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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
10部11章~ラストまで
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13部1章「エルファリアの日常・終」2話 「その道を歩く資格」

 リーンゴーンと鐘の音がする。リリクレナの出産が終わって少し経ち、看護師であるルルが子守を買って出たことで実現したヤマトとリリクレナの結婚式・・・ルルの将来の練習にもなりますからというのは聞かなかったことにするわ。なんか、ヤマトたちだけでなくルルとドクターにも先を越されそうな気がして


 お決まりの定型文、決まりきった宣言。だけど、それは確かに二人の間に交わされた誓い。そして彼女が祭壇まで歩いた道、通称バージンロード。既に経産婦であるリリクレナは当然バージンじゃないけど、その相手は横にいるヤマト。その道を歩く資格は十分にあると思う


 じゃあ私は? ミリーは大丈夫って言ってくれているけど、それが優しい嘘だったのならば・・・。いつだって心に引っかかっているこのしこり。バージンロードを歩けるのは花嫁だけ。でもそれは儀礼的な意味であってやる気になれば物理的に歩けないわけではない。でも、私の目には私だけを拒む強固な結界が張られているように思えてしまう。洗脳されてのことであろうともお前にこの道を歩く資格はないって。それはきっと同じVIP席で見ているお姉ちゃんやリデアも同じなんじゃないかって表情から思う


「どうした、アキ?」


 リュウトはそれなりに鋭いけど、こうした女の子の気持ちにはとことん鈍い。でも、今回はそれで助かったと思ってしまうんだ。だって、もしも『まだ気にしているのか?』とか言われたらこの場で土下座して謝ってその後に涙流しながらリュウトの足にしがみつくことになりそう・・・嫌われたくないの。あなたがいなければもう生きてはいけないの。だから、この胸の中の不安も後悔も恐怖も醜い嫉妬心もあなたには知られたくない


「ううん、なんでもない」


 だから私はこう笑う。今日は華やかなお祝いの日。そこには喜びの涙ならば似合うけれど、辛い顔も後悔の涙も似合わない


「ねぇ、いつか私と・・・」


 一緒にあの道を歩いてほしい。そう心から言いたいけど、同時にそれをお前が言う資格はないと止める罪悪感がある。思わず流れそうになった涙を慌ててこする


「ああ、一緒に歩こう。そのためにも勝たないとな」


 二重の意味で珍しくリュウトはウィンクなんてしながらそんなことを言う。普段はとことん鈍いのにこんな時ばっかり鋭いなんて


「うん、ありがとう・・・」


 でも、私に返せるのはその位までで。辛うじて沈んだ顔を見せなかった位の成果。だって、これで沈んだ顔を見せて『アキは俺と結婚したくないのか?』とか思われたらそれこそ大変。やっとここまで来たのにここでスタートに逆戻りどころかマイナスになっちゃったらまたここまでこぎつけるのに今度は何千年かかるの? って思うもの


 そして花嫁と花婿の誓いのキスに歓声が上がり、そして全員外へ・・・そう、この後あれがある予定。本来ならば乙女の闘争とでも言うべきあれが・・・そう、ブーケトス。若い女の子たちは目をキラキラさせて前に陣取る。きっと意中の人が・・・いないからこそ欲しがっている人もいるかもしれないけど。で、私のそばにはすでに結婚している人たちがずらりと。だって、あの場に割り込んでブーケを奪い合う勇気なんて私にはない


「・・・えっ?」


 リリクレナの投げたブーケは必死に手を伸ばす乙女たちの手をすり抜けてポスンと何気なく出された私の手の中へ・・・これでも一応女王だから周りのエルフたちが私の顔を知らないはずもなく、周囲はお祭り騒ぎに


「次の花嫁はアキみたいだな。相手が俺ならば嬉しいが」


 ブーケを受け取った娘が次の花嫁になる。他愛もない伝承ではあるけれど、そんなものにも縋りたいというのが恋する乙女というもので


「リュウト以外が相手のわけがないでしょう? だから」


「ああ、近いうちに勝ち取らないとな。エルフのお嬢ちゃんたちを行き遅れにするわけにもいかないし」


 クスリと笑いあう。実際に私たちが結婚するまではなんて考えちゃっている子もいそうだし、あまり冗談にもならない冗談だけど少しだけ私の心も軽くなる。私だけだったらあの道はどんな結界よりも強く私を拒むかもしれないけど、リュウトが一緒だったらきっと歩ける。そう信じられるから


 あ、あと、私の近くに戻ってきたお姉ちゃんの涙目で睨みつける目と今にも飛び掛かって奪いそうなのを辛うじて堪えているリデアは何とかならないものかな?

今回はアキの葛藤ですね。冥王から受けた傷は決して浅くはありません


アキ「・・・これ、本当に予定に入っていた話?」


・・・ヤマトたちの結婚式の話は予定にありましたよ、うん


アキ「あ~! じゃあ、やっぱりこの話って!」


あ~まぁ、何というか? とにかく感想をいただいて要望をいただけるとこうやって少し話が変わることもあるっていう例でしょうか? と言ってももう要望を叶えるだけの話数もないのですが


アキ「うう、もしも今から要望を出す人がいたら私たちの幸せをお願いね! 絶対だよ!?」


アキの言い分はともかくとして、こうしてほしいというのがあればご遠慮なくどうぞ。必ず叶えられるわけではありませんが、少なくても検討は出来ますので。というわけで今回はここまでです。次回もよろしくお願いします

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