13部5章「最後の日常」15話 「馬鹿でいい」
明けましておめでとうございます。
本年より再び再開とさせていただきますが、週2回更新は私的な変化で難しくなりましたので週1更新でやらせていただきます、ご了承のほどお願いいたします
「それでどうなったのじゃ?」
今は夜も結構遅い時間。この時間は悪魔である私の独壇場ってことはもちろんなくて、そろそろ眠いから帰ろうとしたところでカーミラに捕まったの
「どうもこうもないよ。マリアさんからお姉ちゃんバトルの日程が送られてきたんだけど」
「ふむ」
「メイにそれがばれて参加されそうになったから中止になったんだよ」
さすがのカーミラも渋い顔をしているけど、マリアよりもメイさんの方がやっぱり怖いんだとよくわかった事件だったよぉ
「じゃがメイらしくないとは思わぬか?」
「? どういうこと?」
カーミラは笑いながら私にワインを差し出すけど、私は断る・・・私、まだ未成年
「つれないのぅ。何、メイならば自分が参加するって言ったらお流れになりそうなことぐらいわかっておるのではないか?」
「メイって自己評価がめちゃくちゃだからそこらへんわかっていないんじゃないかなぁ。リュウトに比べれば別だけど」
「甘いのぅ。確かにメイは自身の評価が危ういところがある。じゃがの、中止になる最大の理由はそれでももう一つ理由となるものがあるじゃろ?」
ってカーミラはしたり顔で言うけど・・・なんだろう?
「何、言われれば簡単なことじゃぞ? マリアとお主を姉たらしている弟はリュウトであろう? マリアはみんなが弟・妹と言うておるが共通はリュウトじゃ」
コクリと私は頷く。私は確かにリュウトのお姉ちゃんではあるけど、マリアみたいにアシュラだとか目の前のカーミラみたいな相手を弟・妹呼ばわりする度胸はないよぉ
「ではメイを姉たらしている物は誰じゃ?」
「・・・あっ、そうか」
「うむ、メイの妹はアキじゃからのぅ。対象が違う以上は競っても仕方あるまい?」
にもかかわらずメイが出張ってきたから中止になったんだね。でも、それならばなんでメイはそんなことをしたんだろう? そっちの理由はカーミラが言うとおりにメイが気が付いてもおかしくない。ううん、気が付かないとおかしい話だよぉ
「じゃあ、どうしてメイは?」
「気が付かなかったのか・・・かの? 少々違うのぅ。気が付かなかったのではなく、気がついいていたから参加したのじゃ」
「・・・どういうこと?」
「鈍いのぅ。メイが参加すれば中止になる。そうとわかっていて参加したということはじゃ」
「・・・! 中止にしたかったわけ!?」
「そういうことじゃの」
な、なんで? って思ったけど、考えてみれば当たり前のことかもしれない。だって
「メイは少しでも消耗を押さえたかったんだね」
「うむ、お主とマリアがたとえ遊びの範疇でも争い、怪我はもちろんじゃが仲たがいでもされたらたまったものではないということじゃの。無論、鍛錬によるけがなどは仕方がないが無駄にせんほうが良い。まして確率が低いことがわかっていようとも、今のタイミングで不要な消耗は避けたかったのじゃの・・・その意味が分かるかの」
うん、あのメイだよ? ほとんど予知に近いんじゃないかってぐらいに先読みをするメイが私でも無視できるんじゃないかってぐらい確率の低いことが起きることを警戒している。つまり、それだけ後がないってメイが思っているってこと
「本当に綱渡りなんだね、私たち」
「うむ、勝てるなど口が裂けても本当は言えぬのだろうのぅ」
1%? そんなに勝率があったら泣いて喜ぶってところなんだろうね、本当は。私だって、私だってそんなことはわかっているよぉ。でも
「怖いと思うか? 逃げたいと思うのかのぅ、お主は」
「ううん、きっと昔の私だったら怖がっていたよ。でも・・・リュウトならばそれでも言うよ」
リュウトの口癖。それを言ったからと言って何が変わるわけでもないかもしれない
「「逃げられない、負けられない、ならば勝つしかないだろう?」」
二人声をそろえて同じことを言い、そして笑う。それは何のことはない言葉、だけどリュウトがそう言って笑う限りは勝率は100%なんだと・・・そう私たちは信じている
「面倒なことなどメイに丸投げじゃ。我はな、初めて思うぞ。馬鹿になってひたすら戦ってやりたいなどと」
「私も同じだよぉ。勝てない敵からは逃げる・・・それが私の生存手段だったはずなのに、今はそんなもの全部捨ててしまいたいって思っている」
「馬鹿じゃな」
「馬鹿だよ」
クスリと笑い拳を合わせる。そんなことを全員が考えている馬鹿の集団だから戦える。ねぇ、リュウト・・・なんだっていい。でも必ず生きて勝とうね
勝ち目がないに等しいことなどみんな分かっている。それでも戦う理由があるのです
メイ「時に信頼が厚いのも困りものですね」
そう言いながら嬉しそうにしているメイもなかなかレアではあります。怖い参謀ではありますが、同時に築きあげてきた信頼もまた並みではありません
メイ「勝ち目がないのならば作って見せます。言い続けたこの言葉を嘘に変える気はありませんので」
リュウトのあれがリュウトの口癖であり、パーティーの言葉であるのならばメイの言葉はこれなんでしょうね
メイ「それぞれにそれぞれを表す言葉がある。ならば、それが私たちらしさ・・・失っても戦うもの。勝つために守るもの。真逆のようで同じ思いです」
全てはリュウトのために。世界のためではないのがこの物語ですね・・・その結末が出るのはもうさほど先の話ではありません。ではまた一歩、物語を先へと進めて最後へ近づいていきましょう。と言ったところで今回はお開きです。次回もまたよろしくお願いいたします。




