13部3章「魔神の願い」2話 「試練に挑むは」
極層魔界、そこは悪魔たちにとっても伝説の地であるらしい。深くなるほどに広く暗くなるという魔界の今までの法則とは異なり、下層魔界ほどの広さに中層魔界程度の明るさを持っている。だが、それ以上に感じるのは生命の少なさだ。もっとも、そのいずれもかなりの強者だということがわかるし、俺に感知できない者が多いのだとすれば、さらにここにいるのは化け物ぞろいだと言う証左だ
「あそこにオルクラン様がおられる」
オメガが示したのは巨大な城。いうなれば魔神城とでも言うべきなのだろうが、今まで見た魔王城のような禍々しさはない。それどころか地上の城のように防御機構さえもない美しい城だ。あ~、これはあれだな、攻めるのならば攻めて来いってやつだ。雰囲気で威圧する必要も城自体で守る気もない。そこにいるものの力だけで十分に防衛できるという自信だ。そして
「久しぶりね、オルクラン」
美しさと機能性だけを追求したような城の扉をいくつか開けた先にかの存在はいた。レーチェルとオルクランと呼ばれる存在が旧知の仲と言うのは知っていたが、さんづけしていた配下のオメガよりも親しい関係のようだ。そしてそのオルクランが待っていたこの空間、妙な既視感を感じる。飾り気もない広い空間、そしてやたらと頑丈に作られている
「ライオスに意地でもついてくるというのならば、せめて死なぬようにと僅かばかりの特訓をしただけの小娘が今ここにいる。ふっ、あの時共に戦った仲間たちの内に最後の生き残りが我らとは皮肉なものだ」
悪魔であることを示すようにオルクランの体には確かに異形のパーツがいくつかある。だが、そんなものに何の意味もないのだと思わせるほどにオルクランの表情も声も穏やかだ。彼にとってはそう昔でもない日の戦友を思い出しているかのように
「ええ、寿命なんて存在しないあなた。本来百年もすれば寿命で死ぬ私。ライオスを除けば仲間内で最強だったあなた。ぶっちぎりで最下位だった私・・・両極端すぎて運命の神と言うのがいたらとんだ皮肉屋に違いないわ」
「女神がそれを言うのもな」
「あら? 確かに私は女神だけど、運命の神なんて言うのには会ったことはないわ」
種族も年齢も立場も何もかもが違う二人。だが、そんなものも長らくあっていなかった時間も関係ないのだろう。俺たちと同じだ。ただ仲間である・・・それが全てだ
「さて、ではそろそろ本題に入ろう・・・悪魔たちよ!」
それはまさに王の一声か、ただただ威厳だけがこもった声。該当するであろう四人にわずかな緊張が走る
「お前たちに試練を与えよう!」
「試練・・・だと?」
何かしらの用があるからこそ俺たちをここに呼んだ。それは当然だろう。しかし開口一番が試練か、まるでレーチェルのような・・・レーチェルがオルクランを真似ているのかもしれないが
「余はこの場から全ての悪魔にとある呪法をかけている。簡単に言えばエネルギー全般を本来の十分の一に抑制するというものだ」
いや、それはとんでもない話だぞ? エネルギーが落ちれば身体能力が落ちる。回復速度が落ちればそのままスタミナに直結する。放出量はイコール威力だ。その全てが十分の一ならば本来ここにいる悪魔に属する四人は最低でも十倍は強い存在だということだ
「自力でやや枷を外しかけている者もおるが、それでも余の呪法はまだ生きておる。そこでだ」
パチンとオルクランが指を鳴らすと当然のようにオメガが横に立つ
「余とオメガ、我らを同時に相手にして破れる力を示すのならば解いてやろう」
だからこそのこの場所か。そう、よく似ているんだよ・・・アシュラの屋敷の戦闘部屋にな
「ふん、力をくれてやろうなどとのたまったのならば断わる気だったが・・・封じられていたとなれば話しは別だ」
「試練を挑まれて逃げたのでは騎士の恥」
「アシュラ様が戦うのならばどこまでもついて行くのが私の道です」
「わ、私だって頑張るよぉ!」
四人はやる気十分のようだが・・・勝ち目はあるのか?
「一つ良いかしら? オルクラン、その試練の参加資格は悪魔だけなのかしらね」
「ふむ? おかしなことを言う。オメガよ、余はそのようなことを言ったか?」
「いえ、仰っておりません。そこの小娘は老齢のあまりに幻聴でも聞いたのでしょう」
レーチェルのこめかみに青筋が浮かんだのがすごい怖いところだが、状況はわかった。これは総力戦・・・つまりはいつもどうりだ
ということでこの章の目的がはっきりしました
アキ「・・・悪魔族メンバーのパワーアップイベント」
だからそう身もふたもない言い方をしないで・・・
アキ「私たちには! 私たちにはないわけ!? リュウトは仲間が強くなれば自動的に強くなるからいいけど」
章ではなくて部としてはそこらへんを含めてお楽しみくださいと言うところでしょうか
アキ「・・・なかったらお仕置きだよ?」
何時もながら何故にこう脅されるのでしょう? さて、ともかく次回からの戦いもよろしくお願いいたします




