13部5章「最後の日常」3話 「氷竜姫とお姫様?」
「ん~、平和ね~」
戦いの足音がもうすぐそこまで迫っていることは理解しているけど、それでも・・・いえ、それだからこそ今の平和が貴重なものに感じられるわ。昔のワタシだった者たちには感じられなかったもの
「本当に兄さんには感謝しないといけないわ」
自分でも少し惚れっぽい性格は自覚している。今までの竜生でも誰にも恋をしなかったなんてことはそう多くないわ。けれど、兄さんのようにワタシに心からの安らぎをもたらしてくれた人は誰もいない。生まれ変われると知ってもう死にたくないと思ったこともこの人のためならば死ねると思ったことも・・・相反するその思いはきっとワタシの力になるもの
「リ~デ~ア~?」
「えっ?」
背後から聞こえた声に振り向いてみればワタシのほうに突っ込んでくるアイの姿。思いっきりぶつかって大きく弾き飛ばされて木にぶつかって止まる
「何すんのよ!?」
「アハハ、ごめんね。つい勢いが付きすぎちゃって」
急ブレーキかけて減速しても止まり切れずにワタシにぶつかるってどういうことよ? ワタシだから痛いですむけど、普通の人だったら即死よ、即死!
「見なさい、木が数本折れちゃったじゃない。アキとメイが怒るわよ?」
「・・・えっとメイに内緒ってできないかな」
「・・・もう気が付いているんじゃないかしら?」
普通に考えたらメイの能力は予知ではないし、レーチェルのようにリアルタイムで世の中を見れるわけでもないから知っているはずがないはずなんだけど、メイだともう知っている気しかしないわ。今ではなくても明日までには犯人まで含めて全部ばれていそう
「ボ、ボクだけのせいじゃないよね?」
「あんた意外に誰の責任だっていうのよ?」
「ほ、ほら! リデアだって避けなかったし、吹き飛ばされて木を直接負ったのはリデアだし!」
「人を巻き込むんじゃないわよ!!」
ほ、他のトラブルだったら友達のよしみで手伝ってあげるけどメイだけは例外よ!?
「リデアだったら何もなくてもメイにお仕置きされるし慣れているでしょ!?」
「普段からなぜか多いからこれ以上は嫌って言っているのよ!」
慣れるどころか悪化しているのがメイなのよ! ってどうせ経緯は誰も言わなくてもそのうちばれるんだし、今は考えないことにしましょう
「で、何の用よ?」
「えっ? 用はないよ、オルトの散歩に出ていたら後ろ姿が見えたから・・・痛い痛いよ!?」
別に声をかける分にはいいけど、飛びかかってくるんじゃないわよ! ってアイの頭をグリグリとする。痛がってはいるけど、アイは笑顔だからそれほど効いてはいないわね。オルトもまたやっているって感じで欠伸なんかしているわ・・・ワタシ、オルトにまで呆れられている!?
「あっ、でもリデアはボクの方から話しかけないと話してくれないからね」
「あのね、ひとをコミュニケーション能力がないみたいに言わないでくれる?」
「えっ、違うの?」
あっさりとこう返すアイが少し恨めしい。どうせワタシにコミュニケーション能力なんてないわよ! 今までのあまたの竜生、何度ボッチやっていると思っているのよ! ・・・ワタシがなかなか素直になれないのって絶対にこれが原因よね? 本当に呪いだわ、この転生術
「・・・あんたは誰とでも仲良くなれそうね」
「ん~、そうなれるようには頑張っているけど、誰でもってわけにはいかないよ」
遠くを見る目はきっと叶わなかった過去を見ている。そうね、この子はこう見えても元王族。威張ることは可能だったのでしょうけど、彼女たちが目指したのは国民に親しまれる王だったのでしょうね
「ワタシだってわかっているのよ。ワタシたちの仲が良くなれば兄さんに流れ込む力も大きくなるって」
兄さん本人に対する思いほどではないけど、仲間同士のつながりも仲間の心の強さも多少なりとも強化に役立つ。そして兄さんの強化ループを考えても戦う相手のことを考えてもそのわずかをおろそかにしていい状態ではない
「リデア、それは違うよ。ボクはリュウトの役に立てるからリデアと仲良くなりたいんじゃないよ。ボクはボクがそうしたいから仲良くなるんだ。本当に嫌な人だったらリュウトのためだって仲良くなんてしないよ」
こうやって素直に好意を伝えられることなんてほとんどなかった。そしてこんな風に好意を伝えられるのが羨ましい
「それにリデアはリュウトとボクが結婚したら義妹だしね」
「・・・あんたね」
ピンとおでこにデコピンをすればそこを押さえて痛がってみせる
「まぁいいわ。だったらお節介ついでに少し付き合いなさい」
この二人はあんまり仲の良くない二人ですが、どっちかと言うとリデアの態度に原因があるのです
アイ「元々リデアがボクの胸を馬鹿にしたところが始まりだったんだから」
冥王に操られているときでしたけどね
アイ「操られてなかったら言わなかった?」
いえ、性格には影響を及ぼさないので関係ないですね
アイ「ダメじゃん! まぁ、今ではリデアの性格もわかっているけどね」
自分に自信がないから有利性を求めるってことなんですよね。本当にめんどくさいタイプなんですが・・・こういうこと言っていると凍らされそうなんでそろそろお開きに・・・
アイ「少し遅かったみたいだね。ってことで氷漬けの作者に変わって今回はここまで! 次回もボクたちの物語絶対に見に来てね。約束だよ!」




