしら?」
「そんな悲しいことを言わないで欲しいですね。私はリデア殿も大好きですよ」
そんな風に泣いている真似をするけど、この女がこんなことで泣くはずがないわ! これがアキだったら少しは心配するし言い過ぎたかしらって思うところだけど・・・って本当に泣いているわけじゃないわよね?
「べ、別にあんたが嫌いとは言っていないわよ」
「相変わらずのお人好しですね。あと、嫌いって言われたことは何度かありますが」
さっきまでの悲しげな様子は全く見えずにあっけらかんと言ってのけるメイにワタシは口をパクパクとさせる。ほ、本当にこの女は!!
「やっぱり宣言するわ。ワタシはアンタが大っ嫌いだし、あんたら姉妹に呪われているわ!」
そんなことを言われても笑っていられるのなんてアンタぐらいなものよ。あっ、レミーも笑っているかも知れないわね? 笑う意味が正反対ではありそうだけど
「大体アキの料理は何なのよぉ、兄さんは毒だって斬れるはずなのにアキの料理には効かないのよ」
正確には兄さんではなくて存在の剣の能力なんだけど、そんなことはどっちでも良いわ。一振りすれば、どんな毒だって斬って無効化できるはずのあの剣が通じないって何なのよ
「それは毒ではありませんからね」
「・・・どういうことよ?」
食べて相手の命を危ぶめるような料理が毒ではなくてなんだって言うの?
「毒にしても薬にしても、塗り薬だろうと飲み薬だろうと『成分』が体に対して何かを起こすという意味では同じものです。その何かがメリットの方が強ければ薬、デメリットの方が強ければ毒と呼んでいるに過ぎません」
「・・・じゃあアキの料理は何だって言うのよ」
どう考えたってデメリットの方が大きいんだから毒でしょう。それに仮に薬だとしても存在の剣で斬れないって言うのはおかしいのよ!
「なにもどうもありません。ただの料理ですよ」
「・・・えっ?」
いえ、本当にどういう意味よ? 普通の料理は食べて倒れるなんてことはないのよ!
「料理の何らかの成分がリデア殿の体に害を与えているわけではありません。食べた料理自体は通常どおりにリデア殿の血肉になっただけです」
「あの料理がワタシの体の一部になっているってだけですっごく嫌なんだけど!」
そんなのごく一部だけでしょうし、ワタシたちの体は普通の生物とは大分違うのだけど、概念生物である竜のワタシ。その氷という概念をむしばまれているような気がするのよ!
「それはなんともですが・・・リデア殿はけして成分によって体調を崩しているわけではなくて、味というものによって体のバランスを崩されているだけですので・・・毒ではないのです」
「最強の兵器じゃない、それ」
つまりものすっごく不味いってだけで人どころか竜を殺しかけているわけでしょう? 毒味以外の方法では絶対に感知されないし、遺体を調べても毒物は発見されないじゃない
「・・・ところでリデア殿はなんで回復魔法を使わないのですか?」
「えっ?」
「毒ではないから存在の剣で斬れないというだけでダメージですから回復魔法での治療は出来るのですが」
「・・・・・・は、早く言いなさいよ! それ!!」
コロコロと笑うメイを見て思う。絶対にこの女はワタシが苦しむところを見たいが為に今の今まで言っていなかったに決まっているわ! ほ、本当に性格が悪いんだから~~~!!
アキの料理は存在の剣での治療は出来ない、何故か? と言う話でした
リュウト「・・・そう言えば俺も治療はやったことなかったな」
リュウトの場合は回復系統苦手ですからね。得意なメイとかがやろうとしなかったから自分がやってもになっていたわけで
リュウト「しかし、治療が出来るとわかっていてもメイは食べようとはしないと」
メイ「治せてもダメージになる不味いものを進んで食べるものはおりません」
・・・まぁ、メイの言うとおりなんですが、万人に不味いと思わせる料理というのもまたすさまじいものです。そして万人を倒れさせる料理も・・・とアキあたりが乱入してこないうちに今回は終わりにしておきましょう。では皆様、次回もよろしくお願いいたします




