1話 「魔王」
草原を歩くこと1日、俺たちは不気味な城へと到達した。
「ここがそうか?」
「ああ、オレも詳しくは知らんが魔王たちの中ではもっとも弱いという噂だ。」
噂どうりならここを突破できないようじゃ他の魔王には・・・か。いや、そもそも最弱とはいえ魔王には違いない。アシュラさえも単独では勝てない相手・・・けして油断していい相手ではない。
「うん! じゃあ早く行こうよ!」
まぁ、レミーに緊張感を求めるだけ無駄だな。ただ兄さんとしては隠密行動ってものを知って欲しいぞ?
「騒ぐでない。ここはもう敵陣なのだぞ?」
うん、まさにそのとおり。まぁとはいえ・・・
「奴らもオレたちのことは感づいているだろう。あまり変らん・・・結果としてはな。」
ということだな。とりあえず今回は大丈夫だったと言うことに過ぎないがとりあえずよしとしよう。
どこまでも続くかのような薄暗い不気味な廊下。だがおかしいな、ここまで罠はおろか敵の一人さえも出ては来ない。気がついていないと言うことはないと思うが・・・。
「アシュラ、どう思う?」
「魔王どもは疑り深い。・・・用もなしに自分の手元に配下など置きはせん。寝首をかかれてはたまらんからな。」
隙をつかれてはまずいと言うことか?・・・いや違うな、隙を見せることで反乱をされ手駒が減る心配か。
「だが罠の一つもないというのは下賎な・・・。」
アキが言うことはもっともだと思う。部下を置かないのなら益々罠の有効性が高まるのだが・・・
「きっとうっかり屋さんなんだね!」
レミー・・・ホントにそうだったらありがたいんだが、まずそれはないぞ。
「考えられるのは・・・絶対の自信ってところか。」
もしくは俺たちの反応そのものを確認しているのかもしれないがな。
「よく来たな。待ちかねたぞ、竜神よ。」
玉座に堂々と腰をかけた魔王は見た目はそう人と変らない・・・そう、首から下はな。彼が悪魔であるとこを疑う余地がないのはその頭。人間の体に双頭のカラスの頭を持つもの。たしかこの悪魔は・・・
「さて、再び我が前に来ることができるものは何人かな?」
むっ? 床が沈む!? まさか、ここに来て罠を仕掛けてあるとは・・・油断したのは俺たちの方か。
「ふん、魔王ともあろうものが下らん小細工を・・・。最弱と噂されるのも間違いなさそうだ。」
床に飲まれていないのはすでにオレだけ。いや、オレも飲まれるのは時間の問題ではあるがな。そもそも、これは床に沈んでいるのではないのだ。
「ほう、貴様がアシュラか。その目・・・惜しいな。」
「裏切り者とでも言う気か?」
オレの言葉に魔王は愉快そうに笑うと
「裏切り・・・結構ではないか。実に! 実に悪魔らしい!! 他のもの共は知らぬが我はお前を認めてやるぞ!」
「遠慮しておこう。強欲な貴様などに認められるとろくなことにならん。」
「くっくっく! 我を前にしてその口ぶり! その胆力! 心から惜しいな。我の予想では戻ってこれるのは貴様だけだろう。そのときは・・・貴様の力、我が物にしたいものだ。」
自分の勝利を微塵も疑っていないその態度。・・・いいだろう、その顔恐怖に歪めてやる。そして・・・貴様が思うほどあの三人は脆くはないと思い知るがいい。
第8章にしてようやく1人目の魔王にたどり着きました!
リュウト「このまま1人一章と仮定するとえらく長くなるな・・・。」
そうですね、それに魔王以外の悪魔もいないわけじゃありませんし。まぁ、第2部は第1部よりも本格的な話ですからね。実際シリアス度は高くなっていますよね? (コメディは第3部に集中しているというのもありますが)
アキ「私としては早く解決してやりたいこともあるのだが仕方ないか。・・・ところで今回の魔王はオリジナルではないようだな?」
アキのやりたいこと・・・ここでは(リュウトがいるから)言えませんよね~。・・・おっと、そう今回の魔王というより7人の魔王たちは神話の奴らです。7と言う数字、その姿、そして強欲。悪魔に詳しい人ならピンと来るのではないでしょうか? と言ったところで今回はお開きです~。




