13部5章「最後の日常」16話 「世界を見る目」
「おう、ククルいるか? うぉ!?」
俺はククルの部屋を開けようとして、慌てて飛びのく。というのもどこかで見た覚えがある光の一戦が俺めがけて飛んできやがったからな。最近部屋から出てこねぇなと思ったら何してやがるんだ、あいつは
「美鬼さん? いきなり開けたら危ないですよ?」
「あぶねぇのはお前だよ。俺だったら別にいいけどよ」
「相変わらずですね、美鬼さんは」
そう笑うククルだが、相変わらずなのはお前の方だと思うぜ
「で、何をやっていたんだ?」
「ちょっとした実験です。レーチェル様も私も使い方は違いますが、鏡を応用して戦っているという点は同じです。でしたら真似をできないかと」
真似? ってことはさっきのアレはレーチェルのミラーレイか!
「真似なんかでこの先の戦いに役に立つのか?」
「レオンには間違いなく通じないですよ。その前に私たちがレオンと直接戦うことがあるのかも怪しいですが」
どういうことだ? 俺はリュウトと共に戦うつもりなんだが
「ククル、それは一体?」
「いえ、今は忘れてください。私のただの予想で間違っていたら恥ずかしいですしね。ですが、手数を増やすというのは意味があります。いろんな意味で」
ククルの弱点は攻撃能力の不足にある。防御とカウンターは得意だが、自主的に攻撃をする手段があまりにも乏しい。だが、この技があれば、その懸念はひとまず解消されるな
「美鬼さんは本当に戦いのことには真面目ですね。私にはできない事ですから少し羨ましいです」
「そりゃ好きなことには真面目にもなるさ。ククルだってそうじゃねぇか」
「その答えは『はい』でもあり『いいえ』でもありますよ。私が本当に好きなことなんて・・・リュウトさんしかいないのですから。私にはリュウトさん以外は何もないんです」
ククルのことはリュウトから聞いた。そりゃあ確かにククルにとってリュウトが大事になる理由もわかる。だがよぉ、ククルの中にいるリュウトがそれだけとは思えねぇ
「なぁククル、俺たちが出会ったときのことを覚えているか?」
「美鬼さんとですか? あれはシャドーナイトが暴れだす少し前、地獄でのことですよね」
俺にはシャドーナイトが何時から暗躍していたのかなんて難しいことはわからねぇし、地上でリュウト達と戦っていたころの奴なんて知らねぇ。だが、確かにククルと出会った時期はまだ地獄も静かだった
「地獄と言ってもあそこは入り口だから罪人ばかりが来るわけじゃねぇが、案内人もなく彷徨うような奴はたいてい罪人だ。そして彷徨うやつじゃなければあの村にはこねぇ」
「つまり美鬼さんは出会ったときは私もそうだと思ったのですね。あ、いえ、非難するわけではないのですが」
そうだ。死者は見た目じゃ年齢はわからねぇ、だからククルの見た目で罪人と言うのも珍しいわけではねぇんだ。だから俺はあの時にまた罪人が紛れ込んだか程度にしか思わなかった
「罪人って言うのは普通は保身に走るもんだ。鬼っていうのは見た目からして厳ついだろう? 一目で強いってわかるから鬼に逆らおうなんて罪人はよっぽど腕に覚えのあるやつぐらいなもんだ。そう言うやつでもあの村にたどり着く前までに痛い目にあって従順になるってもんだ」
「それで私が目立っていたのですか?」
「そりゃ開口一番『人を探しています。それまで滞在させてください』なんて言うやつは見たことねぇよ。おまけによくよく見ればまだ生きている生者ときていやがる」
懐かしいですねなんて言うククルだけどな、まだ生きているククルが死者が来る地獄にリュウトを探してやってきたと言うことだ。無論、リュウトが死んでいるなんて思ったわけじゃねぇんだろ?
「ククルが知っている世界は確かにリュウトでそれは今でも変っていねぇのかも知れねぇよ。だけどな、ククルはリュウトの視点で世界を見てきた・・・そうじゃねぇのか? だからリュウトはあそこに来ると確信していた。たとえ、これから地獄で一騒動あると知っていたにしろな」
おお、ククルが動揺する姿なんて俺は初めて見たぜ? さて、ククルの口からどんな話が飛び出すかな? 何が出ようと俺はかまわねぇさ。なにせ、こういうときに飛び出すのは鬼って相場が決まってやがるんだからよ
再開後、2回目はククルと美鬼の話です。この二人はリュウトと会う前に出会っているのにあまり詳しいことが語られていなかったですから
アキ「私もククルには弱いのよね。リュウトに依存してしまう気持ちもわかるし」
リュウトも負い目がありますしね。ちょっとリュウトパーティーの中では変わった存在ではあります
アキ「うん、リデアとかも近いと言えば近いけど、性格的にはお姉ちゃん似ているし」
アキが苦手な理由はそういうところにもありそうですね。さて次回はククル視点となるわけ何ですが
アキ「この感じだと私の出番はなさそう。早く、私も再登場したいんだけど」
そ、そこら辺はもうしばらくお待ちください。ということで今回はここまでです。次回もよろしくお願いいたします




