13部5章「最後の日常」13話 「不安と心配と」
「お姉ちゃんバトル? なんだ、それ?」
「やっぱりリュウトも知らないよね。マリアさんとママナが言い出したことなんだけど」
二人の弟って言えばリュウトのことだから、リュウトだったら知っているかな~って聞いてみたんだけどやっぱり知らなかったみたい。もう一人、姉と言えば私のお姉ちゃんがいるわけなんだけど、『知っている』なんて答えられたらそれは怖いから聞かないでおくよ
「姉さんとママナが? ん~、あっ、そういえば・・・」
「心当たりがあるの!? リュウト!」
てっきりマリアさんとママナのでまかせかと思ったんだけど、リュウトが知っているってことは本当にあるのそんな戦いが
「俺が姉さんの孤児院にいたころだからすっかり忘れていたんだが、姉さんの孤児院は決して良いことではないが昔はそれなりの数の子供がいてな、その中には俺よりも年上もいたんだ。で、なぜかその人と姉さんの間でどっちが俺の姉かっていう争いがあってな」
「え、えっと、ちょっとどういうことかわからないけど、なんなのそれ?」
「俺に言われてもなぁ。どうも俺が見た感じだとその姉さんじゃないほうの姉さん・・・ややっこしいな、名前はアンヌって言ってな。当時の俺はアンヌ姉なんて呼んでいたが、今回はアンヌで統一するぞ」
そうだね、どっちの姉さんじゃちょっとわかりにくくなっちゃうし
「で、そのアンヌがどうも姉さんに『リュウトの姉は私です! 先生じゃありません!』なんて言ったみたいなんだ」
「うわ~、なんて無謀な」
私も覚えているよ。マリアさんって先生って呼ばれるとものすごく怒るよね・・・ひょっとしたらこの経験のせいで先生呼びが嫌だったのかな?
「アキが何を考えているか想像がつくが、姉さんはその前からおれが先生と呼ぶと怒ったぞ」
「あっ、そうなんだ」
じゃあ違うか。マリアさんのあの姉と呼ばれることに対する情熱がどこから来るのかはわからないけど、私もリュウトに先生なんて呼ばれたらすっごく嫌ね。そういう意味では分からなくはないのかも
「で、その時も姉さんがお姉ちゃんバトルってっ言葉を言ったような気がする・・・俺もそんな言葉はその時一度しか聞いたことがなかったからすっかり忘れていたんだが、アンヌも目をパチクリさせていたから孤児院があったあたりの風習とかそう言うのでもなくて、姉さんが勝手に作ったものなんじゃないか?」
「・・・じゃあ、なんでママナは知っているわけ?」
「偶然とか? いや、さすがにないか? 姉さんが昔言い出した時のことを知っていて、人間の常識だとでも思ったのかな?」
う~ん、なんかあり得そうでなさそうというか。とにかく昔マリアさんがやったってことはそこまで変なことでない・・・って保証はないよね。マリアさんだもの
「一応どんなことをやったのか聞いてもいいかな?」
「いや、姉さんは内緒だって言って教えてくれなかったからなぁ」
ますますわからなくなるお姉ちゃんバトル。弟だから教えられない? それともリュウトだから?
「ただ、そのバトルが行われたと思われる日からアンヌはおれの前に出てこなくなった。と言うかあからさまに避けられるようになった」
「本当に何があったわけ!?」
でもそれってあんまりよくないよ!? ママナが私にとっても大切な仲間っていうこともあるけど、今のリュウトにとっては事実を知っていてなおついてきてくれる仲間の存在は本当にありがたい人たちなの。1人でも多くの仲間をもって力を蓄えることが勝利へのか細い道なんだよ!?
「さてな、あれで姉さんは意外と口硬いからなぁ。本当に話しちゃいけない部類のことは話さないぞ?」
「お姉ちゃんバトルとかいう謎のワードがその本当に話してはいけないことになっているのが怖いんだってば」
普段だったらそういうことを調べてくるのはマリアさんなんだけど、当の本人が秘密にしていることだし! カーミラとかに聞くのが一番早いかな~。幽霊とバンパイアの隠密合戦とか凄く怖い気がするけど
「アキ、だがな俺は大丈夫だと思うぞ」
そう笑うリュウトは本当に何も心配していないように見えるけど
「どうしてそんなことを言えるわけ?」
「ま、信頼だろうな。姉さんはあれでなかなか策士だぞ? そりゃメイには遠く及ばないが、俺たちが心配しているようなことは起きないってそれは断言できるさ・・・途中でとんでもをやるのも姉さんだが」
・・・リュウトがそういうのならば私も信じるべきかな? でも、そのとんでもが怖いって思うのは私だけなのかなぁ
久々に登場の主人公です
リュウト「あまり呼ばれたくない案件での登場だがなぁ」
・・・信頼はどこに行ったので?
リュウト「信頼はしていても姉さんもよく知っているからな」
普通はよく知っているからこそ信頼するものではと思いますが
リュウト「その普通が成り立つ相手ばかりではないということだ」
まぁ、うちの連中に常識をあてはめてはいけないんですけどね。たぶん、それに当てはめることができるものは誰もいない
リュウト「えっとな、俺が言うのもなんだが・・・もう少し周りを見てからしゃべろうな」
・・・非常に嫌な予感がしますのでそろそろこの辺で・・・ピギャァァァァァアアア!!?
リュウト「あの人数がそろうのはなかなか・・・ま、作者ならば死にはしないだろう。さて、次回に何が起きるのかは俺も知らん。気になるものはぜひ見に来てやってくれ。じゃあな」




