7話 「求めし者の末路」
力・・・それはどこまで求めればいい?
力なくては何も守れない。
力を得るほど守るべき範囲も増える。
より多くを守る為により強い力がいる。
俺はどこまで力を得ればいい? 俺は何の為に力を求める? ・・・俺はこの力で何をなせばいい?
そうか、わかったぞ。 破壊!
全て壊せばいい。殺しつくして焼きつくせばいい。俺の手の届くところには何もない。ならば・・・もう守る必要もない。
そうだ、世界の全てを壊そう。壊れたならまた作る。そして壊す。いつか俺が望む世界を作り出すために・・・。
「~~~~~~っ!?」
な、何だ? 今のは・・・夢?
「ど、どうしたリュウト! 随分酷い顔だぞ!?」
そんなに酷いか・・・いや、酷いんだろうな。夢から一気に覚醒する悪夢。本当にアレはただの夢なのだろうか? もし・・・もし俺の中にあんなどす黒い感情があってそれが出てきたのだったら。俺は・・・生きていてもいいのか?
「リュウト?」
心配そうに覗き込むアキ。・・・そうだな、あれが何であれアキに心配かけるのは筋違いだ。
「いや、なんでもないさ。少々夢見が悪くてな。」
「そ、そうか・・・そなたも悪夢を見て飛び起きるなど子供みたいだな。」
呆れたような口調も心底安心したという表情ほどにはアキの心境を語ってはいない。ごめんな、本当に俺はキミに心配をかけどおしだ。キミの心を傷つけているのは・・・他ならぬ俺なんだよな。
「そうだな、まるでこど」
「え~~~~~~!?」
な、なんだ!? レミーの悲鳴!?
「どうした!? レミー!」
「お、お兄ちゃんが・・・お兄ちゃんが黒い影の中に消えちゃった・・・。」
ペタンと地面に座り込んでレミーがそう呟く。・・・黒い影? 以前もヘル(コクト)が使っていた移動技か?
「心配はいらん。それならば奴は自分の拠点に帰っただけだろう。」
レミーの悲鳴に何だかんだいって真っ先に反応していたアシュラがそういう。たしかアシュラは前にも言っていたな『オレたち悪魔は魔界の自分の居城との直通路を開くことぐらいはできるのだ。』だったかな?
「えっ!? え~! なんで!? 折角再会できたのに・・・また一緒にいられると思ったのに・・・」
唖然と呟くレミー。だがコクトの気持ちもわかるな。
「あいつは間違いに気づいたからって、すぐに生き方を変えられるほど器用じゃないからな。なに、そのうち帰ってくるさ。レミー、お前を助けにな。・・・だからそれまでもう少しだけ待っていてやってくれ。」
「・・・わかった。リューくんを信じるよ。今まで待ったんだもん。もう少しぐらい・・・」
そう呟くレミーの顔はそれでも寂しげで・・・まったく、ホントあんたもいい加減馬鹿だよな。
「さすがに良くわかっているではないか。生き方が不器用なもの同士な。」
えっと、アキさん? それって俺のこと・・・だよなぁ。不器用という意味じゃアキもけして負けていないと思うが、言わないでおこう。
「それと・・・あのね・・・」
ん? レミーが言いよどむなんて珍しいな。
「ご、ごめんなさい!」
ん~、今回レミーが謝るようなことって何かあったっけ? 普段なら結構一杯あるんだが??
「ほら、そのわたし天使じゃ・・・その、嘘ついて・・・」
はぁ、そんなことか・・・
「何を言っているんだ。お前は天使だろうが。」
「・・・オレは悪魔じゃないなんて嘘を貴様の口から聞いたことはないぞ。」
「そなたは嘘など言っておらんだろう。ただちょっと言い忘れていたことがあっただけだ。」
そんなことでレミーを悪く思う奴はここにはいないさ。短いながらもそんな程度で壊れるような時間を過ごしてきたつもりはないぞ?
「み、みんな・・・あ、ありが・・・うわぁぁあぁああん!」
お、おい! 泣かないでくれよ。悲しみじゃないのはわかるが涙自体俺は苦手なんだから!!
「胸ぐらい貸してやれ。・・・兄なのだろ?」
あああああ、アキ? なんか今よくわからない悪意が混じらなかったか?
「ふん、これは貴様が適任だな。」
アシュラ! お前は自分がやりたくないだけだろ!!
「うぇぇぇ・・・リューくん~!」
「ほ、ほら・・・よしよし・・・」
頭を撫でてやりながら思う。泣きたいのは俺の方だと・・・。
再び姿を消したコクト。絆を深め合うリュウトたち。・・・まぁ、ちょっと嫉妬が混じった人もいるみたいですがww
アキ「だ、誰のことだ?・・・そ、それより私はリュウトの見た夢の方が気になるな。」
誰がどう見ようと悪意に満ちた狂った夢。力を追い求め、追った理由を忘れ、力に飲み込まれたもの。・・・それが暗示するものがわかるのはかなり先の話なのです。とりあえずこの第2部では出てこないとだけ言っておきます。
アキ「そ、そうなのか? ま、まぁ、私はリュウトがそんな存在にならないと信じているがな。」
そうそう、あなたは信じていればそれでいいのです。で、次回予告を・・・
アキ「・・・わかった。『コクトとの戦いを終え、私たちはついに第一の魔王城へと到着する。そこにいたのは当然最弱とはいえ魔界を支配する7人の魔王の一人! 竜神伝説第2部8章「心の闇」リュウト・・・闇に負けないで!』」




